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季節…春 時間…正午 天気…雪 曜日…月曜日 キーワード①…鉛筆 キーワード②…悪魔
月曜日、正午。
教室の窓の外では、雪が静かに降っていた。
春の雪。
制服の袖に落ちたそれは、すぐに溶けて、水滴になってにじんだ。
「……降るんだね、春でも」
彼は誰に言うでもなくつぶやいた。
右手には一本の鉛筆。
テストの裏紙に、なにかの“名前”を繰り返し書いている。
何度も、何度も。
無意識のうちに、手が勝手に動いているみたいだった。
ふと、指先が止まる。
その瞬間、鉛筆が勝手に紙の上を走った。
「願いを叶えてやろうか?」
――声が、聞こえた気がした。
教室には誰もいない。
静寂と、鉛筆の転がる音だけがある。
机の上には、
黒い筆跡で繰り返し書かれた、ある“知らない名前”。
雪は止まなかった。
鉛筆は、手から離れても、なお震えていた。