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 ⑦⓪

もうすぐ夏休みが終わろうとしていた。

お爺ちゃんは寝たきりになり、血の気を失ったかのように肌色が蝋人形のような色になっていた。


話しかけても返事も出来ず、薄っすらと瞼を開けただ天井を見上げているだけだった。


死期は夏休みの終わりよりも早くに訪れそうだ。そんな状態にも関わらずお婆ちゃんは顔色すら変わらなかった。僕らの前では泣き言一つ、口に出さず笑顔を絶やさなかった。


「誰にでもお迎えは来るものですからねぇ」


お婆ちゃんはいい、


「何十年も寄り添って暮らして来たこの家でお迎えされるのはお爺さんも嬉しく思っている筈ですよ」


と付け加えた。


僕が望んだお爺ちゃんの突然死はどうやら来なさそうだった。まぁ仕方ない。これで愛している者のいきなりの死を体験出来る事は無さそうだ。


死までの工程の時間がある分、家族はその時間の経過と共に少しずつ死を受け入れていく事が出来る。だとしてもそこにはちゃんと喪失感や深い悲しみといった感情が無くなるわけではなく、ただ時間というものが、受け入れやすくしてくれているだけだ。


残念だがこればかりは僕も受け入れるしかなかった。近々に死ぬのがわかっているお爺ちゃんをわざわざ殺すわけにもいかないし、殺す理由もないのだから。


赤津に送ったLINEには4日後に既読はついたが返事はなかった。義理の兄で彼氏の死というダブルのショックに未だ赤津は立ち直れていないのだろう。


正直、そんな赤津を僕は見損なった。一体、いつまで引きずれば気がすむというのか。まさかこの先もずっと引きずったまま生きていくというのだろうか。もしそうならつまらない人生を送る羽目になると思うし、何のための自分の人生だというのだろう。もしかしたら赤津は未だに藤城たつきの死も引きずっているのかもしれない。


2学期が始まるまではこのままそっとしておこうと思った。赤津本人が赤津悠太の死を受けいれある程度、立ち直らなければ、不死身階段へ遊びに行った時のような赤津自身が戻ってくる事はない。それは僕としても受け入れ難い現実だ。だって僕が好きなのはそんな赤津だから。


残り5日間という夏休みの終了を告げるカウントダウンが始まった頃、お爺ちゃんはひっそりと息を引き取った。初めにそれを発見したのは当然、お婆ちゃんだった。お婆ちゃんは冷静にお爺ちゃんの死を僕ら家族全員に告げた。


むしろお母さんが慌てていた程だった。


取り急ぎ、葬儀の手配やら近所や町内会の会長、副会長と連絡に忙しかった。


お父さんは我関せずみたいに呑気に普段通りのルーティンを続けていた。僕は僕で魚釣りを手伝い、工具の手入れや水槽の水を抜き、デッキブラシを使って水槽の中を洗った。


鰐が食べなかった魚の死骸が異臭を放ち、たまらないくらい臭かったが、水槽の上へ上り、跨いだまま水道ホースの先をつまみ、水の威力を強くしながら死骸にあてると粉々に砕け、うまい具合に排水口へと流す事が出来た。


鰐はしばらく見えなかったうちにかなり大きくなっていた。水槽が小さくない?とお父さんに話すとお父さんもそうだなといい、考えなきゃいけないなと言った。


お爺ちゃんの告別式や葬儀が終わると翌日から2学期初日の登校日だった。


正直、お爺ちゃんを荼毘に伏すならエサとして鰐にあげたかった。鰐も魚なんかより肉が食べたいに決まっているからだ。だがそんな僕の気持ちはさすがに誰にも話せなかった。お父さんに言ったら、怒られるのは目に見えているからだ。


そもそも鰐の餌はクズの死体と決まっている。息子が自分の父親の遺体を解体したいなどと口に出せばどんな親でも怒る筈だ。わかっている結果をわざわざ口にするほど僕は馬鹿じゃないし、その必要性もない。


始業式に姿を現した赤津は夏休みに遊んだ頃より、痩せて見えた。心労がたたって食事も喉を通らないのかも知れない。


僕は始業式が終わる午前中、赤津には一言も話しかけなかった。


終礼が終わり帰りかけた赤津をようやく呼び止め一緒に帰ることにした。


「返事しなくてごめん」


「大丈夫。返事が来なかった時点である程度想像出来たから」


僕の言葉に赤津は目を潤ませた。


「話たい事があればいつでも聞くからさ」


「うん。ありがとう。嬉しい」


バスを降りて駅に向かっている最中、赤津が言った。


「仲野部、これからなんかする事ある?」


「ないよ。どうして?」


「家に帰りたくない」


「そっか。なら僕の家に来る?」


赤津は黙って頷いた。


家に帰りたく無いというのはその家には義理の兄で元彼でもあった赤津悠太の思い出が沢山詰まっているからだろう。


少しでもその空気に触れたら嫌でも思い出す事がある為に、赤津は帰りたくないと言ったのだと僕は思った。


僕として好都合だった。赤津の帰りたくないという言葉のせいでペニスは硬くなり勃起し始めていたからだ。


電車の中で赤津を慰めながらコンドームはないけどどうしよう?などと別な事を思ったりしていた。


駅を出て自転車置き場につくと赤津はこう言った。


「不死身階段まで行った時、めちゃくちゃ楽しかったね」


「うん、すげ〜楽しかった」


「また行きたいな」


「いいよ。なら今度の土曜日行く?」


「うん。行きたい」


「不死身階段でいいの?」


「ん〜ただ2人乗りしてぷらぷらしたい」


「目的地のない小旅行だね」


「それも楽しそうだね。うん いいよ」


駅から家まで2人乗りして帰った。

不死身階段へ行った時とは違い、赤津はずっと僕の背中に身体を押し付けていた。


直に赤津の胸の感触が背中を伝わっていき、

これから不死身階段で見せたあの腹部に触れられるかも知れないと思うと興奮がおさまらなかった。


家につくと車庫に車がないのが目に入った。

運良く家には誰もいないかも知れない。

そんな風に思いながらドアノブを掴むと、

鍵がかかっていた。ラッキーだ。僕は合鍵を取り出し赤津をエスコートする形で家の中へと招き入れた。


一旦、リビングへ行き、ペットボトルのジュースとグラスを2つ持ち、僕の部屋へと向かった。


「仲野部の部屋って意外にシンプルなんだね」


「そう?」


「アイドルとかのポスターやうちわを飾ってるかと思ってた」


赤津はいい笑った。今日初めて見せた笑顔だった。


「オタク認定してたのかよ」


「うん。茂木と飛田と仲良いから、多分オタクなんだろうなぁって」


「仲は良いけどあいつらと一緒にしないで」


笑いながらそう答えた。


グラスにジュースを注ぎ赤津に手渡した。

テーブルがない為、赤津は僕のベッドに腰掛けている。


「茂木とはもう会えないんだね」


「あぁ。寂しいよ」


「仲野部は特にそうだろうね」


「赤津は寂しくないの?」


「寂しいとは思うけど、きっと仲野部程じゃない」


「そっか。赤津は特別、仲良くしてたわけではないもんな」


「そんなんじゃないの」


「どういう事?」


「茂木の事を寂しい思う以上の事が、最近起きたらか」


「え?それってまさか…例のニュースの…」


赤津は黙って頷いた。いきなり泣き出し僕はそっと赤津の手からグラスを受け取り机の上に置いた。そして赤津をそっと抱きしめた。


「殺されたのは私のお兄ちゃんなの。義理の兄にあたる人だけど、小さい頃からずっと変わらず私には優しくしてくれて…とても正直で良い人なのに…どうしてあんな目に遭わなきゃ…」


赤津はそこで言葉に詰まった。大粒の涙が頬を伝い落ちて行く。僕は赤津の顔を覗き込み人差し指の腹で涙の跡を拭ってあげた。


赤津は俯いていた顔を僕の方に向けた。唇は震え涙は止まる事なくこぼれ落ちていく。こちらを向いている赤津の顎に空いた手を添える。


赤津の顎を支えてながら顔を上げた。涙袋を拭いてあげながら、赤津はお兄ちゃんとは言ったけど彼氏とは言わないんだな、と思った。


お兄ちゃんは優しく正直者だから、浮気した事も赤津に正直に話したのかも知れない。


まぁ、それは正直というより、赤津の嫉妬心を試したかったか、赤津に飽きたかのどちらかだろう。


だから浮気をバラしたのだと僕は思った。そんな赤津は今にも大声で泣き出しそうだった。


僕は赤津の目を見つめながらそっと唇を近づけていった。拒まれるかと思ったが赤津はすんなりと受けいれた。弱っている自分を優しく包み込み慰めてくれる相手なら誰でも良いのかも知れない。


まぁ僕としては今はそんな赤津の気持ちなどどうでも良かった。唇を重ね舌を入れた。赤津の方から絡んで来る。歯の裏を舐め赤津の唾液を啜った。


そのまま崩れるようにゆっくりと赤津をベッドに横たえた。リボンを取りワイシャツのボタンへ手をかけた。その手を赤津が握りしめて来る。僕は構わずに二つ目のボタンを外した。赤津はダメと囁いたが、無視してワイシャツの上から胸に触れた。


ダメって何だよと思った。こんな風にお兄ちゃんにも触らされていたんじゃないのか。そうだろう。でもそのお兄ちゃんは、平気で浮気をするお兄ちゃんは死んでこの世には存在していない。赤津を悲しませたから、僕が殺してやったんだ。あんな奴は赤津だって許せない筈だ。


僕はワイシャツを脱がしブラの下から赤津の胸に触れた。久家綾乃の胸よりかなり大きくて手触りも良く柔らかかった。生きている温もりが手の平を伝い僕の心まで染み込んで来る。


乳首は立ち、摘みながらブラを押し上げた。

胸を揉みながら乳首に唇を当てた。舌先で舐めていると赤津が僕の股間に手をあてズボンの上からペニスに触れ始めた。びっくりして一瞬腰が引けたのを赤津は両足を使い僕の腰に巻きつける。その状態のまま赤津は両手を使いベルトを外した。下着の中に手をいれ、亀頭の先から垂れている液体を指の腹で撫でた後、熱を持ったペニスをしごき始めた。


イキそうになるのをお尻の穴に力を入れて堪えた。赤津のスカートの中に手を入れ性器に触れると下着はびしょ濡れだった。性器の形に沿って指の腹でなぞった後、下着に手をかけた。


スカートを捲り上げると赤津は腰に絡めていた足を解いた。自らスカートのホックを外す。僕はそれを眺めながらシャツとズボンを脱ぎ下着一枚の姿になった。赤津は一旦、身体を起こし恥ずかしげにワイシャツを脱ぐと恥ずかしさを隠す為か、僕の下着に手をかけ力任せに脱がそうとした。そこで一瞬、笑いが起きた。僕は反り立ったペニスを握る赤津を見て、この瞬間から赤津はお兄ちゃんのものから僕のものへと移り代わったと思った。


赤津は僕のペニスを握ったままベッドに横になるとそのまま自身の性器へと導こうとした。


あぁ。赤津はきっと僕が童貞だと思っているのだろう、と思った。でも僕は既に胴体だけの温もりもない久家綾乃の死体で童貞を卒業している。


だがそのような事は口に出せる筈もなく僕は赤津に導かれるままに赤津の中へと入っていった。ペニスに伝わる粘着質な性器とその温もりは確かに初めての経験だった。僕は赤津と舌を絡ませながらゆっくりと腰を動かして行く。


服の上からではわからなかった、赤津の想像以上の大きな胸に僕は意外性というものに興奮を覚えた。


今にも出そうになるのを必死に堪える為に頭の中でミニシアターで犯された僕の姿を思い出した。


だが何故か僕の鼻息は荒くなり腰の動きも激しくなって行く。限界だった。目に見える赤津は瞼を閉じて僕の背中に回した手を必死に這わせた。いきなり爪を立てて引っ掻き始める。僕は赤津の腹部に片手を添えて中にある物を想像した。腹をゆっくりと裂き滴る血を舐めたいと思った。そこに顔を埋め苦しがる赤津の顔に射精してあげたいと思った。


「出ちゃう」


思わず口に出た言葉に赤津が反応する。


「外は嫌。お願い。そのまま私の中で出して」


妊娠という言葉が頭を過ぎる。だけどミニシアターの男達が僕の頭の中でその言葉をかき消した。男達はニヤけながら僕を犯し続けて行く。萎んだペニスを弄りながら、アナルに指を押し込んで行く。


まだ終わりじゃないよ。そのような声が何処からか聞こえてくる。奴等の中でそんな言葉を吐いた人間がいただろうか?疑問と同時に奴等の口や目から血が流れ始めた。


血飛沫が舞い散り僕のの思考を真っ赤に染めた。タイル張りの床に四肢がバラバラにされた死体が転がっている。その生首からは既に血の気が引いていた。開いた瞳孔に生気はなかった。僕は硬くなった唇を無理矢理こじ開け、萎んだペニスを押し込んだ。途端に勃起して僕は全身から射精した……


挿入したまま赤津の身体の上に倒れ込んだ僕の頭を、赤津はポンポンと叩きギュっと抱きしめた。僕もそのまま赤津を抱きしめる。体勢を横にし、ペニスが萎むまで僕らは抱き合っていた。



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