第44話 斥候スキルを学ぶ。
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皆で服飾工房にやってきた。
いつもどおり3人を連れて正面玄関から中に入っていく。
もう慣れたものである。
「おはようございます。チーフデザイナー。
またオーダーをお願いしてよろしいでしょうか?」
「あら勇者様じゃない。昨日の夕方ぶりね。
今朝はどうしたのかしら?」
「はい、実はこちらのアカネちゃん用の服の製作をお願いしたいのです。
デザインはこちらです。」
と、今朝描いたデザインを手渡す。
「あら、これはまた面白いデザインね。
そちらの弓術士の勇者様の服と似てるけど動きやすそうな服ね。」
「ええ、まあ、僕の元の世界の密偵の服をこちらの世界の斥候用にアレンジした服と思っていただければ。
動きやすさ重視ですね。」
「なるほど、確かにそんな感じのデザインね。
他には何かあるかしら?」
「あ、それじゃついでにいつもの戦闘服上下と前に見せたブーニーハットも1セットお願いしてよろしいですか?
皆とお揃いの服もあったほうがよいので。」
「ええ、了解よ。
この斥候服も布地は少ないし、戦闘服も勝手がわかってるから今日の夕方にはでき上がるから、他のオーダー品と一緒に準備しておくわね。
じゃあ、そちらの斥候の勇者様は採寸するので奥の部屋へどうぞ。」
と言うと、チーフデザイナーは採寸スタッフにアカネちゃんを任せて奥の部屋に連れていかせた。
「今日も突然オーダーに来てすみません。チーフデザイナー。」
「あらいいのよ。こっちも楽しませてもらってるからね。
あと、例の魔法使いさん用の内緒の服だけど、アイル君をモデルにして鋭意作成中よ。
お針子さん達にも受けがよくて、皆張り切って作ってるわ。
特にアイル君の姉が頑張ってるわね。
どうやら元々弟じゃなくて妹が欲しかったみたいで、『アイルを妹キャラにするんです!』と言いながら張り切ってるわよ。」
「そう言えばアイル君のお姉さんがこちらで働いているっておっしゃってましたね。
出来上がりが楽しみです。
今日の夕方に魔法使いも連れて受け取りに来ますね。」
「ええ、私たちも楽しみに待ってるわ。」
などと雑談していると、アカネちゃんが採寸を終えて奥の部屋から出てきたのでチーフデザイナーにお礼を言って服飾工房を失礼した。
「次は、防具工房でブーツとその他もろもろをオーダーして行こう。」
と皆をつれて防具工房にお邪魔する。
そしていつも通りにコンバットブーツ、弾帯代わりのベルト、革のポーチとアカネちゃん用のクナイのホルダーを注文した。
ここも常連になったので注文と採寸はあっさりと終わった。
今日の夕方には仕上げてくれるらしい。
これで殆どの注文が今日の夕方にはそろうことになるね。
外出準備が徐々に整ってきたぞ。
後は可能な限りスキルを身に付けるだけだね。
「それじゃあ、斥候の訓練場に案内してくれるかな?アカネちゃん。」
「はい!わかりました! では皆さん私についてきてくださいね!」
と元気よく小走り気味に歩き出したアカネちゃんを皆で追いかけながら斥候訓練場に移動を開始した。
今日はどんなスキルをゲットできるのか楽しみだね!
◆◇
アカネちゃんに連れられてやってきたのは、城壁の外側に広がるちょっとした森でした。
アカネちゃん曰く面積的には東京ドーム5~6個分くらいとのこと。
適度に平原部分もあるので、騎士団や魔法士団の野戦訓練や斥候の野外訓練に使用されるほか、王族の狩りに使用されるらしい。
まあ、狩りといっても本職の狩人がするような大物狙いのガチなものではなく、お城のスタッフが勢子になって追い出してきたウサギや小型の猪などを王族が弓などで仕留めるスポーツのようなものらしい。
元の世界でもそういうのあったよね。
「さあ、訓練場に着きました!
早速トレーニングを開始しましょう!
タク先輩は何の訓練をしたいですか?」
と、アカネちゃんが元気よく聞いてくる。
「そうだね。
こちらの世界の斥候のことをよく知らないから、とりあえずどんな武器やスキルをが使うのかをざっと教えてくれると有りがたいね。」
「わかりました!じゃあ、順番に説明しますね。
まずは武器から行ってみましょう。」
と言って、アカネちゃんは武器の説明をしてくれる。
「主要な武器は短剣、短弓、投げナイフですね。
いずれも携帯性と隠密性を考慮して選択されています。
まあ、偵察、潜入、罠設置などが主要な仕事ですからね。」
と、手持ちの武器を見せてくれる。
「タク先輩たちは剣と弓は既にお持ちと聞いてますので、投げナイフの訓練をしてみますか?」
「是非お願いするよ。何かコツはあるの?」
「斥候スキルの一部なので特に意識はしていませんが、距離感が掴めればだいたい当たりますよ。
何度か投げてみればすぐに慣れますよ。
早速やってみましょう!」
と言うと、アカネちゃんは10mほど先にある的がわりの地面に立てた丸太に向かってビュン!とナイフを投げた。
ナイフは丸太の中央の平たく削った部分のほぼ中心にサクッと刺さった。
なかなかの命中精度である。
僕と亜季ちゃんも訓練用の投げナイフを何本か借りて投げてみる。
最初の2、3本は外れたり丸太に弾かれたりしたが、そのうち的に当たるようになり、10回目くらいには良い感じで的の中央付近に当たるようになった。
試しに弓術スキルの「測距」と「照準補正」を使ってみたら、ナイフを放出する位置をスキルが示してくれたのでほぼ真ん中に命中するようになった。
ダメ元で「魔力誘導」を使ってみたら、こちらも上手く発動して的の真ん中にピッタリ命中した。
うん、これでバッチリじゃない?
弓術スキルが上級になったので、飛び道具に応用が効くようになったのかな?
まあ、使えればなんでもいいや。
結果オーライである。
右隣の的に向かって投げていた亜季ちゃんが少し上手くいってなかったので、弓術スキルを応用できるよと教えてあげたら何度かの試行の後に的のセンターに命中できるようになった。
さすが本職の弓術士である。修正が早い。
左隣のチャロンはスキルとか関係なく的のセンターにバシバシ命中させていた。
さすが狩猟種族、遺伝子レベルで技が刷り込まれているようだ。
「皆さん、さすがですね!投げナイフはもう大丈夫そうですね!
次は罠の設置と解除にいってみましょう!」
と言うと、少し離れた罠ゾーンに案内された。
「代表的なのは、落とし穴、くくり罠、箱罠ですね。
これらは動物の捕獲用の罠ですが、落とし穴とくくり罠は人間もひかかる可能生があるので要注意ですよ。」
と、棒切れで動作を展示しながら教えてくれる。
まあ、元の世界と同じだね。
「あとはいわゆるブービートラップですかね。
ロープに引っ掛かると逆さに吊るされたり、上から丸太が落ちてきたり、トゲトゲのついた棒が刺さってきたり、弓矢で打たれたり、とかですかね。
こちらに実物があるので、設置と解除を練習してみましょう!」
それから暫くトラップを仕掛けたり解除したりを繰り返し、概ねできるようになった。
まあトラップの設置は元の世界でもサバイバル知識を身につけるために無料動画投稿サイトとかで見ていたからね。
あと人気のあったベトナム帰りの元特殊部隊兵士の映画に出てくるブービートラップのシーンに憧れていたからね。
ブービートラップはゲリラ戦の美学なのです!
ちなみに亜季ちゃんはトラップの設置はなかなかできなかったが、チャロンはサクサク設置していた。
さすが狩猟種族!基礎スキルが高すぎる。
もはやチャロンがいれば召喚勇者は必要ないんじゃない?と思えてくる。
「タク先輩とチャロンさんすごいですね!ほとんどのトラップを覚えちゃいましたよ。
すでに私より上手いかもですね。
あ、亜季はまだまだ練習が必要なようだけど。」
と、アカネちゃんから率直な評価を受ける。
亜季ちゃんへの対応が少し厳しくないかい?
「私はいいのよ!本職は弓なんだから。トラップはボチボチ覚えるからいいの。
ていうか、タク先輩が手際が良すぎるんですよ。
何かコツがあるなら教えてくださいよ。」
「いや〜、僕はたまたま元の世界で動画を見ながら勉強していたことがあるんだよ。
事前に知識があったからアカネちゃんの説明がすぐに理解できただけだよ。」
と言ってごまかす。
スキルの件は城の中では言えないからね。
「じゃあ次は魔力を使うスキルの練習をしましょう。
主なものは「気配察知」、「気配遮断」、「認識阻害」ですね。
まあ内容はそのまんまですが・・。」
と言いながらスキルの説明をしてくれた。
曰く、
気配察知:魔力を薄く広く展開することで、生物や人為的に設置された罠等の
工作物を察知するスキル。
生物の魔力や罠等に残留する魔力を感じる事でそれらの存在を知るスキル。
主に索敵時に使用する。
気配遮断:呼吸を整えて気分を落ち着かせることで、自分の体から放出される
魔力を抑えて他者から探知されるのを防ぐスキル。
主に敵の拠点等への潜入時に使用する。
認識阻害:体の周囲に薄く魔力を張ることで他者から認識されづらくするスキル。
街中でターゲットを尾行する際や人混みに紛れる際などに使用する。
らしい。
「3つとも魔力を感じることができればそんなに難しくないですよ。
「気配察知」は自分の魔力と他者の魔力が干渉する際に違和感を感じるのですぐにわかりますね。
「気配遮断」は自分の呼吸を整えれば自ずと魔力の放出も抑えられますよ。
状況によっては呼吸も止めれば完全に魔力は止まります。
「認識阻害」は魔力の反射を散らしたり逸らしたりするイメージですね。
敵の視線や気配察知の魔力を明後日の方向に散らして自分を認識させずらくするイメージです。
まずは「気配察知」から練習してみましょう。
私が弱い魔力を一定のボリュームで出しながら動いてみますので、察知してみてください。」
と、アカネちゃんを魔力源に見立てて訓練を開始した。
「気配察知」のコツはきっとパッシブセンサーみたいな感じだな。
自分を中心に自分の魔力を薄く展開して、異種の魔力が触れると知らせてくれるようなシステムを想像しよう。
僕は目をつぶって、魔力を使って自分を中心に半径5mほどの半円のドームを描く。
さすがに今は地中から襲ってくる敵はいないだろう。
その状態でアカネちゃんの動きを待つ。
僕の魔力ドームに干渉すれば感知できるはずだ。
ふと右45度前方に違和感を感じる。
目をつぶってはいるが何かの存在を感じたぞ。
ここはダメモトで申告しておこう。
「右45度、距離5m、アカネちゃん発見!」
と申告してみる。
「すごいですね!タク先輩!当たりですよ!
もう一回別の方向から近寄ってみますよ。
今度は魔力の量を減らしますので頑張って探知してくださいね!」
「了解だよ!」
僕は目をつぶって再度魔力のドームを展開する。
今度は微小な魔力でも探知できるようにドームの表面のテンションを固く張るようにイメージする。
僅かな接触でも違和感を感じられるようにね。
すると今度は真後ろから微妙な違和感を感じる。
ごく僅かではあるが、何か別の魔力の接触を感じるぞ!
「真後ろ、距離5m、アカネちゃん発見!」と申告する。
「正解です!タク先輩すごいですね!
かなり魔力を絞っていたんですよ!
初めてでこれだけスムーズに察知できたらすごいですよ!」
と、アカネちゃんに褒められる。
「もう、タク先輩ばかりどうしてそんなに何でもできるんですか?
私はうまく察知できないんですけど?
何かコツがあったら教えてください。」
と、亜季ちゃんにからまれる。
まあ、コツを教えるくらいならいいかな。
「うん、自分を中心に半径5mくらいの半円形のドームを魔力で作る感じかな。
そこに他の魔力が触れると違和感を感じることができるよ。」
「なるほど。やってみます。」
と、亜季ちゃんは目をつぶって訓練を再開した。
しばらくはムニャムニャ言って試行錯誤していたが、なんとかできるようになったらしい。
アカネちゃんが魔力を絞らなければだいたい正解できるようになった。
ちなみにチャロンはもともと獣人種族固有の高い察知能力があるのでスキルが無くても索敵能力は高かったが、僕のドーム式魔力展開を試してみたらさらに気配察知が容易になったらしい。
「さすがタクさんですね。今までにない気配察知の方法です。
おかげで私も察知能力が向上しましたよ!」
とチャロンも能力向上できたらしい。
いいことである。
「皆さん「気配察知」は大丈夫そうですね!
次は「気配遮断」をやってみましょう。
まあ、これは呼吸と気持ちを落ち着ければ自然とできますので大丈夫ですよ!」
と、アカネちゃんの号令のもと「気配遮断」の訓練を開始する。
これは弓道部でも的に狙いを際に呼吸を整えて精神を統一する練習をしていたので、僕も亜季ちゃんも問題なくできた。
チャロンについては言うまでもない。
狩猟種族は待ち伏せもまた得意なので、気配遮断はまさに朝飯前とのこと。
優秀すぎる。
「最後は「認識阻害」ですね。
これはちょっと難しいのですが、魔力や光を敵とちがう方向に反射させるイメージで自分の周りの魔力を操作してみてください。」
うん、説明がザックリすぎてよくわからん。
だけどまあ元の世界で言うところのステルス性の向上と同じかな?
軍艦の上部構造物の側面を斜めにしてレーダーの反射を抑制する的な手法と同じようなものだろう。
僕は自分の周囲を魔力の網で包むイメージをする。
魔力網の表面はフラットではなく、いくつかの板を角度をつけて繋ぎあわせるイメージで。
昔のTVゲームのキャラクターがカクカクしてたやつね。
ポリゴンっていったっけ?
これで他者の魔力や視線を撹乱できるはずだ。
「アカネちゃんどうかな?ぼくの周囲の魔力を操作してみたんだけど。
ちょっと見てくれるかい?」
「はい!そうですね・・、うん、いい感じでタク先輩の特徴が薄れてますね!
街中ですれ違ったら全く気づかない程度になってますよ。
人混みに紛れていたら全く気づかれないと思います!」
「ありがとう。機会があったら使わせてもらうよ。
誰かを尾行する任務というよりかは、トラブル回避のためにそっと人混みに紛れるために使用する感じかな。」
「また、タク先輩だけ先にできちゃうんだから・・。
私にもコツを教えてくださいよ。」
と、また亜季ちゃんにからまれたので、ポリゴン方式の魔力網を教えてあげた。
すると納得できたらしく、5分くらいでできるようになったようだ。
チャロンは今まで「認識阻害」を試したことは無かったらしいが、ポリゴン方式を教えてあげるとすぐにできるようになった。
もともと生活魔法使いなので魔力の扱いが上手いため、自分の魔力をコントロールするのはお手の物らしい。
「皆さんすごいですね!
私の1週間分の成果を半日でできるようになるなんてビックリです!
あとは繰り返し使用して習熟度を上げればスキルのレベルも上がると思うので、それぞれがんばってくださいね!」
とアカネちゃんにお墨付きをもらう。
「他に斥候っぽいスキルってあるのかい?」
と、一応聞いてみる。何か参考になることがあるかもしれないしね。
「一応、「地図作成」というスキルがあるんですけど、はっきり言ってスケッチと同じ感じですね。
斥候スキル持ちは他の人より方向感覚と空間認識力がちょっと高いので、偵察した際に地形や道なんかを紙に書き留めるのが上手いんですよね。
でも私達が元の世界で習った地図の読み方とか書き方を使えば、はっきり言ってこちらの世界の地図より良いものが作れますよ。
等高線とか建物なんかの記号とかがこちらの世界には無いからですね。
タク先輩は絵心もあるので、何度かマッピングを練習すれば「地図作成」スキル持ちより上手くなれると思います。」
「なるほど。参考になったよ。
外に出るようになったら試してみるね。ありがとう。」
とアカネちゃんにお礼を言っておく。
「地図作成」か、旅するうえで役に立ちそうだ。
地図を作成して売ればちょっとした収入源になるかもね。
「そろそろいい時間なので、訓練はここまでにしておきましょう!
お城に戻ってお昼ご飯にしませんか?」
「うんいいね!丁度お腹も空いてきたよ。亜季ちゃんとチャロンもそれでいいかい?」
「はい!、タクさん!お昼ご飯楽しみですね!」
「ええ、タク先輩!一緒に!にお昼にしましょう!」
2人とも問題ないようだ。
でもどうして亜季ちゃんは「一緒に」を強調するのだろうか?
謎である・・。
訓練を終えて4人でお城に向かって戻る。
道中といってもそんなに距離はないが、チャロンと女子高生2名の女子3名はかなり打ち解けたようで、ワイワイとガールズトークで盛り上がりながら歩いている。
まあ、チャロンも16歳だし他の2人と年齢も近いから自然な流れかな?
仲良くなるのはいいことだ。一緒に外に訓練に行くかもしれないしね。
亜季ちゃんが何気なく別館の居室での僕とチャロンの様子を聞き出そうとしているのが気になるが・・。
女子高生に聞かせられないようなことが多々あるので探りを入れるのはやめて欲しい。
というか、そこは極めてプライベートな話だからそっとしておいて!
露骨に好きなプレーは・・・、とか聞かないで!
チャロンも朝晩お風呂とベッドでご奉仕してますとか言わないの!
いろいろとご奉仕テクニックを教え込まれて・・とか余計な事は言わなくてもよろしいです!
お風呂では奉仕されるのが好きで、ベッドでは攻めるのが好きとか具体的すぎる!
一緒にご奉仕しますか?とか誘っちゃだめでしょう!
亜季ちゃんもOKしちゃだめでしょうか?
てゆうかOKなんかい!
やっぱり肉を食べないとパワーが沸かないですよ、とか肉食を勧めないの。
日本人は基本的に農耕民族なんだからさ!
ガールズトークに心の中でいろいろとツッコミながらも、午前中の訓練を振り返って充実感を感じていた。
昨日は魔法使いのマモル君の歪んだ性癖を満たすための衣装のデザインとか、心が曇る一日だったからね。
とりあえずお城で美味しい昼食を食べて元気をチャージしよう!
最後までご覧頂きありがとうございました。
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