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 ②⑥


「泡沢っ!」


警部の怒鳴り声が聞こえ、泡沢は慌てて起き上がった。


「すいませんでした!」


一度ならず、2度も桜井真緒子を取り逃した事で、弁明のしようもない。刑事失格だ… 辞表は内ポケットに忍ばせてある。


同じ人間が同じ殺人犯を取り逃す事がどれだけ致命的な事なのかくらい、泡沢でもわかる。

ま、馬鹿な木下はわからないかも知れないけど…


「先輩?」


チッチのその言葉で泡沢は目を覚ました。

目の前には近すぎるくらいチッチの顔があった。周囲を見渡すと、白いカーテンが引かれてある。その奥からヒソヒソと話す声が聞こえた。自分は今、どうやら病院のベッドの上にいるようだった。


「近いよ」


「先輩、めちゃうなされていたから、私が白雪姫みたいにキスしてあげたら目覚めるかなぁと思ったんですよ?それでいざしようとしたら、先輩起きちゃうんだから。せっかく私の濃厚濃密のキスをプレゼントしてあげようと思ったのに…でも無事で良かった…」


「お陰様で」


「怪我はないのか?」


「はい。打撲と擦り傷程度で済みました」


「怪我、してるじゃないか」


「この程度は怪我とは言いませんよ。だってあの時、もし先輩が来なかったら、私、桜井に殺されていたと思いますから。それを考えると、この程度は怪我じゃないです」


「ま、そうだ。そうかもな」


「ですよ。はい」


「なぁ、やっぱり、桜井真緒子には逃げられたのか?」


「えぇ。悔しいですけど。先輩を犯人と間違えて殴った木下さんが、直ぐに追いかけたのですが、見失ってしまいました」


「やっぱ、あれは木下だったのか」


「やっぱ、と言うと?」


「突入して来た時に、あいつ叫んだだろ?馬鹿だよな。普通、暗い場所だと、ホシが何処に身を隠しているのかわからないから、自分の居場所がわかるような行動は慎まなけれならない。なのに木下は大声なんて出しやがって。やっぱりあいつは馬鹿だ」


「おまけに先輩を角材で殴って気絶させちゃうんですもん」


「馬鹿につける薬はないとはよく言ったものだよ」


「本当それ」


とチッチは笑った。


「俺、どれくらい意識失っていた?」


「5時間くらいですかね」


「そうか…」


皆は今頃、血眼になって桜井真緒子の行方を追っている事だろう。田辺夫婦とラーメン屋店主と神草、そして田町京太郎、計5人を殺した連続殺害犯。


桜井真緒子は完全なるシリアルキラーだなと泡沢は思った。


だが、桜井真緒子はラーメン屋店主とその恋人の神草早苗の殺害については、ハッキリと自供した訳ではなかった。どちらでも好きなようにしてみたいな感じで話していた。だが、確かなのはその2人について、良い感じは受けていなかったのは間違いない。


だから、自分が殺してようがそうで無かろうが、2人が殺されたのだから、どうでも良いって意味であのように話したのだろう。


だがと泡沢は思った。あの時は必死でチッチを助けようとしていた為に、気にはかけなかったが、車椅子に縛られていたチッチが、何故、白手袋をしていたのか。

工場内が汚れていて素手で触れたくなかったから?

もしくはあの工場を犯行現場と断定し、指紋がつかないよう気遣ったのか?いや、あくまで事件現場に行ったわけではない。だから手袋をしていたその意味合いを泡沢にはわかりかねた…。


「先輩、先輩ってば!」


「あ、悪い、考え事してたよ」


「さっきまで三田さんもお見舞いに来てたんですよ」


「三田さんが?」


「ええ。私の軽率な行動なついて、こっぴどく怒った後で、木下を行かせたのは俺のミスだった。すまなかったと泡沢に伝えておいてくれ、なんて言ってましたよ」


「三田、さんが…」


「私、ちゃんと伝えましたからね」


「あぁ。ありがとう」


泡沢は窓の外を眺めた。微かに夕陽が広がり始めている。刑事に昼も夜もないというのが署長の口癖だが、今日くらいはゆっくりさせてもらおう。


「ところで、チッチ」


「なんでしょうか?」


「どうして婦人警官みたいに、制服を着ているんだ?」


「先輩、気づくの遅いですよ〜」


「遅い、早いの問題じゃないだろ?もう立派な刑事なのに、わざわざ着る必要があるんだ?」


「実はですね。本当はナース服着たかったんですけど、ここの病院、ケチだから貸してくれなくて…だから、仕方なく制服にしたんですけど… いまいちですか?」


「いやいや、そういう意味じゃなくて、ナースでも警察の制服でも着る必要はない筈だろ?」


「パートナーとして癒やしてあげたかったんです。でどうせ癒すなら制服って最強じゃないですか?それに先輩、今日はまだ抜いてないでしょう?多分そうだと思ったから、それなら制服着てたら、より萌えてくれるかなぁと考えて、わざわざ制服着たのに、先輩、女心わからないかなぁ」


泡沢は横になりながら苦笑いを返した。たったそれだけで頭がズキリと痛んだ。


「なぁチッチ」


「何ですか?」


少し拗ねたのだろう。口調に棘があった。


「ありがとうな」


泡沢がいうとチッチは掛け布団の上から泡沢のチンポに手を置いた。


「怪我で意識失ってても尚、チンポは健在ですね。先輩」


チッチは手を離し、掛け布団の下に手を回した。下着をずらして泡沢のチンポをしっかりと握った。ゆっくりと始動し始める。


その手に違和感を感じた。首を起こしチッチをみる。

空いている左手には白手袋が嵌めてあった。チッチが捕らえられていた光景がフラッシュバックした。


「手袋は気持ちよくないですか?」


一体、何故、チッチは手袋なんかしていたんだ?


「外しますね。でも、ティッシュとかないから、イク時は、手袋の上に出してください」


理由なんてないのかも知れない。が、泡沢の中では違和感でしかなかった。犯人がいるかも知れない想定で向かった筈なのに…だが普通手袋をするのは現場検証は事件現場に臨場する時くらいのものだ。わざわざ持ち歩くような事はしない。なのに…


チッチは…指紋がつく事を恐れた?泡沢は荒い息を吐きながら、チッチ、イクッと言った。


チッチはそれを聞いて柔らかく微笑み、白手袋を泡沢のチンポに被せた。


「先輩はいつも元気だから、私、困っちゃいますよ」


チッチは泡沢が出した精子の入った白手袋をかざして見せた。


「毎日、出してあげなきゃいけないけど、私は全然平気です。だって…」


チッチはその後の言葉は口に出さなかった。


泡沢はそれを耳にする事なく、目を閉じた。出したばかりだというのにチンポは直ぐに勃起した。

チッチが再び、シコリ出したからというのもあるだろうが、それだけでは無いと泡沢は考えていた。既にカラカラの筈の精巣が放出を求め勃起している。だが、本来の自分はこの状況で現場へと赴き、ホシに繋がる何かを見つけた時に勃起するのだ。だだ欲情に溺れているだけだとはどうしても思えなかった。何よりそう考えさせたのはチッチの白い手袋だった。やはりこの手袋には違和感を覚える。重度な潔癖症であれば普段から手袋は着用している筈だ。だがチッチが手袋をしていたのは…


泡沢は上半身を起こし、チッチに手袋の件を問いただそうとしたその時、チッチがシーツをめくりそこへ潜り込んた。勃起した泡沢のチンポを咥えいやらしい音をたてながら舐め始めた。泡沢はその瞬間、考えていた事が頭から吹き飛んだ。気づけば鼻息荒くチッチの名を呼び続けていた。



了 

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