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第一話:不審な言動と矛盾する行動

 レオンハルト王子は、舞踏会の華やかな喧騒の中で、エヴァンジェリン・グランヴィル令嬢を「称賛」した。

 しかし、彼の心には、その言葉とは裏腹の冷たい疑念が渦巻いていた。


(まさか、これほど完璧に「善良な令嬢」を演じるとはな)


 エヴァンジェリンのこの一年間の振る舞いは、彼の知るゲームのシナリオとは全く異なっていた。


 彼女はヒロインであるリリア嬢に友好的に接し、社交界でも常に模範的な態度を崩さなかった。

 だが、その完璧さが、逆にレオンハルトの警戒心を強めた。

 彼女の笑顔はあまりにも整いすぎており、まるで精巧に作られた仮面のように感じられたのだ。


 彼は、彼女の行動が計算ずくであり、その裏に何か隠された意図があるのではないかと疑っていた。

 舞踏会での称賛は、彼女の真意を探るための、彼なりの「探り」だった。

 彼女がどう反応するか、その一つ一つを彼は見逃さなかった。


 やがて、王国で不穏な出来事が頻発するようになる。

 特に、リリア嬢の周囲で起こる魔力の異変は、レオンハルトの懸念を一層深めた。


 そして、ついに王家の秘宝である「王家の魔導石」が宝物庫から盗まれるという、王国を揺るがす大事件が発生した。


 魔導石が保管されていた場所には、不気味で冷たい魔力の痕跡が残されていた。

 その魔力は、以前リリア嬢の異変を救った際に、エヴァンジェリンが使った魔力と酷似していた。


「エヴァンジェリン!」


 レオンハルトは、学園のテラスで彼女を呼び出した。

 彼の瞳には、彼女への深い疑念と、裏切られた怒りが揺れていた。


「宝物庫に残された魔力の痕跡は、君が以前、リリア嬢を救った時に使った魔力と酷似している。……なぜ、魔導石を盗んだ?」


 彼の問いに対し、エヴァンジェリンは微かに口角を上げて微笑んだ。


「それが、私の魔力だというなら……そのように捉えればよいでしょう」


 彼女の言葉は、まるで王子を嘲笑っているかのようだ。


「危険だと? それは、王家への侮辱か?」


「ご自由に。殿下が、そう解釈なされるのなら…」


 彼女の態度は、あまりにも冷淡で、レオンハルトの怒りは頂点に達した。

 彼女は本当に「悪役」なのだろうか? それとも、何か別の目的があるのか?


 エヴァンジェリンが立ち去ろうとしたその時、彼女の足元から小さな紙切れがひらりと落ちた。

 それは、魔導石が隠されている場所を示す、暗号めいたメモだった。


(これは……一体何のつもりだ?)


 レオンハルトは、そのメモを拾い上げた。


 彼女の「悪役」としての行動と、このヒント。

 その矛盾が、彼の頭を混乱させた。

 彼女は、王国の敵であるはずなのに、なぜこのようなヒントを残したのか?


 彼の心の中で、エヴァンジェリンへの疑念と、彼女の行動の矛盾に対する困惑が激しく交錯していた。


 彼は、この謎を解き明かすために、そして彼女の真意を突き止めるために、独自に調査を始める決意を固めた。


 この不可解な令嬢、エヴァンジェリン・グランヴィル。

 彼女の秘密を暴くことは、レオンハルトにとって、自身の「正義」が真に世界を救う力を持つのかを試す、最初の試金石となるだろう。

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