⑦①
僕らは裸のまましばらく抱き合っていた。
赤津は何か吹っ切れたのか義理の家族や赤津悠太の思い出を話し始めた。だがここでも赤津悠太が元彼だとは口には出さなかった。
「私って不幸を呼び込む星の下に生まれたのかも知れない」
「どうしてそう思う?」
「お姉ちゃんもお兄ちゃんも死んだから」
お姉ちゃんというのきっと藤城たつきの事だろう。
「それだけで不幸を呼び込むって思わない方がいいよ。僕だって夏休み終わる寸前にお爺ちゃんが死んだんだから」
「でもお爺ちゃんは殺されたわけじゃないでしょ?」
「うん。まぁそうだけどさ」
「私は、私の家族は2人も殺された。犯人だってまだ捕まっていないのよ?」
「うん」
「仲野部には悪いと思うけど、お年寄りが普通に死ぬのと兄や姉が殺されるとじゃ痛みの重さが違うから。失った者への喪失感は2度と取り戻す事は出来ないの。日々憎しみは募るばかりで、でもその気持ちをぶつける相手も場所もない。あるのはそんな自らを戒めようとする心だけ。そんなのおかしいよ。何故、被害者である私達が、怒りを沈めようとしなくちゃいけないのよ?そうでしょ?なのにそうしちゃうの。そうしなければ私も誰かを殺してしまいそうになるから。それが被害者である私や家族の苦しみなのよ。こんな気持ちを一生持ち続けながら生きていく自身は今の私にはない……」
頭をぽんぽんと叩いてあげながら赤津を力強く抱きしめた。
殺された家族への喪失感は僕にはわからない。そうだ。だから赤津のいう通りなのだろう。
茂木の家族の気持ちも僕にはわからない。
ただ病気で死ぬのと殺害されて死ぬのでは雲泥の差があるのは頭ではわかっていた。
だがそれはあくまで頭で理解している事であり、心の底からわかってあげたわけじゃなかった。
僕は赤津にキスをして大好きだと告げた。
赤津は頷いた。だが赤津自身の本当の声は聞く事は出来なかった。




