第七話「小幡勝博③」
◆◆◆小幡勝博
「どうなっているんだ」
俺は人質に様子を見られぬように注意しながら思っていた。俺は確かに爆弾を仕掛け、爆発した。そこまでは順調だったんだ。しかし、その後も燃え続ける炎を俺は不審に思った。「そういう仕様なのか」と一時は思ったが、説明書にはそんなことは書いてなかった。
つまり、誰かがもう一つの爆弾を仕掛け炎を出している、と考えたほうが良い。つまりこの国会の中か、外かはわからないが、俺の計画を邪魔しようとしているやつがいるということだ。しかし、計画は俺一人で考えたもの。もちろん誰にも口外はしていない。そうなるとやはり──
「おい人質。話があるんだ。聞いてくれないか」
◆◆◆秋山和寿
課長たちがやけに騒いでいる。国会が燃える様に、課長たちが燃えるように騒いでいるのだ。もうマスコミも騒ぎ始めているせいか、課長たちも騒いでいるせいか、ここが東京のせいなのか、夜とは全く感じないほどの騒がしさがそこにはあった。
騒がしい、と言ったらあの時も騒がしかったな、と秋山は高校時代、田舎の高校のクラスの一室を思い出す。しかし、それももちろん騒がしかったのだが今の騒がしさは少し違うようだ。
「なんだか、進歩があったみたいだな」声を発したのは、やはり田中だった。田中は珍しく淡々と語っていた。
「そう思うのには理由が2つある。まず1つ目は、あのリポーターを見ろ。国会が爆発されたのにも関わらず、興奮気味に話している。これだけでおかしいじゃないか」
「別におかしくないじゃないか。ネタが入ったんだから、リポーターだって興奮気味になるよ。そうじゃないとやっていけないじゃないか」秋山は反論した。別にクラスメイトが捕まるのが怖いとか、捕まってほしくないという気持ちは残念ながらまったくなかった。
「そしても2つ目、見ての通り課長が騒いでる。騒いでると言うより忙しそうに携帯を触っている、といった方が良い気がするけどな。これはいつも騒いでいるマスコミよりもレアだ。ということは決定的だな。事件はもう終盤だな」たしかに、毎回のように騒いでいるようなマスコミのリポーターに比べたら課長が忙しそうにスマホをいじくっている時に「事件は終盤だ」と言われたほうが説得力はある。そう秋山は依然としても燃えている国会を見ながら思っていた。
◇
それからしばらくもしないうちに課長が口を開く。
「おい、秋山、田中、犯人から『投降する』という連絡があった。事件はこれにて終了だ」
「ほらな。やっぱり事件は終盤だったんだ。言っただろ秋山」
秋山は黙っていた。何かがおかしい。おかしい。小幡は──
「あいつは絶対投降しないぞ」秋山が言った。




