表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/147

第4話 まあまあ、お茶でもどうぞ

初めての投稿小説です。

応援していただければ幸いです。

よろしくお願いいたします。

 僕たちはいまお城の中庭にいる。


 良く手入れされた美しい庭園である。


 季節の花がほどよいボリュームで咲き誇っており、小鳥のさえずりが心地よい程度に聞こえてくる。


 執事のようなロマンスグレーの初老の男性が庭園で待ち構えており、クレア王女は僕たちの休憩が終わったころに再びやってくるので、ゆっくりと休憩してくださいとのことであった。


 ちなみにこの執事さんのお名前はセバスチャンさんとのことである。

 ここもテンプレであった。


 着席を促されたテーブルの上には紅茶カップとお茶請けのお菓子がならんでいた。


 西洋風のクッキーやスコーンのようなものに加えて何故か煎餅や団子のようなものもある。

 

 おおむね男女別に分かれて席についたあと、メイドさんが紅茶を淹れてくれ、お菓子を勧められたので、皆でいただくこととした。


 なんやかんやあってすっかり食欲を失くしていたが、美味しそうなお菓子を見たら皆空腹を感じ始めたらしい。

 

 もちろん僕も遠慮なくいただくこととする。


 いずれも上品な味わいであり、高校生達はワイワイと話しながらバクバク食べて飲んでいる。


 委員長女子も紅茶とお菓子を食べてちょっと落ち着いたようであり、友達女子とにこやかに談笑している。


 やはり甘いものは女子をハッピーにするらしい。

 甘いは正義である。


 そのうちに給仕をしてくれているメイドさんにおかわりをお願いする猛者も出始めた。

 高校生の食欲はすごいね。

 

 ちなみにメイドさんの服装は日本人好みの典型的なメイド服である。


 残念ながらメイドカフェの店員さんのようなやりとりのサービスはない。

 まあ、お城のスタッフさんだからね。


 ひとしきり食べて飲んでを繰り返して皆が落ち着いたころ、クレア王女が再び現れた。


「勇者達よ。お茶とお菓子を楽しんでくれたかな?

 ちなみにこのお茶とお菓子も過去の勇者が紹介してくれたものじゃ。

 彼らが持ち込んだ豊かな食文化がこの国の食生活にも根付いておるのじゃ。

 この世界の住民としては嬉しい限りじゃ。」


 と説明してくれた。


 どうやら過去の勇者達は本当にこの世界の発展に貢献していたらしい。


 クレア王女は自分の席につき、紅茶をメイドさんに淹れさせて一口飲んだあとに続けて語り出した。


「この国は、いやこの世界は一言で言うと常に停滞しておるのじゃ。

 現状の暮らしはすごく良くもないが、すごく悪くもない。

 大きな戦争もなければとてつもなく強力な魔物に蹂躙されることもない。

 強力な魔物はいるがそれらはほとんどが魔王の森に住んでおり、我が国周辺に住む魔物は高いスキルを持つものが対処できるレベルじゃ。

 よって日々それなりに働いていれば暮らしに困ることはあまりないので、民は現状に満足してしまい、何か新しいものを作り出したりせず、日々をくらしていく。

 よって文化や生活レベルがなかなか向上しないのじゃ。」

 

 さらにお茶を一口追加で飲むと、

「加えて、領主である貴族達も自分の所領を発展させる努力をせず、集めた税金を溜め込んで自分の懐に入れてしまうものが多い。

 所領の発展のためのいわゆる公共投資をしないから街が発展しないのじゃ。

 しかも小賢しい部下や商人たちに唆されて、わずかな賄賂と引き換えにいいように操られておる。

 逆に言うと、このような一部の小賢しい者共が自分達の都合のよい社会とするために現状を維持しようとしているとも言える。」


「よって、そなた達には召喚の際に与えられたスキルを駆使して旅をしながら、この世界の現状を打破して発展をもたらしてほしいのじゃ。

 それが今回の召喚を実施した理由である。」


 と説明してくれた。


 これを聞いた委員長女子が質問する。

「お話の趣旨は理解しましたが、国王自らが国家発展のための施策を実行する等はできないのですか?

 それこそ仕事をしない貴族をすげ替えたりして。」


 クレア王女は首を横にふりながら、


「王室としてそのようにしたいのはやまやまなのじゃが、その方法がわからんのじゃ。

 残念ながら王室も統治の方法について勉強不足であるといえる。

 また貴族達も小狡い程度に私財を溜め込んではいるが取り潰されるほどは悪事を働かない。

 要は取り潰すほどの理由がないのじゃ。

 よって定期的に勇者を召喚し、異世界からの新しい刺激に頼らざるを得ないのじゃ・・。」


 委員長女子はため息をつきながら、


「つっこみどころは満載のような気がしますが・・、もとの世界に帰るにはあなた方に協力するしかないようですしね・・。

 とりあえず、これから実施すべきことの流れを教えてください・。」


 と半ばあきらめたように答えた。

 とりあえず言うことを聞くしかないといった心境のようだ。

 

 周りの高校生たちも同じような表情である。

 どうやらあきらめの感情とお菓子を食べた満腹感が混ざりあって、騒ぐ気も起こらないようだ。


 クレア王女は委員長女子の言葉に満足そうにうなずきながら答え始めた。


「理解してくれて助かるのじゃ。それでは今後の予定について説明しよう。」

 

 クレア王女曰く、今後のスケジュールは次のとおり。


・召喚時に付与されたスキルの確認

・この世界で生きていくための知識・技能の習得のための教育訓練(1ヶ月)

・もとの世界に戻るか戻らないかの意思の確認

・勇者パーティーを編成して旅に出発(またはこの世界に残留)


 なお、教育訓練期間中は王城内に居住して座学や実技等の訓練をして剣術や魔法の使い方を学べるらしい。


 何を学ぶかは各人のスキルや希望に合わせるとのこと。


 また、教育訓練期間中のお世話係兼指導教官として王城に勤務するスタッフを1人専属で配置してくれるとのこと。


 性別・職業問わず自分の気に入った人を指定できるらしい。

 

 ちなみに、訓練期間中はおこづかい程度に報酬も出るらしく、お世話係と一緒であれば外出して買い物などを楽しんでもよいとのこと。


 まあ、この世界を旅するにはこの国の生活を知る必要があるしね。


 高校生達は専属スタッフの指名可についてキャーキャー言っている。


 なにやら既に周囲にいるメイドさん達をチェックしている男子もいるようだ。


 女子は「イケメン執事を・・」とか呟いている気がするが、気にしないでおこう。


 クレア王女はそんな様子を見ながら、


「まずはスキルの確認をしようではないか。専用の部屋に案内するので一緒に移動してほしいのじゃ。」


 と言うと、周りのメイドさん達に案内を命じた。


 すでに好み?のメイドさんの後について行く気の早い男子もいるようだが。


 もちろん委員長女子の冷めた視線には気づいていない。


 僕も皆の後について移動を始めた。

 今さらジタバタしても仕方ないしね。


 どんなスキルが付与されているのか楽しみだぞ♪


最後まで読んで頂きありがとうございました。


ご感想をいただけますとたいへん励みになります。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ