第六話「秋山(過去)」
◆◆◆秋山和寿
世の中には予想外のことがたくさんあるものだが、予想外にも予想外、まさかこんな田舎な高校に行くとは思わなかった。秋山は生まれも育ちも東京である。その都会育ちの秋山にはどの方向を見ても畑や田んぼだらけの景色は新鮮で、少し不快だった。そして、不快なのはそれだけではなく、周りの席に座っている奴らだった。一言で言うとうるさいのである。田舎とはこんなにうるさいのか。
「この高校に行け」と父に言われたのは1週間ほど前である。そう言われても秋山は全く実感が湧かなかった。なにせ、都立の高偏差値高校を受けるつもりだった秋山が田舎の村に一つしかない高校にいけと言われるならば、それは上機嫌になるはずがないのではあるが。
田舎の高校の何が良いのかと言ったら、この目線だ。ギロリと、またギロリと、周りを見渡しても睨んでいる生徒は多い。もちろん、小学校中学校と一緒で、そのまま高校に上がった生徒がほぼ全員なのだから周りに知らない秋山がいるならば「誰だコイツ」と周りも不審に思うに違いない。
◇
いじめが始まったのは入学2日目だった。
始めは牛乳を落とされ、そこまでは中学校でもあるので全く不審に思わなかった。その後は徐々にエスカレートしていき、入学して1ヶ月も経てばもう殴られ蹴られの繰り返しだった。秋山は抵抗しなかった。別に痛いだけで、特に問題はなかったからだ。
そんな時、ある男が殴られたあとのボロボロの顔面をしていた秋山に近づいてきた。
「お前、イジメられてんの?」彼は秋山がいじめられていることを知らなかったのだ。それもそのはず、彼は入学して少したった時に転校してきたのだ。秋山はだいぶ驚いた。同級生に話しかけられたのはいつぶりなのだろう、と。
「イジメられてなんてないさ」そう言うと秋山は席を立ち、別に行きたくもないトイレに行くふりをして、その場から去った。去りたかった。「イジメらているんだ」とは秋山は怖くて言えなかった。いや、怖くなない。ただただ、痛いのはもううんざりだったのだ。
◇
「お前やっぱイジメられているだろ」彼はまたやってきた。何だよコイツ、ともう呆れていた。
「イジメられてなんかないよ」と先ほどと一緒のセリフを吐くだけで精一杯だった。
「イジメられているやつは、『イジメらていますよ』なんて言わないよ」
「じゃあ、聞いたってしょうがないじゃないか」そう言うと、二人で爆笑した。笑ったのはいつぶりなのだろう。その後、秋山はもうどうでもよくなりすべてを打ち明けた。最初はイジメと言えないほどだったこと、だんだんエスカレートしていったことなどすべてを打ち明けた。秋山は自分がイジメられていることを自慢げに語るのはすごく可笑しかった。
すると彼は思いをしないほどのことを打ち明けた。
「俺もいじめられていたんだ」
「前の学校で?」少し気になった。
「前の学校って言ったって、アメリカだけどな」アメリカに住んでいたのだということはもちろん初耳だった。
「じゃぁ、帰国子女だ」
「子女ではないよ」
「じゃあ帰国子男だ」その後また二人で爆笑した。
◇
これが小幡との出会いだった。
このあとの話は気が向いたらするよ。少し、話しづらいからさ。そう、秋山は思っていた。




