そう、寸詰まり
真里は気付きを得た。
それはもう、突然の気付きだった。
いつものように、夕食後の洗い物を片付けていた時だった。
今日はかがみ込んでの仕事が多かったからか、洗い物も腰が痛いなぁと思っていたのだ。
なぜ洗い物で腰が痛いのか。
注文住宅だから、真里の身長にジャストな高さのキッチンなはずだ。
なのに何故、腰が痛いのか。
みんなそうなのか?いや、そうなら身長に対する適切な高さの方が修正されているはずだ。
かがみ込むのは手元が遠いから…と、そこまで考えて、突然それを理解したのだ。
真里の腕が人より短めだからだ。
そう、だから人よりかがみ込むの必要があり、腰が痛くなるのだ。
なんという真実か。
気づくのにまさか15年もかかるとは。
次女が生まれた頃に建てた家だ。次女はもう15歳だ。
今更もうどうにもならないが、万一リフォームなどする事があれば、必ず忘れずに少し高さのあるキッチンにせねばならない。真里の腰のために。
首が短いのと足が短いのは気にしていたが、腕が短いのは大して気になっていなかった。
まさかのデメリットが発覚してビックリだ。
まぁ、デメリットといっても大したものではない。
まさかの事実に驚いたが、気付けた事には満足だ。
真里の脳みそはまだまだ若い。15年かかって見つけた事実でも、見つけたのだ。
ふふん。
今日は念入りに腰を労ってから眠ることにしよう。