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 ①⑨

剣道場に集められた大量のゴミ袋は14箇所に区分され、それぞれに署員2名ずつが配置され仕分に汗を流していた。


食品類の容器や袋は、あれだけのゴミ屋敷に住んでいながら綺麗に洗われていた。こんな事が出来るなら部屋だって綺麗に出来る筈だろうと泡沢は思った。


泡沢とチッチも数個のゴミ袋がある場所に配置されたが、泡沢が1人で出来る数だからと、チッチは出てきた物を並べる場所を手伝ってもらう事にした。


正直、1人で区分けするのは面倒だが、未だチッチがあの事を打ち明けなかった為、あえて距離を取る事にしたのだった。


ボーイッシュな写真の女とショートカットのチッチ。

そしてゴミ屋敷から何かを持ち帰ったチッチ。それが何なのかがわかれば…疑いたくはないが、否が応でも疑いたくなる。


刑事の感とまではいかないが、チッチが店主と神草早苗と関わりがあっても不思議ではない。人間関係なんてチッチの性格からすれば簡単に作れてしまうだろう。天真爛漫なあの性格と仕事とはいえあの積極性。落とそうと思えばどんな男でも落とせる筈だと泡沢は思った。


泡沢のあてがわれたゴミ袋には雑誌や広告類が大量に詰め込まれていた。最近は付録がついていないと雑誌も売れないと聞いた事があるが、その付録入りの箱やケースも同じく入っていた。それらを仕分けていく。


重ねられた女性雑誌の中に、男性ファッション誌も数冊含まれており、泡沢はそれらを1ページずつ開いていった。もし神草早苗が店主と恋人同士ならプレゼント用に何かしらのチェックをしているかもしれないと考えたからだ。


予感は的中したが、泡沢のチンポは無反応だった。これを見つけたのが自分でなく三田であったなら、チェックされていた店をしらみ潰しに当たるだろう。


だが泡沢にその必要はなかった。全て自分のチンポが教えてくれるからだ。今まで一度として、自分のチンポを疑った事はない。それはこの先も変わらない筈だ。


だが、歳と共に勃起力は低下していくわけだから、やがてはこのやり方の捜査は出来なくなる。そうなる前に三田のように地道な捜査が出来るよう身につけておくべきだ。だが未だにそれが出来ずにいる。自分のチンポを信じるのは確かに大切だが、自分は刑事なのだ。


疑ってかかるのも仕事の内な筈だ。となればやはり疑いは自然とチッチに向いた。チッチがあの店主を撲殺したのか?想像は出来る。一応、チッチは柔道はやっていないが剣道には造詣が深い筈だった。


全国トップクラスの強豪な選手ではないにしろ、それでも棒を持たせれば簡単に頭を打ち抜ける。それも的確にだ。


一通り見た後で泡沢は一旦手を休めた。全部見たわけではないが、自分の分からは手掛かりになるような物は見つからなかった。チンポも反応なしだ。つまり残り数袋をひっくり返し探しても無駄なような気がした。雑誌や広告類に混ざっている可能性もないとは言えないが、それも望み薄だと泡沢は踏んだ。


周りを見渡すと泡沢がチェックする為にブルーシートの上に多くのものが丁寧に並べられてあった。


早いとこそれらもチェックして無駄な物は再び袋に入れ、神草宅へ返す準備もしなければならない。


まだ自分のは片付いていないが、そちらを手伝おうと立ち上がると、並べ終えたチッチと目が合った。


チッチはスマートな歩き方でこちらに向かって来た。

チッチが側に来るとチンポが疼き直ぐ様、勃起した。

これは、と泡沢は思った。最初、チッチの事が好きで、性癖を満たしてくれる為に勃っているものだと思っていたが、ひょっとするとひょっとするかも知れない。


思いたくはなかったがチッチが殺人犯の可能性もあるかも知れないと泡沢は思った。でなければ、こうもチッチの側にいるだけで頻繁にチンポが勃つわけがない。

幾ら何でも勃ち過ぎだ。初めてオナニーを覚えたばかりの中学生じゃないのだ。


「先輩」


「どうした?」


「手を出してください」


「手を?」


「そうです」


言われたようにするとチッチは泡沢の手のひらに小さな楕円形の物を置いた。中央にはボタンらしき物がついている。


「なんだこれ?」


そう尋ねるとチッチは小声でこう言った


「遠隔バイヴのリモコンです。先輩、私、もうつけてます」


「は?」


「スイッチ押してみて下さい」


言われたようにすると、チッチがお漏らししそうな動きをし始めた。泡沢は慌ててすぐに止めた。


「思ったより音はしないですね。これならつけててもバレませんね」


「チッチ、お前、まさかこれを神草宅から…」


「シッ!盗んだわけじゃないです。借りただけですから。それにこういう物は試してみないと良さがわからないじゃないですか?だからちょっとだけ借りてみたんです。あ、心配はいりません。まだ未使用のものでしたから」


チッチはいい、満面の笑みを浮かべた。


「先輩だって、私を支配したくなる時もあるでしょ?」


チッチが言うより先に泡沢は遠隔バイヴのリモコンのスイッチを押していた。チッチは淡い吐息を吐きながら、仕事に戻って行く。歩き方が不自然過ぎて、他の女子警官が不思議そうに顔をしかめていた。泡沢は慌ててスイッチを止めた。


「先輩!こちらは終わったので、確認お願いします!」


「あ、あ、あぁ。今行く」


泡沢はチンポの位置を直し、僅かに前屈みでそちらへ向かった。


結局、チッチは神草などと関係は無さそうだ。自分の早合点かと泡沢は思った。


チッチが現場からまさかのバイヴを隠し持って帰ったとは夢にも思わなかったが、それならそうと早く教えて欲しかったと話すと、チッチは具合悪そうだったからと返した。


元気な時にいやらしい気持ちを燃えさせて欲しいって思ったので、なんて平気で話す始末だ。


つまり泡沢の勃起も、捜査の為ではなくチッチといやらしい事をしたいが為に勃っていたのかと思うと、まだまだ一人前の刑事には程遠いなと、泡沢は思い知らされた気がした。


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