第五話「秋山③」
うす。
◆◆◆秋山和寿
「おい、出動するぞ」
いきなり署に帰ってきた課長を見て、秋山と田中は顔を見合わせた。
「出動ですか」
「どこにですか?」田中は珍しく敬語を使っていた。
「早く行くぞ」課長に急かされ、秋山と田中はパトカーに言った。
◇
「おいおい、ガチで燃えてんじゃないか」
国会の一室に燃え上がる煙を見て、秋山はそう思った。いや声も出していたに違いない。「そうだなー」と隣の田中が相打ちをしたからだ。暗い夜に立ち上る煙と真っ赤な炎は少し、似合っていなかった。
それにしても──
「消防隊員はまだなのかよ」火が広がると、それこそ大惨事だ。
「いや、必要ない」
答えたのは、課長だった。彼は、10年ほど会社に努めてから、警察になったという変わった経歴を持つ。なのに、もう課長だ。やはり、大事なのはポテンシャルだ、そう秋山は思っていたが「そんな呑気なことを言うなよ、俺がもっと燃えてしまうぜ」と火はさらに燃え上がる。
「なんで消防隊員が必要じゃないのか知っているか?」秋山がいつまでたっても質問しないので、しびれを切らした課長が話し始める。
「わかりません」秋山は本当にわからなかった。火が出ているなら、消防隊員は必要なのでは?と。
「じゃあ、教えてやる。この炎は燃え続けているんだ。誰も止めれはしない。爆弾を解除する以外はな」
「爆弾?」そんなことは初耳だった。
「何だそんな事も知らないのか。この国会は爆弾が仕掛けられていてな。それが爆発したんだ。でも、一回爆発しただけじゃない。ずっと燃えているんだ」
「爆発しても燃えている?」そんな爆弾があったとは。
「あぁ、そして驚くことを言ってやる。犯人は、お前の同級生だ」知っているよ。知ってるよ。知ってんだよ!秋山はそれを課長に言われるとは思わなかったため、だいぶ目に血が滲みていた顔をしていたに違いない。しかし、口には全く出さず「え!そうなんですか?」ということしか、できなかった。
「小幡勝博」課長は名前まで出してきた。この時、秋山は「自分が疑われている」ということを察した。そりゃ、高校の同級生だもんな。
「知っているのか」
「そんな、知りませんよ」
「同級生なんじゃないのか?」そこまで知っているのかよ。
「きっと、不登校だったんじゃないですか?」
「あぁ、そうかもな」あっさりと課長が食い下がったので、秋山はだいぶ驚いた。
秋山は心のなかで呟いた。
何やってんだよ、小幡。
うっす。




