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季節…春 時間…夜 天気…霙 曜日…水曜日 キーワード①…ポスト キーワード②…絶望
水曜日の夜。
カーテンの外から、霙の音がじっとりと染み込んでくる。
それは雨よりも冷たくて、雪よりも中途半端で、まるで"何者にもなれなかった今日"みたいだった。
家の前のポストに、何かが落ちた音がした。
ぽとん――という、やけに重たく感じる音。
すぐに見に行く理由もなかった。
でも気づけば玄関のドアを開けていた。
ぬかるんだ地面の冷たさがスリッパ越しに足に伝わる。
ポストの中には、白い封筒が一通。
名前も差出人も、宛先さえ書かれていない。
けれど、手に取った瞬間、わかってしまった。
これは、自分宛の絶望だ。
開けるのがこわい。
でも、開けないことの方がもっとこわい。
霙は、まだ降り続いていた。
この春が、何も始まらないまま終わってしまうような気がして――