④④
茂木が斉藤こだまに告白したのは終業式が終わった後だった。明日から夏休みという前日に茂木は強硬策に打って出たのだ。
その勇気は褒め称えられるものだけど、夏休みの前日というのが僕には納得出来なかった。
何故ならフラれた時には夏休み期間中に少なからず傷ついた心を癒す為だけの時間が充分あるからだ。
そのような逃げ道を作った事が僕にはショックだった。茂木はそんな事は考えていないかったのかも知れないし、実際は直ぐにでも斉藤こだまに告白しようと考えていたけど、終業式まで言い出せずにいた、とも考えられる。
けど、外野からみたら逃げ道が用意されているようで、僕は茂木らしくないと思った。
学校で斉藤こだまと顔を合わせ気まずい雰囲気になる事もない。だが2人が付き合う事になったとしたら、この夏休みは最高のものになるだろうな。
僕は家に帰り茂木からの連絡が来るのを待った。
そしてその連絡は日付が夏休み初日に変わった
12時を少し過ぎた頃だった。端的に一言
「フラれた」
それだけだった。その一言に、茂木の斉藤こだまへ対する気持ちが本物だったのだと僕は改めて感じたのだった。
終業式にコクるって茂木らしくない、逃げ道なんか作ってなんて思った自分が恥ずかしくそして申し訳ない気持ちで一杯になった。
茂木は自分が斉藤こだまの事が好きというのを僕らに話すのが恥ずかしくて、斉藤こだまの方が自分に好意を持ってるかも?という風に話をすり替えたのかも知れない。
そう思う事で告白するという行為自体の難易度は、表面上は軽くなる。それを聞いた周りも、僕は否定したが、しょっちゅう喋ってるし意外とそうかもな?と軽いノリで後押しもしやすくなる。
茂木は中々告白する勇気が出なかったからあのような話を僕にしたのかも知れなかった。フラれた後で言うのはあれだけど、このような結果になるなら最初から応援してやれば良かった。だから僕は
「そっか。それならまぁ明日、ゲーセン行こうか?」
と返した。
「行くわけねーじゃん そんな元気ねーよ」
僕はその返事は既読無視する事にした。
返す言葉もなかったし、茂木は茂木で
「ガチ辛いわ、本当悲しいよ」を繰り返すだけだと思ったからだ。
それでも僕の本心は、落ち込むなよと伝えたかった。
けどその言葉こそが、フラれたばかりの茂木にとって、きっと1番無慈悲で残念な言葉になると感じ、黙ってスマホから手を離した。




