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季節…春 時間…丑三つ時 天気…霙 曜日…日曜日 キーワード①…マフラー キーワード②…現実
霙が降っていた。
雪とも雨とも言えない中途半端な粒が、静かに音を吸い込んでいく。
春のはずなのに、吐く息は白い。
日曜日の夜、というよりも、月曜の始まりに限りなく近いこの時間。
街は眠っていて、自販機だけがぼんやりと明かりを灯していた。
その前に、一人。
肩までぐるぐると巻いたマフラーだけが、体温の名残を守っていた。
「……これが、現実?」
誰に問うでもなく、口をついて出た言葉は、霙の音に飲まれて消えた。
両手はポケットの中。
震えているのは寒さのせいか、それとも――。
マフラーの端が風に揺れるたびに、心の中で何かがほどけていく気がした。