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季節…夏 時間…朝 天気…台風 曜日…火曜日 キーワード①キーワード②…生

火曜日の朝。

カーテンが激しく揺れ、風が窓を叩いていた。

台風が本格的に上陸して、学校は休み。

だけどその部屋には、いつも通り、蚊取り線香の匂いが漂っていた。


くるくると渦を巻いた緑色の線香は、火をつけてから数時間。

強い風の音に逆らうように、静かに、でも確かに煙を上げている。


「なんで……まだ、生きてんの?」


少年はぼそっと呟いた。

誰かに向けて、というより、自分自身に。


机の端には、破りかけの日記帳。

その隣には、小さな箱に収まった、飲み残しの薬。

けれど今、彼はそれを見ていない。

ただ、消えかけた蚊取り線香の先端をじっと見つめていた。


「消えかけても、まだ火は残ってるんだよな……」


窓の外では、木々がなぎ倒され、世界がぐちゃぐちゃになっていた。

でも、その小さな渦巻きの中だけは、まだ静かに“生”が続いていた。


煙は、彼の鼻をつき、目をしみさせ、心の奥にまで染み込んでいく。


そして彼は、そっと日記帳のページを閉じた。

今日のページは、まだ白いままだった。

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