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泡沢に自己紹介を終えた古玉珠世は警部の指示により泡沢の隣のデスクを使うように言われた。
「え?警部、ここは木下のデスクじや…」
「まぁ、気にするな。直ぐにとはならないだろうが、木下は恐らく今、かりだされてる捜査一課山田班に配属になるだろうからな」
「そうなんですか?」
「あぁ。山田の奴が偉く木下を気に入ったみたいでな」
警部はいうと高笑いした。
「それに、チンポと乳首ってのもコンビとしては最高じゃねーか。両方とも勃つからな」
完全にセクハラな言葉だったが、そんな警部の話を真っ先に笑ったのは古玉珠世だった。
胸に視線を向けただけでビンタをするような女が、警部のセクハラまがいの言葉に笑い出す。
笑いのツボが浅いのか、それとも自分より力のある者には媚びへつらう奴なのか、古玉の事は何一つ分かってない泡沢や仲間達は、古玉珠世がどちらに属するか判断に迷っていた。
「泡沢先輩」
古玉珠世からいきり先輩呼ばわりされ、少しばかりドキッとした。
自分の事を先輩と呼んだは人生で古玉を入れて2人目だった。2人目はもちろん、今、自分のデスクの隣に座りキラキラした眼差しで自分を見つめている古玉で、もう1人は高校2年の時に入った茶道部の1学年下の後輩だった。
実質、自分は2年生から入ったので、1年生と同じ立場である筈がその後輩だけは、自分のことを泡沢さんでなく、卒業するその瞬間まで先輩と呼び続けた。
だがそれだけでドキドキするとしたら、とんだ童貞野朗だが、実際のところその後輩が泡沢の初彼女であり、童貞を捨てさせて貰った相手だったのだ。
その子はとても性にオープンだった。付き合う前から「先輩童貞でしょ?」とか「好きな人いますか?」「週に何回くらいオナニーするんですか?」とか「オナニーのオカズはどんな女の子ですか?」なんて事を平気で聞いてくるような子だった。
そんなタイプの女の子なら男が考える事は一つしかなく、それは「やらせてくれるかもしれない」だ。
だが根が真面目な泡沢はちゃんと手順を踏みたかった。だからこそ真剣に告白した。
「良いですよ。付き合っても。でも1つだけ条件があります」
「な、何?」
「私がいう事に正直に答えくれたら付き合います」
「わかった」
泡沢がいうと、その後輩はこう言った。
「先輩は私の事はそんな好きなわけではないけど、でもすぐヤレるかも知れないと思ったから付き合って欲しいって言ったんでしょ?」
「いや、そんなんじゃなくて、僕は本当に君の事が好きで…」
「正直に言わないとダメじゃん」
後輩はいい泡沢に抱きついて来た。
「どうなんですか?」
「き、君のいう通り…」
「やっぱそうだと思った。私ってこんな性格だから、男にやれる女だなって思われちゃうんだよね。これでもまだ処女なんだけどなぁ。ま、良いけど」
「そ、そうなの?」
「あははは。先輩、それって気を使ってくれたようで、そうじゃないからね。処女だと後々めんどくさくなるなぁて、思ってる奴が言う言葉だよ?つかそれを童貞の先輩に言われる私って、どんだけビッチに見られてたんだよ」
「ご、めん。そんなつもりは無かったんだけど」
「良いよ。許してあげる。だって私、先輩の事大好きだもん」
古玉に先輩と呼ばれて、泡沢はこれだけの事を思い出した。だからこそドキドキが止まらなかったのだった。
「せんぱい、センパイっ あわさわ、センパイ!」
「ん、あ、あぁごめん 何だっけ?」
「噂は本当の事なんですか?」
「噂?」
「手掛かりが見つかると勃起するって話、本当なんですか?」
「うん、まあ。恥ずかしいけど本当だよ」
「いつからそんな能力が身についたんですか?」
「身についたと言うか、何もいやらしい事をしていないのに、いきなり勃起する時は、何か意味と理由があるかもしれないと気づいたのは高校生の時だよ。それが今のようになったのは3年前のとある事件からかなぁ」
「とある事件?」
「そう。大してニュースにはならなかったけど、古玉さんは覚えてるかなぁ。練馬区で起きた事件でね」
「いえ、よくわからないです」
ま、全貌を話したわけではないから当然そのような返答になるのは仕方ない。
「簡単に言えばね。妻子のある富裕層の男が6名の人妻と不倫しててそれが奥さんにバレて、奥さんに刺殺された事件なんだ」
「そうなんですか」
「知らない?」
「はい」
「ま、知らないのは良いとして、その事件がきっかけとなって、自分のチンポが勃起するときは決まって手掛かりや犯人に繋がる何かしらが、側にあるのではないかと考えるようになったんだ」
「どういう状況になれば、勃起した理由が犯人に繋がると考えたのか、全く私には意味不ですけど、でもそう考えたわけなんですね」
「まあ、そうだね」
「勿論、チンポがちゃんと機能するか検証もしたし間違いも沢山おかしたおかげで今があるんだけどね」
泡沢が言うと古玉は頷き、私の場合とは違うなーと呟いた




