第35話 異世界カレーライス
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部屋に戻ってきたら昼ちょっと前だった。
もうすぐランチの時間だね。
「ねえチャロン。今日は内勤者用の食堂に行ってみない?
なんとなく美味しそうな料理が出てそうな気がするんだけど。」
「いいですね。私もそんな気分だったんです。
是非行ってみましょう!」
武器工房で貰ってきた材料を部屋に置いて内勤者用の食堂に向かう。
途中で弓術場の横を通り過ぎたときに、亜季ちゃんとばったり会った。
「あれ?タク先輩とチャロンさん?どうしてここに?」
「ああ今日は内勤者用の食堂に行こうと思ってね。
ほら前にハンバーガーを作って食べたっていう話をした食堂だよ。
何か美味しそうな料理出てそうな予感がしてね。」
「ああ、いいですね!私もご一緒してよろしいですか?」
「もちろんだよ。3人で一緒に行こう。」
内勤者用の食堂まではあまり距離はないが、チャロンはいつもどおり腕を組んでピッタリと僕の左側に寄り添ってくる。
それはいつもどおりでいいんだが、何故か右側にいる亜季ちゃんとの距離が近く感じるのは気のせいか?
あっという間に食堂に着いたら既に内勤のスタッフが食堂の入り口に列を作り始めている。
どうやら今日も人気メニューの予感だぞ?
列の一番後ろにいた文官ぽいお姉さんに、
「すみません。今日のランチメニューは何なんですか?」
と聞くと、
「今日はカレーライスの日なのよ。
カレーは材料が貴重だから毎月1回しか食べれないのよね。
楽しみだわ!」
と教えてくれた。
おお!カレーライスか。確かに楽しみだ。
「チャロンもカレーライスは好きなの?」
「はい、もちろんです。
お肉がタップリだとなおうれしいですね。」
「私もお肉ゴロゴロカレーが好きですね!楽しみです!」
と亜季ちゃんも嬉しそうだ。
そんな話をしていると食堂の扉が開いて、営業開始になった。
列に紛れておとなしく並んでいると、
「なんだ、チャロンと勇者様じゃないか?
今日はこっちの食堂にきたのかい?
ちょうどよかった、今日もスタッフが3人も急に休んでしまってね。
給仕の人数が足りないんだ。また手伝ってくれないかい?
今日は人気メニューのカレーライスだからお客さんも多くてね。」
と、料理長に声をかけられてしまった。
本音を言えばこのまま列に並んでカレーを食べたいところだが、料理長にはお世話になってるしね。
「もちろんですよ。
チャロンも亜季ちゃんもいいかな?」
「「はい、もちろんです!」」
と答えてくれたので、3人でカウンターの内側に入る。
もちろん、その前にチャロンに「汚れ除去」の魔法をかけてもらう。
衛生管理は大切だからね。
押し寄せる人たちにせっせとカレーライスをよそって手渡す。
見た目も匂いも日本のカレーライスと同じようだ。
これも過去の勇者が広めたメニューなんだろう。
ちなみに今日のカレーは山賊猪の角切りお肉ゴロゴロカレーでした。
チャロンも亜季ちゃんも喜びそうですね。
◇◆
ようやくお客さんのピークが過ぎたころ、料理長がやって来て
「ありがとう助かったよ。あんた達もカレーを食べておくれ。
たくさん作ったからいっぱい食べていっていいよ!」
と声をかけてくれる。
僕は、ふと思いついて、
「ちょっと追加のトッピングを作りたいので厨房をお借りしてもいいですか?」
とお願いする。
「ああ、いいよ。
好きな材料と道具を使っておくれ。
この前のハンバーガーみたいに新しい食べ方を教えてくれるなら大歓迎さ!」
「ありがとうございます。
チャロンと亜季ちゃん、ちょっと手伝ってくれるかな?」
「「もちろんです!美味しいトッピングをお願いします。」」
僕たちは厨房に入ると、山賊猪のロース?の部分の厚切りスライスと、卵、パン粉をお願いする。
うん、トッピング用のトンカツ?と茹で卵を作るのさ。
亜季ちゃんには茹で卵をつくってもらう。
7割くらいの半熟でお願いしますね。
チャロンと一緒に溶き卵とパン粉をロース肉にまぶしてから、高温の油に投入する。
からっと二度揚げが終わるころには茹で卵もできたようだ。
トンカツを一口サイズにサクサクと切ってから、よそったカレーライスの上にのせる。
ついでに茹で卵も殻をむいて乗せてしまう。
うーん、ゴロゴロの角切りお肉とトッピングの組み合わせに罪悪感しか感じない。
もうこれは「山賊猪の強欲カレー」と名付けよう。
カウンターでセットのスープとお水を頂いてから客席に3人で座る。
「「「いただきまーす!」」」
と待ちに待ったカレーランチの開始である。
「「「うん、おいしい!」」」
こちらのカレーも日本のカレーと同じくらい美味しいね!
ゴロゴロお肉もトンカツもやわらかジューシーで食べごたえ抜群ですね。
茹で卵もいい感じでトロトロです。
あっという間に一皿をペロリと食べてしまったら、チャロンと亜季ちゃんも顔がおかわり食べたいモードである。
ふと回りを見渡すと、厨房のスタッフさんも涎をたらさんばかりの勢いでこちらをガン見しているではないか(汗)
その後、スタッフ全員分の「山賊猪の強欲カレー」を準備したのはいうまでもない。
美味しかったけど疲れたね。
◆◇
亜季ちゃんとは内勤者用の食堂で一旦別れてチャロンと一緒に部屋に戻る。
「さあ、魔道具製作の研究だ。まずはこの炭を粉末にするところからだね。」
「ところで、どうして炭の粉末なんですか?」
「うん、実は元の世界では炭を部屋に置いて臭い取りに使ったり、
粉末にして飲むことでお腹の中の余分な油の除去に使われていたんだよ。
炭には臭いや油を吸着する効果があったんだ。
もしかしたら黒樫の炭にも魔力を吸着する効果があるかもしれないと思ってね。
それに炭にすることで黒樫の木の中の不純物が燃えてなくなるし、
粉末にすることで全体の表面積が増えるから吸着効果が増えると思ってね。」
「へえ、タクさんの世界では炭は燃料以外にもいろんな使い方をするんですね。
うまくいくか楽しみですね。」
「うん、早速やってみよう。」
とはいったものの、どうやって粉末にするかだね。
炭を両手に持って相互にぶつけてみるとカンカンといい音がするので、結構固いにちがいない。
まあ、ここは無難に魔法の出番だね。
僕はブーニハットを作った布の余りで30cm四方くらいの布袋をつくる。
粉がもれるといけないので縫い目はできるだけ細かくね。
ああ、こういう時は元の世界のビニール袋が欲しくなるよね。
錬金術士のレン君が作ってくれないかな。
何とかかんとか布袋を作れたので、炭を2本くらい入れて袋の口を閉じる。
袋の上から炭に手を当てて、片栗粉ぐらいの粉の粒度を想像しながら、
「物体作成」
と魔法を発動すると、すぐに炭の粉末ができた。
魔法便利すぎ。
あとは粉末を閉じ込める入れ物だね。
うーん、元の世界だと魔力というかエネルギーを貯めるものといえば乾電池だよね。
今後の魔道具への応用を考えると入れ物のサイズは統一したほうがいいよね。
ここは暫定的に単3電池くらいのサイズを標準としよう。
僕は外径10mm、高さ50mmの円筒をイメージしながら、武器工房でもらってきた真鍮の板を加工する。
もちろん、炭の粉末を入れれるように底は閉じて、上部は開放で。
上下とも閉じたら粉末を入れることができないからね。
部屋においてあるティースプーンを使って炭の粉末を円筒の中にゆっくり入れていく。
隙間ができないように、揺らしたりスプーンの柄でつついたりしながらギチギチに詰め込むと、「物体作成」で円筒に蓋をする。
これで単3魔力電池(仮称)の完成だ。
「うん、なんとなくできたけど、魔力を貯める時ってどうすればよいかわかるかい?」
「空気中に置いておけば自然に貯まりますけど、急いで貯めたいときは自分で魔力を流し込めば貯めることができますよ。」
「なるほど。とりあえずやってみよう。」
と、単3魔力電池(仮称)を右手に握りしめて魔力を流す。
気のせいか結構な魔力が吸いとられた気がするぞ?
魔力の流れが止まったので、手をはなす。
どうやら充電?充魔?できたようだ。
ややこしいからチャージと呼ぼう。
「なんとなく出来た気がするよ。」
「すごいですね!「目利き」スキルで確認されてはどうですか?」
「それもそうだね。」
僕は「目利き」と呟いて、単3魔力電池(仮称)のチェックをする。
・単3魔力電池(仮称):真鍮の円筒の黒樫の炭の粉末を充填したもの。
同じ体積の黒樫の木に比べた性能は次のとおり。
貯蔵魔力量:約50倍
チャージ速度:空気中の自然チャージで魔力量0%から100%まで約30分。
物理的に破壊しない限りメンテナンスフリー
おお!ちゃんとできてたよ。
しかも恐ろしく高性能。
約30分放置でフルチャージって、よほど連続使用しなければずっと100%フルチャージ状態だよね。
貯蔵魔力量が約50倍ということは、昨夜作った「点灯」の魔道具と同じサイズにすれば、約50時間、つまり2日間連続使用が可能ということか。
これはもう作るしかないね。
単3魔力電池(仮称)はただ今から単3バッテリーと呼称しよう。
「うん、ちゃんとできてたし、魔力も同じサイズの黒樫の50倍貯めれるみたい。
しかも、空気中に放置で30分で空っぽから100%まで貯めれるんだって。」
「すごいですね!大発明ですよ、タクさん!」
「そうだね、じゃあ、どんどん作ってみよう。
まずは「点灯」の魔道具から作るとするか。」
僕は元の世界の懐中電灯を参考にして、単3バッテリーが縦に2本入る円筒を作る。
ちょうど長さ10cmくらいだね。円筒の上部はオープンにする。
そして、直径2cmくらいの球体を作成し、筒の外径に合うように球体を半分ほど繰り抜く。
要するにキャップですね。
単3バッテリーをさっきと同じように2本作って円筒に入れる。
うん、サイズはぴったり、隙間もないね。
その上からキャップを被せて「物体作成」で密着させる。
そして、昨夜と同じように「点灯」の魔法を付与する。
これで完成かな?
早速「目利き」で見てみると、
・「点灯」の魔道具:単3バッテリー×2本使用。
使用者が魔力を1秒以上流すと点灯。
もう一度1秒以上流すと消灯する。
連続点灯時間:約50時間
と表示された。
「うん、完成だよ。
チャロン、試してみてくれる?」
「はい!では魔力を流してみますね。えい!」
と魔力を流すと点灯した。
明るさは60wの蛍光灯の電球くらいだね。
いい感じに明るいです。
「すごいですね!これがいくつかあれば、野営時の夜の明かりにぴったりです!」
「そうだね。次は「点火」の魔道具を作ってみよう。」
さっきと同じように「点火」の魔道具を作る。
キャップの形状は円錐にした。キャップの形状で道具を識別できるようにしておこう。
完成後に「目利き」で確認する。
・「点火」の魔道具:単3バッテリー×2本使用。
使用者が魔力を1秒以上流すと種火を点火。
もう一度1秒以上流すと種火が消える。
連続点火時間:約50時間
「うん、これも完成だね。
ついでに「放水」の魔道具も作っておこう。
野外で飲み水や手洗いに使えるだろうからね。」
同じように「放水」の魔道具を作る。
・「放水」の魔道具:単3バッテリー×2本使用。
使用者が魔力を1秒以上流すと放水を開始。
魔力を流す時間で放水量を調節できる。(時間が長い⇒放水量が多い)
もう一度1秒以上流すと放水が止まる。
連続放水時間:最小流量で約12時間
さすがに放水は時間が短いね。
それだけ魔力を消費する魔法なんだろう。
「うん、できたよ。「点灯」「点火」「放水」があれば、とりあえず最低限の準備が整うよね。
あとはおいおい追加していこう。」
「そうですね。生活魔法が使えない人でもその3つがあればとりあえずなんとかなると思います。
というか、普通はそれすらも無いので皆苦労しているんですよ。
特に行商の人達は。」
「そうなんだね。
もう少しで亜季ちゃんとの約束の時間だね。もう少しがんばろう。
魔力バッテリーを僕達の弓にも埋め込んでおきたいんだよね。」
「そうですね。その方が実際の狩りでは安心して使用できますね。
魔力切れの心配が減りますから。」
僕は単3バッテリーをさらに2本作成する。
ついでに単3バッテリー1本用の箱形の外付けケースを作る。
外付けケースは半分に割れるようになっており、単3バッテリーを交換可能な形状にしてある。
なんというか、元の世界の印鑑ケースみたいな感じですね。
外付けケースの長手方向の両サイドは底板を長めにして耳の部分を設けて、ビスの止めしろにしておく。
そして、僕の弓のグリップ部分の上下の手前側に単3バッテリーを入れた外付けケースをビスで取り付ける。
当然ビスは「物体作成」で完全に固定しておく。
外付けケースがちょっと手前に出っ張るが、気になるほどではない。
まあ、何かバランスを取るための重りでもつけているのか?くらいの感じだね。
「うん、こんな感じかな?これで魔力切れのリスクがかなり減るね。
単3バッテリーの予備をいくつか持っておけばいざという時は交換すれば良いからね。」
「いいですね!これこそ上級弓使いの弓って感じですね!
こんないい道具は世の中にほとんどないですよ。
それこそ過去の勇者様が作った国宝級の弓くらいかもしれませんね。」
「はは、それなら作者冥利につきるね。
ついでにチャロンの弓も加工しておこう。」
僕は同じようにチャロンの弓も改造する。
パパっとできてしまった。やはり「お手伝い」スキルの効果だね。
せっかくだから「目利き」で見てみよう。
・洋弓「タクカスタム」(魔道具)
:魔力を流すと「測距(中級)」「照準補正(中級)」が発動する。
発動対象はスキル発動時に簡易照準器の十字部分と重なっているもの。
距離や照準の表示は簡易標準器のガラス板上に表示される。
弓に内蔵された押ボタンスイッチを押すと「魔力誘導(中級)」が発動する。
発動対象は「照準補正(中級)」が照準を確定した対象と同じ。
単3バッテリー×2本による外付魔力供給機能を追加済み。
繰り返し使用可能。
うん、単3バッテリーによる外付魔力供給機能はちゃんと追加されたようだ。
しかし、洋弓「タクカスタム」って、名前のセンスが・・。
誰がネーミングしてるんだ?
「うん、どうやらちゃんとできているようだよ。
できてるんだけど・・、名前が洋弓「タクカスタム」に変わってた(汗)。
変な名前でごめんね(汗)」
「謝ることはないですよ!
タクさんの名前のついた弓を作っていただけるなんて恋人としては嬉しい限りです。
ありがとうございます!」
「喜んでいただけるなら何よりだけど・・。
まあ、また明日の早朝にでも試射してみよう。
魔道具作りはこれくらいにして、ちょっと休憩してから亜季ちゃんと合流しようか?」
「そうですね!片付けたら中庭でお茶でもしてから服飾工房に行きましょう!」
このあと、部屋の片付けをしてから、チャロンにお茶を淹れてもらって2人で中庭で休憩した。
一仕事終わった後の紅茶は美味しいね!
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