第3話 オリエンテーション?
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本日3話目です。
◆◇
壇上の女性の歓迎の言葉を聞いた僕と僕と一緒に召喚?された高校生達は暫らくの間ポカンとしていたが、徐々に現実を意識し始めたのか、それぞれが口々に騒ぎ始めた。
「異世界?」、「召喚?」、「勇者?」、「セントラル王国?」、云々。
やや喧騒になってきた頃、ひとりの女子学生がおもむろに立ち上がって壇上の女性に質問を始めた。
眼鏡の似合う勉強の出来そうな女子である。
他の生徒に先んじて質問するあたり、きっと委員長キャラに違いない。
「異世界の勇者とは、召喚とは何ですか?
てゆうかここは何処ですか?
セントラル王国なんて聞いたことも見たこともありません。
私達は今週末に大事な大学入試センター試験を控えていて忙しいのです。
異世界云々の妄想?戯言?に付き合ってる暇はありません!
いったいぜんたいどういう事か説明してください!」
と、一気に捲し立てた。
これを聞いた他の生徒も間髪いれずに追従する。
「そうだ!そうだ!」、
「僕たちは受験生だぞ!」、
「ここは何処だ!」、
「元の場所に今すぐ戻してくれ」、
「異世界召喚は望むところだが受験終わってからにしてくれ!」、
等々、大騒ぎである。
若干肯定的な発言もあるようだが・・。
壇上の女性は『予定通りだな』的な不敵な笑みを浮かべてニヤリとしたあと、「落ち着くがよい、異世界の勇者達よ。一つづつ回答しようではないか。」と鷹揚に答えたあと、淡々と語り出した。
曰く、
・この世界は『リベラ』という世界であり、我々が住む地球とは別の世界である。
・いわゆる『剣と魔法』が使える世界。
・約2000年前までは人間、亜人および魔族と魔物が入り乱れた混沌とした世界であったが、地球を管理していた神によって派遣された初代勇者タケルがこの世界に平和と秩序と統治のシステムをもたらした。
・この際、人族を治めていた部族長がタケルから以降の統治を任されセントラル王国を建国した。
・また、タケルがセントラル王国の初代国王に地球からの勇者召喚術を伝授し、この世界の平和と秩序の維持、ならびに発展のために勇者が必要となった場合は召喚する許可を得た。
・そして現在その必要性が生じたことから勇者召喚を実施したものである。
・なお、勇者召喚の儀は相当な魔力を消費するため、早くても10年に1回しかできない。
・・・、うーん、いかにもテンプレと言った話である。
そして誠に身勝手な召喚理由である。
これでは納得するのは難しいだろうという感じだ。
まさにクレーム必至な状況だ。
ああ、それと説明してくれた女性はこのセントラル王国の第一王女であるクレア王女殿下とのことである。
回答の前にクレア王女が自己紹介をしていたのだが、生徒たちは質問の回答を聞くことに必死であまり聞いていなかったが・・。
きっと覚えてすらいないだろう・・。
本人曰くこの勇者召喚の責任者らしく、召喚のタイミングは国王から一任されているらしい。
少なくとも他人の人生に大きく影響する召喚をそんなザックリな感じで実施されても困るのだが・・。
生徒たちは王女の説明を黙って聞いていたが、納得できないのか再び騒ぎ始めた。
そりゃそうだよね・・。
おもむろに委員長女子が立ち上がって再度質問を始めた。
「あなたの話はなぜ、いまこのタイミングで、私たちが召喚されないといけないのか?の説明になっていません!
納得のいく説明を要求します!」
そりゃそうだ。僕も聞きたいぞ。
委員長女子にグイグイ行ってもらうこととする。
クレア王女は「ふむ。」と呟くと委員長女子の更問に答え始めた。
「まず何故?についてだが、お主達の国、日本は初代勇者タケルの母国であり地球という世界でも有数の先進国という。
よってこの世界の発展のために必要な人材を召喚できる可能性が極めて高いのじゃ。
故に召喚は基本的にお主達の国からとされている。」
どうやら王女は「のじゃ」キャラらしい。これもテンプレ展開のひとつか?
「2点目の時期についてじゃが、お主達の国ではいまは大学?に入るための大事な試験の直前であると聞いている。
この時期の勇者候補は試験後の大学生活?における希望?欲望?が溜まりに溜まっていると聞く。
この強い思いが召喚時に付与されるスキルに大きな影響を及ぼすのじゃ。」
「最後にお主達が呼ばれた理由だが、お主達の学校の近くに初代勇者タケルの縁の地があるのじゃ。
召喚の儀を行う際に地球からのゲートを開く必要があるが、その縁の地にゲートを開くのが最も魔力が少なくて済むのじゃ。」
と、クレア王女は淡々と説明した。
なんか日本ありき、うちの近所ありきじゃないですか?
委員長女子は口を挟むことなくクレア王女の言葉を噛み締めるように聞いていたが、納得いかないとばかりの不満な表情で更に食いついていく。。
「全くもって身勝手な理由ですね!
到底納得できません。
しかしながら既にここに召喚されてしまった以上は理由を追求しても仕方がないでしょう。
とりあえず、私はすぐにでも日本に帰りたいのです。
私たちは日本に帰れるのか?
帰れるのであればその方法を教えてください!」
まさにグイグイといった感じで問い詰めていく。
これに対してクレア王女は全く動じることなく切り返す。
「帰る方法はある。
その方法について説明しようではないか。」
そしてクレア王女はこれまた予定どおりといった感じで説明を始めた。
もはや新入社員に対するオリエンテーションのようである。
「まず始めに、元の世界に戻ることも選択できるし、戻らないことも選択できる。
過去に召喚された勇者候補の中にはこの世界で生きていくことを選択した者もいるという。
どちらを選ぶかはそなた達の自由じゃ。」
「戻ることを選択した場合であるが、5人一組でパーティーを組んでこの世界を旅しながら指定された地点を経由しつつ、東の森林地帯に住む『魔王』と”面接”してもらう。
そして魔王に対して旅の道中でそなた達が行ったこと、特にこの世界にもたらした影響についてプレゼンを実施してもらう。
魔王がそち達の行動がこの世界にとって良い影響、つまり功績であったと判断した場合は、魔王がそち達の願いを叶える手はずとなっている。
この時に元の世界に帰ることを希望すれば魔王が帰る方法を教えてくれる。
また、この世界に残ることを希望するならば相応の褒美が贈られることとなっているのじゃ。」
うーん、なにやら日本の一流企業が主催する○○カップみたいな感じだな。
高校生が チーム対抗でビジネスアイデアを競い合うようなやつね。
しかし、魔王と面接なんて展開は初めて聞くけどね。
魔王は倒すのがテンプレではなかったっけ?
委員長女子は帰る方法があったことに安堵しつつも更に質問を重ねていく。
「元の世界に帰る方法があることは理解しましたが、その方法では旅を終えるまで相当の時間がかかるのでは?
私達は今週末に大事な試験があるのです。のんびりと旅をしている暇はありません!」
ごもっともな指摘である。
これに対してクレア王女は更に淡々と回答する。もはやクレーマーへのマニュアル対応か?
「そこは心配しなくてよい。魔王に認められた勇者は、元の世界における自分の望む過去の時点に戻ることができる。
召喚された時点でもよいし、赤子のころに戻ることもできる。
しかも召喚特典で召喚前までの元の世界や召喚後のこの世界での出来事や知識に関する記憶はそのまま維持される。
そち達の国ではいわゆる異世界召喚ものの物語が大人気らしいが、その火付け役は過去にこの世界に召喚されて、その後に元に世界に戻った元勇者と聞いているぞよ。」
おお!これはまさかの特典。
記憶を維持したまま子供時代に戻ることができれば、いわゆる『知識無双』も夢ではないぞ。
あと、宝くじの番号を覚えていれば当たりくじが買えるかも!
覚えてないけどね!
クレア王女の説明した召喚特典は高校生達には魅力的に聞こえたらしく、さっきまでの張り詰めた空気が緩んできたぞ。
既に「無双・・」とか呟いている生徒もいるし・・。
若干トーンダウンした委員長女子が皆を代表するがごとく更問いを始めた。
「わかりました・・。元の世界の元の時点に戻るには勇者?としてこの世界での仕事?任務?を果たすしかないようですね・・・。
しかし残念ながら私達にはこの世界の知識が全くありません・・。
当然、どのように旅を始めればよいのか教えてくれるんですよね?
召喚の責任者として。」
クレア王女はニヤリとしたあと回答する。
ようやく前向きになってくれたか、とでも考えているに違いない。
なかなかに腹黒いお人のようだ。
「もちろんじゃ。まずはこの世界についての知識と、この世界で生きていくうえで必要なスキルを習得してもらう必要があるからの。
皆もたくさん声を出して喉が乾いたであろうから、お茶でも飲んで一休みしてから説明しようではないか。」
クレア王女がそう言ったとたん、周囲に侍っていた兵士達がうやうやしく僕たちの案内を始めた。
休憩する場所につれていってくれるようだ。
まずはオリエンテーションの第1部?が終了したようである。
とりあえず現時点では身に危険が無いようでよかったよ。
それにしても異世界召喚なんて、本当に起こるんだね。
自分が当事者になるなんて思わなかったけどね・・。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
明日からは仕事もありますので、のんびり投稿したいと思います。
引き続き読んで頂ければ幸いです。