表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

祠に隠された秘密

栞たちは苔むした小さな祠の前に立ち、慎重にその佇まいを見つめていた。


「これ、本当に開けていいのかな?」美咲が不安げに言う。

「もしバチが当たったらどうする?」翔太も少し躊躇する様子だった。


だが、栞は黙ったまま、ポケットに入れていた鍵を取り出した。

「これ、試してみる価値はあると思う。……もし、何かあったら私のせいだから。」


祠の扉には古びた南京錠がかかっていた。栞がそっと鍵を差し込むと、カチリと音を立てて錠が外れる。


「本当に開いちゃった……。」美咲が息を呑む。


栞はゆっくりと祠の扉を開けた。中には石でできた蛙の像が祀られていた。


「蛙……?なんで蛙なんだろう?」翔太が首をかしげる。


栞はその蛙をじっと見つめた。滑らかな石の表面、細やかに彫られた姿――だが、よく見ると異変に気づく。


「片目がない……。」


栞が呟くと、美咲と翔太も蛙の片方の目がくぼんでいることに気がついた。


「これ、片目がないんだね……。どうしてだろう。」美咲が少し不思議そうな顔をした。

「なんか意味がありそうだよな。この祠に祀られてるくらいだし。」翔太が言葉を続ける。


栞は蛙に手を伸ばしかけたが、なぜか触れることをためらった。その時、不意に声が耳の奥に響いたような気がした――まるで誰かが囁いているかのように。


「……身代わり……。」


「え?」栞は驚いて周りを見たが、美咲も翔太も気づいていない様子だった。


「どうしたの?」美咲が尋ねる。

「今、誰かの声が……いや、なんでもない。」栞は首を振り、再び蛙をじっと見た。


すると、ふとした瞬間に頭の中にイメージが流れ込んできた。目の見えない町娘が、ある日この蛙を抱きしめるようにして祈っている姿――。


翔太が蛙を指差しながら話し出した。

「これ、もしかして『身代わり蛙』じゃないか?昔、この辺りでこんな話を聞いたことがある。」


美咲も興味を示した。「身代わり蛙?それってどんな話?」


翔太は地元で耳にした伝説を語り始めた。



「昔、この町に目の見えない娘さんがいたらしいんだ。家が貧しくて、治療もできなかったんだけど、ある日その娘がこの蛙の祠を見つけたんだって。彼女は毎日、ここで『せめて少しでも世界が見たい』って祈り続けたらしい。


ある夜、蛙が夢に現れて『片方の目を君にあげる』って言ったんだ。次の日、彼女は本当に片目で景色が見えるようになった。でも、蛙の像の片目が消えていたんだって。」


翔太が話を終えると、美咲が神妙な顔で言った。

「……だから身代わり蛙って呼ばれてるのね。自分の一部を捧げて、誰かを救ったから。」


「でも、それが本当なら……なんでこの蛙にそんな力があるんだろう?」栞は呟くように言った。


翔太が付け加えた。「その答えが、この地図に繋がるかもしれないな。」


その後、栞は再び蛙を見つめた。何かに引き寄せられるように、無意識に手を伸ばしてしまう。


「ちょっと待って、本当に触るの?!」美咲が止めようとするが、時すでに遅かった。


栞の指が蛙の片目がないくぼみに触れた瞬間、目の前の空気が歪み、強烈な光が彼女を包み込んだ。


「栞?!」美咲と翔太の声が遠のき、栞は気を失うように意識を手放してしまう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ