②④
チッチはインターネットで区内全域に渡りここ半年以内で、倒産もしくは自主的に閉めた工場のホームページを検索した。
ホームページを作っていて、尚且つ潰れた工場は僅か3社でその内、金属加工業を生業にしていた会社はたったの一社だった。
「とりあえず、ここに行ってみます」
「わかった。だがこまめに連絡を入れるのを忘れるなよ」
威勢のいい返事を返してチッチは颯爽と部署を出て行った。
泡沢はしばらくチッチの席に座って、パソコンと睨み合っていた。
ネットに載っている工場はゆうに2百近くあった。
それでもネットにはまだ記載されていない、個人事業主で小規模の工場などもあるかもしれない。
チッチにはあーはいったものの、ゆくゆくは潰れてない工場も調べる必要性はあるだろう。
「よし、そろそろ行くか」
一人呟き、地下駐車場へ行くと三田とバッタリ出くわした。
「今からか?」
「えぇ 三田さんもですか?」
「まぁな」
そういうと三田はキョロキョロと辺りを見渡した。
「相棒は、どうした?」
泡沢は三田に擦り寄り、小声で事の次第を話した。
すると三田はいきなり険しい表情に変わった。
「俺もその事は頭によぎりはしたが、まさかチッチが…だがその事に気づいたの褒めてやる。だが一人で行かせたのはマズかったな」
「ダメでしたか?」
「当たり前だろ!もし、廃墟となった場所が犯人が身を隠していたり、拠点にしてたらどうする?上手く行けば、何事も起こらないかも知れないが、最悪、チッチは捕らえられ、殺られちまうぞ!」
三田は何故、相談しなかったと怒り、泡沢達が回る予定の場所はこちらで処理してやるから、チッチの後を追え!といい、泡沢の尻を蹴り上げた。
「刑事ってのは最悪の場合を想定して動くものなんだよ。安易に判断するのが1番、やってはいけない事だ。わかったか!」
泡沢の背筋に1本、何かが入れられたような気がして、新米刑事のような威勢の良い返事を返した。
「チッチと合流したら、とりあえず連絡いれろ」
「わかりました」
泡沢は頭を下げてから車に乗り込んだ。
チッチに連絡を入れる。
が、直ぐに留守電になった。
「圏外?」
泡沢は、変だなといぶかしんだ。
今の時代、圏外なんて、滅多の事がない限り、先ず起こり得ない。
例えば工事中の地下道などがそれにあたるのではないだろうか。
という事は、チッチはわざと電源を落としたのか。
可能性は低いがバッテリーが切れたかのどちらかだろう。だが、恐らく後者はあり得ないと泡沢は思った。
腹の下あたりがキリッと痛んだ。一人で署を出てからそう時間は経っていない。1時間?いやそこまでは経ってはいない筈だ。三田の言葉が脳裏に浮かぶ。
ネガティブな思考が泡沢を浸食し始めていた。エンジンをかけ、車を急発進させた。
道路に出ると直ぐスマホを取り出し、チッチが検索していた事を真似るようにして、潰れた工場を調べた。
(有)田辺切削工業所(タナベ セッサク コウギョウショ)
泡沢は住所を頭に入れ、まずそちらへと車を走らせた。




