第59話 展示会?の相談
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僕とチャロン、亜希ちゃん、聖ちゃんの4人で服飾工房にやってきました。
入り口近くにいたスタッフさんがにこやかにあいさつをしてくれたあとに、頼んでもいないのにチーフデザイナーを呼んできてくれた。
もはや用件はわかってますよ、ということであろうか?
わざわざ確認するのも野暮な話なのでそのままお任せする。
すると1分も待たずに奥からチーフデザイナーが出てきた。
うん?なぜかケン君も一緒に出てきたぞ?
彼の衣装ができあがるにはまだ早い気がするのだが?
「いらっしゃい、勇者様方とチャロン。
今日も新しい衣装のオーダーかい?」
「はい、実はそうなんですよ。
こちらの聖女(見習い)の聖ちゃん用の衣装をデザインしたので、また作って頂きたくてお邪魔しました。
いまお話を聞いていただいても大丈夫ですか?」
「もちろんだとも。
実は今までこちらの交渉人の勇者様と今後の衣装の販売方法について話をしていたところなのさ。」
「販売方法?」
と、僕が疑問を呈したところでケン君が横から説明を始めてくれる。
「こんにちは、タク先輩。
実はタク先輩がデザインした新しい衣装を効率的に販売するにはどうすればよいか話し合っていたんですよ。
ほら、タク先輩に商業ギルドに行って著作権を登録してきて欲しいってお願いしてましたが、デザインする度にタク先輩が登録に行ってたら非効率かと思いまして。」
なるほど、確かにそうだ。
僕も毎回毎回登録のためだけに行きたくない。
「そこで、このお城の中で衣装の展示会を開催してはどうか?という話をしていたんですよ。
城に出入りしている業者さんや商業ギルドのスタッフにも見てもらって、製造や販売を希望する業者さんがいれば、その場で商業ギルドに諸手続きをしてもらえば効率的ですからね。
調達部の上のほうと展示会の開催を調整しようと思うんですが、いかがでしょうか?。」
うん、悪くないね。
その方法なら僕の手間はほとんど無いからね。
「それはいいね。
僕にとっては一番楽な方法だから全く異存はないけど、ケン君やチーフデザイナー的には問題ないんですか?」
「ああ、服飾工房も武器や防具の工房もそのほうが助かるんだよ。
実は城内のスタッフにも勇者様方が着ている服はかなり話題になっててね。
特にアイルをモデルにしてデザインしてくれた魔女っ娘の服は魔法士団の女子団員の間でかなり噂になってるみたいで、早く見たいとか作って欲しいとかのお願いが既にたくさん来ているのさ。
城内のどこか1箇所で展示すれば、お客さんも各工房を回る必要がなくなるからね。」
「なるほど、それはそうですね。」
「それに展示会でオーダーを受けるようにすれば作る数量を正確に把握できるので、材料の必要量を正確に見積もれますから発注のロスもないですしね。
まずは城内のスタッフさん向けにお試しで展示会を開いてみて感触取りをする予定です。。
そこでの反応を見て価格設定やその他のデザインの要望なんかもヒアリングしてみるつもりですよ。
スタッフさんの年齢によって色とか形の好みがあるでしょうからね。
あとは価格設定に必要な情報収集もしてみますよ。
高価すぎてお客さんが購入できなければ意味がないですしね。」
と、ケン君が交渉人らしく今後の計画を説明してくれる。
さすが仕事のできる交渉人。
さらりと元の世界のマーケティング手法をお城のビジネスに持ち込んでいるようだ。
抜かりのない男である。
「さすがはケン君だね。いつから展示会を開始するんだい?」
「できるだけ早く、可能であれば明日以降にでも調達部の事務所か倉庫の一画を借りて実施予定ですよ。
なので、タク先輩が新しい服のデザインをお持ちでしたら、是非見せていただきたいんです。
商品のラインナップが増えますからね。」
「なるほど、では丁度よかったよ。
今日は聖ちゃんの衣装のデザインを持ってきたんだけど、3種類あるから見てくれるかい?
まあ、1種類はケン君も知ってる元の世界のシスター服だから、こちらの世界の人達が選びそうなのは残りの2種類だけどね。」
と、チーフデザイナーとケン君に今朝描いた聖ちゃん用の衣装のデザインを見せる。
「あら、この3つも面白いわね。
このシスター?の服はちょっと特殊だから何とも言えないけど、聖女様の服だと言ったら人気が出そうね。
まあ、主にこの前のメイド服(夜用)と同じ用途になるかもしれないけど。
聖女様に憧れている男性諸氏は多いからね。
あと、この魔道士風の服は一昨日に注文を受けた治癒士の勇者様の衣装の色違いね。
これはこちらの世界の神官や治癒士に受けそうなデザインだわ。
3つ目の服のデザインはこちらの世界には無いデザインだけどとても可愛いわ。
若い文官や街の商会の受付嬢の制服とかで需要があると思うわよ。
3つとも早速仮縫いでもいいから明日までに作って展示会に出品するわ!」
と、チーフデザイナーもノリノリである。
「タク先輩、これはいいですね。
私が見る限り特に2つ目の魔道士服と3つ目のゴスロリ風制服はこちらの世界の女性にはとても受けそうです。
特に3つ目はデザインをちょっとアレンジすれば幅広い年齢層に受け入れられると思いますよ。
もしお時間があったらちょっと描き足していただけませんか?
そうですね、こちらの世界では定番のロングスカートや、元の世界のキャリアウーマン風のタイトスカートやパンツルックなんかがあると選択肢が増えて女性の皆さんがとても喜ぶと思います。」
と、ケン君が元のデザインを褒めつつも、さり気なく改善点をリコメンドしてくる。
さすがは交渉人、売れる商品作りへの探究心に満ちている。
この商才と頭のキレはいったいどこからきたのだろうか?
生来の才能なのか? それともスキルのなせる技なのか?
あのヘッポコ騎士とポンコツ格闘戦士も少しはケン君を見習ったほうがよさそうだ。
そうすればもう少し上手く騎士団内で立ち回れるに違いない。
「お安い御用だよ。聖ちゃんが採寸している間にチャチャッと描き足してみるね。
あと色を変えればラインナップに幅がでると思うんですが、色の組み合わせはチーフデザイナーにお願いしてもよろしいですか?」
「あら?私が色を選んでもいいのかい?」
「ええ、僕だとこちらの世界の方々の色使いの好みがよくわかりませんからね。
それに選択可能な布の色の種類もチーフデザイナーのほうがよくご存知でしょうからね。」
「なるほど、そりゃ確かにそうだね。
年齢層によっても好みの色が違うしね。
じゃあ、そうさせてもらうよ。」
「ええ、どうぞ。
では僕はちょっと場所をお借りして追加のデザインを描きあげてしまいますね。
その間、こちらの聖ちゃんの採寸をお願いしていいですか?」
「ああ、もちろんだよ。
おーい、こちらの聖女様の採寸をしておくれ。」
と、いつもの奥の部屋にいる採寸チームに声をかけると、聖ちゃんを奥の部屋に連れていった。
僕はチャロンと亜希ちゃんとケン君と一緒に部屋の一画にある休憩コーナーの椅子に座ってデザイン作業に取り掛かる。
「まずは聖女用のゴスロリ制服の別バージョンからいってみよう。
ケン君の言うとおり、ロングスカート、タイトスカート、パンツルックを追加・・、と。」
と言いながら、さらさらっと仕上げる。
チャロンと亜希ちゃんからも「いいですね。」「大人っぽくて素敵です!」と肯定的なコメントをもらう。
「次はメイド服かな?
夜用だけではなくて昼用もあったほうがいいよね。
基本的なレースの飾り等は可愛い系で統一して、露出は無くして・・、と。
スカートはロングとひざ丈の2種類を用意しよう。
年齢にあわせて好きなデザインを選んでもらおうね。」
と言いながら、こちらもさらっと仕上げる。
「次は、魔女っ娘服にしよう。
アイル君用はちょっと露出が多かったから、あれは私服用だね。
制服用としても採用してもらえるように露出は無くして、キュロットとパンツルックの2種類を用意しよう。」
と、これもさらさらっと仕上げる。
「あとはそうだねー。
ああ、楓ちゃんにデザインしようと思っていたオーバーオールデニムとつばの大きな帽子かな?
屋外で働く庭師さんや馬の厩舎のスタッフさんに喜ばれるだろうからね。
男女関係なく使えるしね。」
と、こちらもさらさらっと仕上げる。
「あとは個人的な好みだけど、女の子の羽織袴姿かな?
チャロンや亜希ちゃん達の普段着用にカジュアルなイメージの羽織袴をデザインしよう。
袴は膝丈くらいにして活動的に、上着も使い勝手を考慮して振り袖部分を短めに。
模様は染めやすいように矢羽の模様のパターンにしよう。
色は、緑系、濃紺系、紫系の3種類かな。
元の世界の伝統的なデザインかつハイカラさんな感じだね。」
と、さらさらっと仕上げる。
「こんな感じかな?3人ともどうかな?」
「はい!どれもいいですね!私は最後の羽織袴がいいです!
この巫女服と同じようでかわいいです!」
「私も羽織袴ですね!
弓道着は訓練用って感じですから、普段のお出かけは羽織袴を着たいです。
このデザインなら普段使いでも楽に着れそうですね。
それにタク先輩の好みでもありますし・・。」
と、チャロンも亜希ちゃんも好感触である。
亜希ちゃんが何かムニャムニャ言っているが、今は聞こえないふりをしよう。
いまは大事なビジネスの話の途中だからね。
「タク先輩、どのデザインもいいですね。
特に女性向けの服のデザインは喜ばれるでしょう。
こちらの世界の女性用の服はどれも同じようなデザインで、職業や年齢ごとの違いが少ないですしね。
若い人たちは早く欲しがると思います。
チーフデザイナーと相談して、早めに展示会を開催できるように調整を進めます!」
と、ケン君もやる気マンマンである。
「うん、そっちのほうはケン君とチーフデザイナーに任せるよ。
そろそろ本当に外に訓練に行く準備をしたいからね。
今日は午後から野営訓練に必要な物品等の準備をする予定なんだよ。」
「おお、そうだったんですね。
では、展示会の件は私達にお任せください。
開催日と場所が決まったらお知らせしますよ。」
「うん、お手数をかけて申し訳ないけどよろしくね。」
「問題ありませんよ。これが私の仕事ですからね。」
と、ケン君と今後の予定を話し合う。
僕が下手に展示会の運営に首を突っ込むより、ケン君達にまかせてしまったほうがうまくいくだろう。
餅は餅屋である。
そうこうしていると、
「お待たせしました〜。」
と、聖ちゃんが採寸を終えて戻ってきた。
心なしか嬉しそうである。
やはりオシャレの件になるとみんなテンション上がるんだね!
「聖ちゃん、採寸お疲れさま。
チーフデザイナーもいつもいつもすみません。」
「あら、いいのよ。
今回もいいデザインの服ができそうだから楽しみだわ。」
「そう言っていただけると助かります。
あと、待っている間にいくつかデザインを追加しておきました。
ケン君に渡しておきましたので、展示会の準備などよろしくお願いしますね。」
「ええ、分かったわ。早速試作品を作ってみるわね。
期待して待っててちょうだいな。」
「はい、わかりました。」
と、チーフデザイナーとケン君に後の事をお願いすると、僕達は服飾工房をお暇した。
「もう昼になっちゃったね。
いい時間だからお昼ご飯にしようか?」
と言うと、
「はい!お腹すきました!」「そうですね。」「ええ!そうしましょう!」
と、女子3人も大賛成のようである。
今日の午前中も精力的に活動したからね。
さて、今日のお昼ご飯はどの食堂で食べようかな?
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