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Lake!   作者: ぽこ
1/1

そのに!

さて、今俺はあろうことか女子高に忍び込もうとしている。

右を見て、左を見て。誰も居ないことを確認して裏門をくぐる。

これだけでは俺が変態にしか見えないのだがちょっと理由を聞いてくれ・・・

俺はただの暇つぶしのために女子高生たちの足りないバンドのメンバーに

ギターとして加わってしまったのだ!

今日も練習のために授業が終わるとこうして女子高の部室まで通っているってわけさ。

ただの暇つぶしになんてことをOKしてしまったんだとここら辺で感じ始める俺。

ハイ、こんなことを解説している間に部室の前に到着。

携帯によると現在は4時半頃だそうだ。もう雪先輩達も部室に来ていることだろう。

軽い深呼吸の後に2回ノック。

「いらっしゃーい!」

ありえない速度でドアが開いた。

どう考えてもドアの前で待っていたとしか思えない。

ドアが俺の鼻にダイレクトアタック!ちょっと鉄の味がした・・・

「あうぁーゴメン」

もがき苦しむ俺に小雪先輩が謝る。

「雪、30分も前からドアの前でスタンバってたんだぜ」

とさっちん先輩。

「何でスタンバる必要があるんですか・・・」

鼻を押さえながらどうにか言葉を吐く。

「今日もちゃんと来てくれるか心配で~ごめんねー」

ここまで申し訳なさそうに謝られたら怒ることもできない。

「先輩方こんちは」

部室には俺の思った通り、小雪先輩、さっちん先輩、美鈴先輩が居た。

「あー君先輩はまだなんですか?」

「うん、あー君はねーいつも最後なんだよ~」

小雪先輩が元気な口調で言う。

もう自責の念はどこかへ飛んでいったらしい・・・

「てゆーか太一も大輝のこと『あーくん』先輩って呼ぶんだな・・・」

美鈴先輩が呆れたように言う。

「いいじゃないですか、こんなあだ名なかなか思いつきませんし、

現に俺は今まで一度も聞いたことありません」

「でしょでしょ~やっぱり私って人のあだ名付ける才能あるよねー♪」

どんどん小雪先輩のテンションが上がっていく。

「そんな才能あったって何にも使わないだろ」

さっちん先輩が苦笑混じりに言う。

「・・・(絶句」

また小雪先輩が傷つきモードに入った・・・

こうやって先輩達は小雪先輩のテンションを上がり過ぎないように調節しているのだろうか。

「雪が傷ついて無口になるのはいつものことだから、気にしなくていいんだよ。すぐ治る」

美鈴先輩が言う。

「てか太一まであー君あー君呼ぶようになったら大輝どうするんだろ、

いちいち2人にツッコミ続けるのかな・・・」

遠い目をしながらさっちん先輩。

「いつかは慣れるんじゃない?時間が解決してくれるよ・・・」

同じく遠い目をしながら美鈴先輩。

「慣れるわけねーだろ!」

いつからかドアの前にあー君先輩が立っていた。

「太一もあー君先輩言うのやめろ!俺は雪にツッコむだけで精一杯だ!」

「でも『大輝先輩』ってなんかありきたりですよー

『あー君先輩』なんて先輩ぐらいのもんです、そうそういません」

「何であだ名に珍しさを求めるんだよ!普通に大輝先輩でいいだろ!」

「太一君、あんたぁ分かってる!」

いつのまにか小雪先輩が復活して俺の手を握っている。

「あだ名ってのはその人しかそんな呼ばれ方しないって程の新鮮さを求めるもんなんだよ!

その人だけの『名前』って奴を作ってやんなきゃいけないんだ」

小雪先輩の目が輝いている。

「先輩!」

「太一君!」

俺達は何かを分かり合えた気がする、俺この人となら最高のバンドを組める!

「なんか太一もテンション上がると変なスイッチ入る人だったんだな・・・」

美鈴先輩がやれやれというジェスチャー。

「ちなみに今日から君のあだ名は『ふとしくん』ね!」

「ハイっ!・・・え?」

なんか今とても嫌な名前を聞いた気がする。

「ふとしくん!」

小雪先輩がおれの肩を掴み言う。

後ろを見る、誰も居ない。

「ふとしくんって俺のことですか!?」

「君以外に誰が居るんだい!」

無駄に輝いた瞳がウザイ。

「嫌ですよ!なんで俺がふとしくんなんですか!」

太一からふとし・・・絶対嫌だ。

「君だけの、オ・リ・ジ・ナ・ル・だよ♪」

小雪先輩のウインク。

「嫌だぁぁぁぁぁ!」

今、あー君先輩の気持ちが分かった気がした。

俺の頭に手が載る。あー君先輩だった。

「先輩、どうにかしてください・・・」

「よろしく、ふとし!」

最高の笑顔、イケメンには笑顔が似合うなー。

「もう、どうにでもしてください」

「さぁ練習始めるぞー」

さっちん先輩の声が響く。


「まずは個人練習するべきだと思います」

この間合わせたときは酷かったからな。もはやあれは音楽とは言えない・・・

「え~みんなであわせた方が楽しいよー」

不満げな小雪先輩の声。

「ダメです!あんなんじゃ練習になりません!

個人練習である程度弾けるようになってからあわせるべきです。」

「太一の言うとおりだな。てゆうか一番タイミングずれてたの雪だからな。」

美鈴先輩は分かってるなー。

「・・・(絶句」

小雪先輩はスルーしよ。

「それよりあー君先輩のドラムの上手さにびっくりでした」

あのグチャグチャな音の波中で

唯一リズムを取れていたのがあー君先輩のドラムだった。

「別に小さい頃から習ってれば普通だろ。それとあー君先輩ゆうな。」

「ふとしくんだって上手かったよ~」

復活した小雪先輩が嬉しそうに言う。

「ふとしくん言わないでください!」

「無理無理。雪って凄く頑固だから」

美鈴先輩が言う。

「てか美鈴先輩には何であだ名付けないんですか!」

さっちん、あー君・・・ふとし。美鈴先輩だけズルイ。

「美鈴ちゃんは美鈴ちゃんだからいいのー」

もうわけ分からん。

それから俺達は個人で練習した。

まだ合わせる段階には到底至っていないことは言うまでもないだろう。

ホント、大丈夫か・・・



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