第26話 午後もスキル習得に勤しむ(革細工に弓術に・・。)
いつもご覧頂きありがとうございます。
今日の昼食も美味しくいただいた。
今日はトマトソースパスタとウサギ肉のシチューだった。
昨日捌いたやつかな?
ちょっと休憩してから防具工房にやってきた。
まあ、作業の流れは午前中と同じで、デザイン、採寸、縫製の各段階に分かれており、同じようにデザインの説明から実施した。
今回作るのはいわゆるコンバットブーツだ。
足首と膝の中間くらいまでの高さの半長靴だね。
鹿のような動物のこげ茶色のバックスキンを外装にした編み上げブーツのデザインを描いてから採寸してもらう。
こげ茶色は全環境対応だからこの世界でも役にたつだろう。
最後に職人さんと一緒に縫製作業だ。
といっても革の縫製は力とコツが必要なのでなかなか難しかったが。
防具工房の職人さんは「革細工」のスキルもあるので仕事が早いらしい。
なるほど。
せっかく防具工房にきたので、ついでに弾帯代わりの腰ベルトとベルトに付ける10cm四方で厚み5cmくらいのポーチをブーツと同じ素材で作ってもらう。
もちろんデザインと縫製も手伝ったよ。
いまは部屋の鍵くらいしか入れる物がないけど、外出するようになれば小銭でも入れられるだろう。
これでとりあえず戦闘服ができたな。
帽子を作り忘れたけど、また後日でいいや。
外の環境に合わせたデザインにしよう。
個人的な好みはブーニーハットだけどね。
おっと、そう言えば亜季ちゃんから弓術場に来てくれとお願いされてたな。
今日は行っておかないと朝の件もあるから怒られてしまう。
今のところ高校生チームとの唯一の接点だからご機嫌とっとかないとね。
◇◆
チャロンと一緒に手を繋いで弓術場にやって来た。
もう城内は2人の手繋ぎデート場と化している。
誰も疑問に思っていないようだ。
城内で噂が伝わる速度は早いらしい。
亜季ちゃんは弓術場の的に向かって弓を構えてはブツブツ言っている。
距離の違う的を次から次へと見てはブツブツ言ってるだけで矢を射ってはいないようだ。
訓練に集中していた亜季ちゃんが僕たちに気づくと満面の笑顔でこっちにやってきた。
「タク先輩やっと来てくれたんですね。待ってましたよ。
てゆうか相変わらずラブラブですね。
青春真っ只中の高校生ですか??」
とジト目で見られる。
何気に僕に厳しいよね(汗)
「いや、せっかくだしね(汗)。
それよりなんか変わったトレーニングしてたみたいだけど、レアなスキルでもゲットしたの?」
「はい、そうなんですよ!
弓術士には有り難いスキルを2つもゲットしたんです!」
「おお、いいね!教えてもらっていい?」
「もちろんです。「測距」と「照準補正」です。」
「なんか良さそうな響きだね。
どんなスキルなの?」
「まず測距ですが、的までの正確な距離を把握できるスキルです。
的を見るとステータス画面の小さい版みたいなやつが的の横に浮かんで距離を教えてくれるんです。」
「照準補正は測距と組み合わせて使う感じなんですが、距離に応じた最適な矢の射出角度を教えてくれるんです。
距離が遠いと矢をちょっと上向けるみたいな感じですね。
これも小さい画面に上下の矢印で指示が出るので、指示通りに合わせると赤い丸い印が出て最適角度を知らせてくれるんです。」
「すごいね!とても便利じゃない?
遠くの的も正確に当てれそうな感じだね。」
「はい、おかげで屋内の的なら命中率はほぼ100%です。
でも弓を引く強さを一定にしないと若干狂いが出るので練習が必要ですけどね。
屋外でも試してみないといけませんしね。
ただ、先日習得した「魔力誘導」より発動が早くて必要魔力も少ないので連射向きのスキルですね。」
「僕も習っていい?」
「もちろんです。
まず測距ですが、的をよく見て頭の中で概ねの距離を思い浮かべながら発動すると画面が浮かんで距離が表示されます。
誤差が多いと表示が出ないので元々持ってる距離感も大事みたいですね。
コツは的の狙いたい部分をしっかりと見ることです。
まあ、タク先輩は経験者だから大丈夫と思いますけど。
経験者だからわかると思いますが。」
ふむ。なるほど。
僕は射場のブースの一つに入り、的の中心をよくみる。
概ね50mくらいかな~と思ったところで「測距」とつぶやき発動する。
すると的の上に小さな文字盤が現れて「49m」と表示される。
「おお!できた!49mって表示されたよ。」
「え、もうできたんですか?早いですね。
しかも数字もあってますし。」
「うん、目分量だと50mだったんだけど、大体あってたから発動できたのかな?」
「じゃ、次は「測距」を発動したまま矢を引いて構えてみてください。」
僕は言われたとおりにする。
「うん、「測距」を発動したよ。距離も出てる。」
「じゃあ、そのまま「照準補正」を発動してください。」
僕は「照準補正」とつぶやく。
すると、距離の数字の上に「↑」上向きの矢印が浮かぶ。
弓を少し上にあげると今度は「↓」下向きの矢印が浮かぶ。
どうやら行きすぎたらしい。
ほんの少し下げると今度は赤い「●」が浮かぶ。
どうやら丁度よいようだ。
「赤い●がでたよ。」
というと、亜季ちゃんが、
「いまです、射ってください。」
僕はすっと右手の指を矢から離して一気に放つ。
矢は的の中央に吸い込まれるように飛んでいき、そのまま突き刺さる。
「うん、いいね!発動も早いし、近距離から中距離で数射ちするときには極めて有効だね。
狩りとか戦闘の現場で使える便利なスキルだと思うよ。」
「ですよね。「魔力誘導」と使い分ければオールレンジに対応できる弓術士になれそうです。
まあ、問題は城の外で使う機会があるのかどうかですけどね。」
「確かにそうだね。僕ももう少し訓練したら城の外へ研修に行きたいんだよね。
旅にでる前にこの世界の常識も身に付ける必要があるからね。」
「そうなんですよ。私もそれが不安で・・。
旅にでる時に誰とパーティーを組むかにもよるんですが、高校生の男子チームは皆ちょっとクセが強いので誰と組んでも不安なんですよ・・。」
「はは、そうなんだね。
僕は彼らと交流したことがないからわからないけど。
まあ、皆よさそうなスキル持ちだから何とかなるんじゃない?」
「何とかなればいいんですけどねー。まあ、今悩んでもどうにもならないので、とりあえず訓練にいそしみます。
ところで、タク先輩達は今日は何してたんですか?」
「ふふふ、僕達は今日は充実してたよ。服と靴と装具作りを覚えてきたのさ。」
というと、風呂敷のような布に包んでいた戦闘服を見せてあげた。
なんちゃってOD色の戦闘服だが、デザインは米軍の最新のものに似せてあるぞ。
コンバットブーツもいい感じだ!
まあ、米軍の装備が事実上の世界標準だからね。
誰が見てもかっこ良いと思ってくれるだろう。
「かっこいいじゃないですか!私の分はないんですか??
もしかして自分の分だけですか?ひどいですね。」
と言って泣き真似しながら責めてくる。
「ごめんねー。採寸してもらったオーダーメイドだから、僕たちの分しか作らなかったんだ。
次に工房に行くときは亜季ちゃんも誘うよ。」
「絶対ですよ。ウソだったらタク先輩は後輩女子を泣かすひどい男だって噂を流しますからね。」
それだけは止めてほしい。
「う、うん。気をつけるよ。」
「ふふ、冗談ですよ。でも機会があったら声をかけてくださいね。
そろそろ今日も訓練終了の時間ですね。そろそろ別館にもどりませんか?」
「そうだね。皆で帰ろう。お腹も空いてきたしね。」
「もしよければ今日は一緒に夕食食べませんか?
いつも一人で訓練してるから、タク先輩とチャロンさんとも情報交換したいんですよね。」
「もちろんいいとも。チャロンもいいよね?」
「はい、もちろんです!」
亜季ちゃんには弓術系スキルの取得のお世話になってるからね。
話し相手くらいはお安いご用さ。
「じゃあ、行こう!」
と3人で横一列になって楽しくおしゃべりしながら歩いて帰った。
その後ろ姿を木陰からじっと見つめる影には全く気づかないまま・・。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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