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第四話「小幡勝博②」

うす。

                 ◆◆◆小幡勝博

 「すいません。今日の観覧はもう終了しているのですが」

 国会に入ると、スタッフらしき女性がそう言った。手に物騒な黒い袋を持っているのにもかかわらず、落ち着いた雰囲気だったことからこの女性はまだその中に爆弾があることを知らないのだろう。当然と言えば当然のことだが。そして、後ろの人質たちを見て驚いたり、動揺したりしていないということは、この女性は俺達はただの「迷惑な観光客(大人数な」としか思っていないのだろう。それはそれで好都合だ。

 「いやーそこをなんとかお願いしますよ。すぐ見るだけで帰りますので」

 「困りますよ」

 「ここの歴史を見るだけでいいんですよ」

 「観覧時間外はどうしても無理なんです。また明日お願いします」

 「今日で変える予定なんですよ」

 「ではまたいつか」

 くそ、コイツは無理だ。終わっている。なぜ今までクビにならないで働けたことか。しかし、騒ぎになることは絶対に避けたい。マスコミらが騒ぐのは俺のテロを見てからだ。俺はポケット手を入れ、ゴソゴソと何かを取り出す。

 スタンガンだ。

 女性はまだ俺がスタンガンを持っていることに全く気づいていない。平和ボケだ。ゆくっり、ゆっくり、スタンガンを近づける。ゆっくり、ゆっくり、胸の下のあたり。そこだ。


 女性は悲鳴も挙げずに倒れ込んだ。


 ただ、女性のまつ毛が微妙に揺れたことだけは、確かに気づくことができた。

 「さあ、行くぞ」俺は人質らに指示をしてから、前へ進む。これからだ。これからだ。これからなんだ。マスコミよ、新聞社よ、テレビ局よ、全国民よ、騒げ。騒げ。

 「テロを起こして、何をするつもりなんですか」人質の誰かが喋りだした。どうせ、またあいつだ。

 「俺は世界を変えるんだ」

 人質は聞き返さなかった。俺の言葉に感激したのか、納得したのか、それとも何なのかは知らないが、とにかくこれ以降話しかけてこなかった。でも、怖くて、怯えていることは目に見えた。それだよ。そういうリアクションだよ。


 ◇

 国会は思ったより広く、俺と人質の足音が響いた。

目的の国会の一室に着くと、人質たちを縛り付けた。一応口にガムテームも貼り、声が出せないようにもした。

 国会のガラスからはもう光が指すこむことはなく、ただ小さな月が照らしいているだけだった。外も暗く、静かにこのテロを語っているようでもあった。

 その月に照らされながら、爆弾を取り付ける。闇オークションで1000万ほどで買ったものだ。取り付け方は簡単で、配線をして、電源を入れれば終わりだ。時限式ではないため、好きな時に爆発できるのが長所の一つかもしれない。

 「それでは今から国会を爆発させる。お前たちに害はないから安心しろ。せいぜいお国が頑張ってくれることを祈るのだな」人質に告げる。

 やはり、あの日から世界と俺は狂っているのだ。だから、俺がやるしかないのだ。


 ー2026年7月21日、一人のテロリストが国会の一室を爆破


 それが、俺の短い夏の始まりだ。

うっす。

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