10/17
季節…秋 時間…夕方 天気…曇り 曜日…水曜日 キーワード①…包帯 キーワード②…幸福
夕方5時。
街はもうオレンジじゃなくて、グレーの空に包まれていた。
秋の風が、シャツの隙間から肌に入り込んでくる。
水曜日、学校帰りの公園。
誰もいないベンチに、彼はひとり座っていた。
左手には、白い包帯。
きつく巻かれていて、少しだけ滲んだ赤が見えている。
でも、表情は穏やかだった。
少し、笑っていた。
ポケットの中には、折りたたんだ手紙。
「今日もよく頑張ったね」って、たったそれだけの短い言葉。
たったそれだけで、今日という日が報われた気がした。
風が吹くたび、木の葉がさらさらと揺れる。
雲のすき間から、ほんの少しだけ光がこぼれた。
傷ついた手を見下ろしながら、彼はぽつりとつぶやいた。
「……これが、幸福ってやつかな」
空はまだ曇っていたけれど、
その心には、ほんの少しだけ、晴れ間が見えていた。