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季節…夏 時間…正午 天気…晴れ 曜日…土曜日 キーワード①…鍵 キーワード②…現実
蝉が狂ったように鳴いていた。
空はひどく青くて、雲の輪郭がくっきりしている。
土曜日、正午ちょうど。
部活も、学校もない、完璧な自由。
その家の前で、彼は立ち尽くしていた。
右手には、小さな鍵。
それは数日前、母親の引き出しの奥で見つけたものだった。
「開けたら、何かが変わる」
そんな直感があった。
扉の前。
風は止まり、世界が静かになる。
鍵を差し込んだ。
カチリ――軽い音とともに、閉ざされた時間が動き出した。
中には、何年も前に消えたと思っていた"現実"が、
まるで昨日のことのようにしまい込まれていた。
写真。手紙。壊れたスマホ。録音データ。
全部が"知ってはいけなかった自分の人生"の断片だった。
扉を閉めることは、もうできなかった。
正午の陽射しが、その部屋の中まで真っ直ぐに差し込んでいた。