表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/30

3話 騎士団長様の裏事情

「エリザベス様ー! 一体どちらにおられるのですか?」

「ドム王子に一体何があったのでしょう!?」

「エリザベス様ー!?」



「ひぃ、やばいもう逃げ場が……」


 段々と兵士の声が大きくなり、私はある部屋の扉へともたれ掛かる。


 すると、扉が少しだけ開き、私は吸い込まれるように何かに手を引かれてその部屋へと入った。


「きゃっ!」

「しっ! お静かに」


 そう言って薄暗い部屋の扉に張り付いて聞き耳を立てていたのは昼間のローレンツ騎士団長だった。

 昼間と違うのは、鎧はつけておらずラフな格好だと言うことだろうか。


 私は自分の口を手でぎゅっと押えて、彼の言うとおり息を潜める。


 すると、しばらくして彼は扉から顔を離し「もう大丈夫です」と言った。


「あの……助けてくれてありがとうございました……!」

 私はそう言って彼に詰め寄り深くお辞儀をする。


 その瞬間、彼は腰を抜かしたようにザッと後退った。

「す、すみません……どうかこれ以上近付かないでいただきたい……」

 そう言う彼を見ると、だらだらと冷や汗を流していた。


「え、あ、すみません、私の方こそ……」

 私は慌ててその場を離れた。


 一体どうしたんだろう。なんか拒絶されてる気がするんだけど……。一目惚れの相手にそんな態度を取られ、私は少し悲しくなった。



 そんな時、その部屋の窓から1人の男が中へと侵入する。

「うわぁ、女嫌いと噂のオスカー騎士団長様の女を避ける理由は……まさか怖いからですか?」


 そう言う男は全身真っ黒な衣装に見を包み、両腰に双剣を携えて裏稼業っぽい風貌だった。


「ノエル……くっ、お前にだけは見られたくなかったな……」

 ローレンツ騎士団長は深くため息をつきながら立ち上がる。


 女性が怖い? だから、私が近付いたら後退ったんだ……。


「あの、すみません私、知らないで……」


 私がそう言ってペコペコ謝ると、ローレンツ騎士団長は焦り困り果てていた。

「いえ、こちらこそ本当に無礼な態度を取ってしまい……申し訳ございません」


「いいんです、誰にだって苦手なことの1つや2つありますから……」


「ひゅー。ベスちゃん優しぃ!」

 ノエルと呼ばれていた黒尽くめの男は茶化すように口笛を吹いた。


「お前、エリザベス様のことをなんて呼び方しているんだ、今すぐ謝れ!」

 怒る騎士団長。


「えー、だって俺別にこの国の人間じゃないし……」

 ふてくされるノエル。


「良いんです、そもそも私、エリザベスって名前じゃないですし……」


「え、マジ?」

「なっ、まさかドム王子が勝手に……?」

 私はその問いに対しこくんとうなずく。


「本当の名前は?」

 と、ノエル。


瑛茉(えま)十六夜(いざよい)瑛茉(えま)といいます……えっと、この国の言い方だと……エマ・イザヨイです」

 私はこの国に来て初めて自分の名前を名乗ることができた。


「エマ。俺、怪しいと思うけど、とりあえずお前の味方だから。ノエルって呼べよ」

「はい、ノエル」


「エマ様、自分もどうかオスカーとお呼びください」

 オスカーはそう言って少し離れた場所から一礼する。

「はい、オスカー」


「で、ノエル。何か情報は掴んだのか?」

 と、オスカー。

「そりゃもう、エマの最新の情報までバッチリ。これは報酬弾むなぁ……」

 ノエルはそう言ってニヤリと笑う。

「……分かった、後で倍払おう。いいから分かってることを話せ」


 なるほど、ノエルはオスカーが雇ってる情報屋なんだ。と、私は推測する。


「っしゃぁ。話すのは良いんだけど、とりあえず今晩中にこの城出たほうが良さそう。2人とも覚悟できてんのか?」


「えっ?」

 ノエルのその言葉に私は一瞬固まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ