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 ①⑤

そいつはトイレの中に入ると手洗いの洗面所に僕を腰掛けさせた。口の傷口をじっと眺めてから又、ハンカチを取り出し僕の唇に出来た傷口を拭いた。


そいつは濃いメイクをしてピチピチの緑のボディコン服を着ていた。髪は短めの坊主頭でピンクに染めている。太い二の腕の隅から剛毛な腋毛が覗き出ている。


こんな体躯の男から逃げるなんて到底不可能だ。


僅か15年の人生なのかと嘆くがそれが言葉となって外に出る事はなかった。


男は僕の着ている学生服を脱がしにかかった。


あんな目に遭ったばかりだから、脱がされる事に対して抵抗する気力なんて何処にも残っていなかった。


今しがた、服を脱がされるより酷い目に僕は遭ったばかりなのだ。歯向かう事がどういう結末を迎えるかくらい容易に想像出来る。


男は僕を全裸にした。そして持っていたバックからポシェットを取り出した。


そこに手をいれ四角いプラケースを出した。蓋を開けて中からかなり大きめの両刃の剃刀の刃を慎重に取り出した。


そして僕の股間に生えた陰毛を剃り始めた。


せめて剃るなら剃るでシェービングクリームくらいつけてくれよと思いながら、綺麗に剃られていく陰毛を眺めていた。


陰毛が終わると僕は後ろ向きにされ、肛門を開かれた。


「お尻の毛はまだないのね」


そう言ったのが聞こえると同時にお尻に激痛が走った。間もなく何かがお尻の穴の中を這いずり廻り出した。やられたと思う間もなく、僕はそいつに激しく貫かれ続けた。


痛いと喚き助けを求めても無駄だった。男は更に動きを速くした。下腹部から頭頂部へ向けて鋭利な物が突き抜ける感覚が身体を貫いた。


瞼の裏が焼けるように熱い。涙が出て垂れ落ちる鼻水が唇の傷に触れた。そこに痛みはなかった。


僕はお尻の痛みに耐えきれず拳を握った。


男の横腹や足を殴った。だが男は構わずに腰を動かし続ける。身体の中に生暖かいものが入って行くのが感じられた。イッたのだなと、まるで他人事のように思った。


男はペニスを抜くと何もなかったかのように僕の両手首を掴んだ。正面に向き直され両腕を上げるよう言われた。


「下げたらダメよ」


男は僕の腋毛を綺麗に剃り上げると剃刀の刃を口に咥えた。そのまま僕の綺麗に剃られた左脇に鼻を押し付けた。鼻で息を吸い込み口で吐く。


その時、咥えていた剃刀が僕の太ももに落ちた。


「10代の脇って無花果のような臭いがするの

不思議なくらい何故かみんな無花果の香りがするの」


僕は太ももに落ちた剃刀にそっと手を伸ばした。


男は気づいていない。何度も何度も僕の脇の臭いを嗅いでいる。


僕はそんな男の耳裏へ剃刀を力強く押し付け顎下に沿うように一気に剃刀の刃を滑らせた。


血飛沫が舞い僕の顔や身体を真っ赤に染めた。


男は切られた傷口を押さえながら、短い悲鳴をあげながら膝から崩れ落ちた。


汚れたタイル貼りの床に大量の血が広がっていく。隙間風のようなヒューヒューという音が男の傷口から聞こえた。


爪先が痙攣し始め、見開かれた男の目が次第にその輝きを失っていく。


もうその目が僕を見つめる事は出来ないんだ、そう思うとホッとした。


僕は洗面器から降りて脱がされた制服を拾い上げた。


多少の血飛沫が飛び散っていたが気になる程ではなかった。


着替えると僕は洗面台で顔を洗い、何度もうがいをした。そして男のポシェットからハンカチを取り出した。


顔を拭いた後、触れたと思われる便所のいたる箇所を拭き取るとハンカチのその上に剃刀を置いて折り畳んだ。ズボンのポケットに押し込む。


このまま受付の前を通って外に出るわけにはいかないよな?そう思った瞬間に自分がやった行いに思わず怖くなった。なのに何故かペニスはムズムズとし始めて来る。勃起し始め、僕は完全にこいつらの変態が感染したのかと思った。


トイレの中には窓はなかった。つまりここから逃げるにはトイレを出なければならないという事だ。


しゃがんだ姿勢でゆっくりとドアを開ける。薄暗い受付にハゲた男の姿は見えなかった。新たな獲物が来てその連絡をしているのだろうか。


にしては声は聞こえない。聞こえるのは未だ劇場内で流されている牛の声だけだ。


その瞬間、僕はハッとした。ハゲた長髪の男は映像を流すため今は映写室にいて、ここにはいないのかも知れない。チャンスだ。急いで逃げ出せば助かる。


そう思い走り出そうとしたその時だった。劇場内にリュックを忘れて来ている事に気がついた。あれを置きっぱなしにすれば通っている学校も名前もバレてしまう。

だから放っておくわけにはいかない。


仕方なく僕は身体を低くしながら再び劇場内に入って行った。しゃがんだ姿勢で自分が座っていた場所に行こうとしたその時、何かを蹴飛ばした。僕のリュックがそこにはあった。


僕の右側に座っていた奴が僕を犯すために邪魔になるリュックを放り捨てていたらしい。


僕はそれを掴み、直ぐ様扉を押し開けた。受付の部屋に出ると、匍匐前進で受付前を過ぎ扉を開けた。


力の限り階段を這い上り外へ飛び出した。犯されたせいか中々脚に力が入らなかった。助けを求めたかった。


けどそれが出来ないのはわかっていた。僕は酔っ払いのように左右へと揺れながら必死に駅の方へと向かって行った。


あいつの仲間に、奴が殺されたと知られるのは時間の問題だ。


受付の親父はきっと僕が殺した事に気づくだろう。


何故ならそれがグルになっている、確か佐江口とかいう名前の奴等のやり口だろうからだ。


きっと劇場内で僕のように犯された奴のラストに控えているのが僕がやられたような行為なのだろう。だがそいつは今、トイレでくたばっている。イコールおのずと犯人は僕と言う事に繋がってしまう。ただまだ救いはあった。名前などが知られていないのは僕に残されたたった1つの利点であるように思えた。


今、逃げ切れればバレないかも知れない。本気でそう思った。


けれど仲間を殺されたのに、そんな僕を残りの3人がみすみすほったらかしにするだろうか?わからない。


見た感じスーツを着ていたりしていたから、暴力団とか半グレのよう奴等とは思えなかった。だから向こうからは報復はされない気がした。だけど……


僕は頭を振った。今は無事に家に帰り着く事だけを考えろ。それだけを考えろ。僕は右へ左へとフラフラしながらおぼつかない足取りで駅に急いだ。


そこまで行けば助かる。今はその他の事は一切考えたらいけない。必要ないんだと、フラつく足を叩きながら何度も何度もそう言い聞かせた。


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