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季節…夏 時間…丑三つ時 天気…晴れ 曜日…金曜日 キーワード①…筆箱 キーワード②…虚栄
金曜日の深夜――いや、もう丑三つ時。
窓を開けても風は入ってこなくて、蝉の声だけがしつこく残っていた。
部屋の明かりは落として、机の上のスタンドライトだけが淡く照らしている。
その灯りの下、筆箱をひらく。
中身は整然としていた。
ラインマーカー、三色ボールペン、付箋、シャーペン……
「優等生」に見えるようにそろえられたものたち。
本当は全部、“そういう自分”を演じるための道具にすぎなかった。
「なんで、こんなに詰め込んじゃったんだろ」
ため息のようにこぼれた独り言。
筆箱の底から出てきた、くしゃくしゃのメモ。
そこには自分の字で、
**「本当はもう無理かもしれない」**って書いてあった。
誰にも見られない深夜だけ、
その筆箱の中身が“虚栄”でできてることを認められる。
蝉の声が遠のく。
机の上で、ペンが静かに転がった。