レイ㉒ 後処理
俺たちは倒れたシャドウタイガーの死体を見つめる。
「……これ、どうしよう」
ユリウスの問いにディランが静かに答えた。
「放っておくと、黒い靄が死体にとどまって危険だ。体に入ると最悪、命に関わる」
「燃やして灰にするのが基本だ」
ディランが手早く説明する間、黒い靄がひらりと死体の上で揺れた。
「灰にすれば靄は体から離れやすくなる。離れた靄は、いつも少し西側の影に吸い込まれて消える」
「たしか、闇は魔王の元に集まるんだったな。西側に……魔王がいるのか?」
「かもしれんな」
俺は、あの白いやつと影の魔獣の関係を思い浮かべる。何か関係があるのか?
そのとき、ユリウスの腹が鳴った。思わず顔を手で覆う。視線は自然と死体に固定されている。
「……お腹すいたなあ」
「お前、何考えてる」
俺は眉をひそめ、睨む。
ユリウスはニコッと笑った。
「魔獣って、どんな味か気にならない?」
「今回は危ない。やめとけ」
ユリウスはしゅんと肩を落とす。その瞬間、死体から黒い靄がふわりと立ち上った。
「ほら、見ろよ……」
影は生き物のようにひらひら揺れ、ユリウスの指先に触れそうになる。
「え、あ……うわっ」
俺は手を振り、光の結界を展開した。白く輝く光が黒い靄を包み込み、じわじわと浄化していく。
黒い靄は光に吸い込まれ、シャドウタイガーの死体は消えた。
ユリウスはぽかんと口を開け、肩を少し落とす。
「……食べられないのか」
「そういうことだ。諦めろ」
俺はユリウスの肩に手を置く。
結界の光を前に、二人はしばし沈黙した。




