第16話 腕輪の秘密
いつもご覧頂きありがとうございます。
夕食を終えて、さあお風呂に入ろうかな、
と考えながら歩いているとチャロンがおもむろに
「タクさん、今夜から私はタクさんのお部屋に引っ越してきます。
お世話係としてお部屋でもしっかりお世話しますのでお任せください!」
と言ってきた。
何故か顔は「フンス!」といった感じでやる気に満ち溢れているぞ?
「え、そうなの?お世話係って一緒に住むの?」
「そうですよ、居室の中にお世話係用の部屋がありませんでしたか?」
「あ、そう言えば1部屋余分にあったね。あれってお世話係用の部屋だったの?」
「そうです。基本的に勇者様とお世話係は一緒の居室で過ごすのですよ。
まあ、どうしても嫌だと言われたら別々に暮らすのですが・・。
タクさんは私と暮らすのはイヤですか??」
と、上目使いでウルウルしながら聞いてくる。
う、あざとい。これは断れないパターンだね。
まあ、断る理由もないけど。
「そ、そんなことないよ。ずっとチャロンと一緒だなんて嬉しい限りさ。
てゆうか、チャロンこそ嫌じゃないの?」
「私ですか? 私は嫌じゃないですよ。
嫌だったらそもそもこの腕輪を受け取ってませんよ?」
と謎の回答が・・。
腕輪ってお世話係の目印じゃないの??
「この世界ではお揃いの腕輪のプレゼントは交際の申し込みを意味するのです。
異性に対して腕輪を送り、それをお互いの腕につけ合うことで相互に恋人として交際することの承認になるのですよ。
男性は左腕に、女性は右腕につけてあげるのです。
お揃いの腕輪を着用しているカップルは周囲からも恋人として認識されます。
今日は城内のいろんな人にこの腕輪をつけて手を繋いで歩いているのを見られましたから、もう私たち2人は恋人同士になったと認識されてますね・・。」
と顔を赤らめながら恥ずかしそうに教えてくれた。
え、それは知らなかったぞ!
てゆうか、今さら知らないと言えない状態ではないか!
恥ずかしそうにモジモジするチャロンにそんなつもりは無かったとは絶対に言えない!
さっき食堂で高校生達がヒソヒソしていたのはこれが理由だな。
彼らはこの事を何らかの手段で先に知ったにちがいない。
なぜ僕には教えてくれなかったのか!?
まあ、でもチャロンはかわいいし、気立てもいいし、ケモミミだし、こんなかわいい娘が恋人になってくれるのなら断る理由は1ミリもない。
「そ、そうか、既にお世話係としても恋人としても認識されてるんだね(汗)。
では今日から一緒の居室で過ごそう。改めてよろしくね。」
と、チャロンに答える。
「はい!よろしくお願いしますね。自分の荷物を取ってきますので先に居室に戻っておいてください。
何か必要なものがありましたらお申し付けください。
勇者様用の倉庫から受領してきますよ。」
「あ、じゃあ、僕に合いそうなサイズの下着類と靴下を3セットほどもらってきてくれると助かるよ。」
とお願いする。
「わかりました!すぐに戻ってきますので!」
と言うと飛ぶように走って行ってしまった。
さすがコヨーテ獣人である。身体能力が肉食獣だな。
僕は突然の展開に困惑しつつも、
「まあ、これも異世界ライフってやつか。せっかくだから楽しまないとね。」
と呟くと、3階の居室に向かって歩いて行く。
足取りは軽いと・・思うよ。多分・・。
ええ、疲れてなんていませんよ。
◆◇
部屋に戻ったあと、チャロンを待つ間に今日の訓練の復習をしてみる。
チャロンと一緒に暮らすなら、服の手入れもしっかりしておかないとね。
汚いとか臭うとか言われたらショックだし。
立ってられなくなる。
昨日のように部屋着に着替えたあと(下着は脱いだ)、日中に着ていた服に『汚れ除去』の魔法をかける。
特にシャツと上着の襟そで回りは念入りに。
うん、いい感じで綺麗になった。
次にお風呂の浴槽を使って、下着を洗う。
『洗浄』の魔法でムクロジの泡と一緒に下着類をグルグル洗ったあと、一度排水してすすぎのためにもう一回『洗浄』魔法をかける。
その後、軽く手で絞ってから『乾燥』の魔法をかけて水分を飛ばすと、あらなんということでしょう!
汚れた下着もきれいさっぱりになりました。
でも魔法にしては若干手間が多いな。
「汚れ除去」の方が楽だけど、やっぱり水洗いもしたいんだよね。
汗とかは水で流したいよね。
このあたりは魔法の組み合わせで工夫かな?「洗浄」と「乾燥」の鬼リピートとか。
それか、この世界に魔道具とかもあるんだろうか?
洗濯機的なものがあれば便利だよね。
あとでチャロンに聞いてみよう。
服もさっぱりしたところで、本日の成果を確認しよう、ということでソファーに腰かけて「ステータス」と唱える。
前回同様に半透明の文字盤が手元に浮かんできた。これって不思議だよね。原理が気になる。
それはともかく文字盤を見てみると・・、
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・名前(年齢):七条 拓(21歳)
・種族:人属
・レベル:1
・スキル(メイン):お手伝い
・スキル(メイン)の効果:他人の仕事を見よう見まねで手伝うことができる。
スキルの無い人よりちょっと早く仕事のコツを掴める。
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うん、1ページ目には変化はないようだ。
レベルも変わってないね。
「↓」を押して2ページ目を見てみると、
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(補足説明)
・「お手伝い」のスキルは自分が見て、触れて、感じて、聞いて、あるいは自分に対して行使された他者のスキルの初級版または簡易版をサブスキルとして取得することができる。
・取得したサブスキルは、訓練あるいは使い込むことによりオリジナルのレベルまで向上できる。
(向上のスピードは使用頻度及びスキルの種類による。レアスキルほど時間がかかる傾向がある。)
(サブスキル)
・【鑑定系】:「目利き」
・【生活魔法系】:「点火」「点灯」「洗浄」「放水」「乾燥」「汚れ除去」「吹き付け」
「吸引」「氷結」「氷粒」「土台」「石粒」(←All New)
・【弓術系】:「弓術(上級)」、「魔力誘導(中級)」(←All New)
・【テイマー系】:生き物係(見習い)(←New)
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おお、早速サブスキルを習得できているようだ。
生活魔法にはレベルはないんだね。もともと出力の小さい魔法だからかな?
弓術系は既にそこそこのレベルに達しているようだ。
まあ、経験者だからね。
ということは、元の世界で経験済みの技はこちらの世界のスキルも早く習得できる可能性があるな。
剣術や格闘系も早いうちに訓練に行こう。
いや、やはり残された時間を考慮すれば未経験のスキルの習得が先か?
テイマー系なんて「生き物係(見習い)」だからな。小学生の当番並みだよね。
うさぎさんとかあひるさんの餌やりをしましょう、的な感じ?。
旅のお供に狼とか猛禽類とかをテイムするにはまだまだ時間がかかりそうだ。
明日からの訓練プランをチャロンに相談しないとね。
最後までご覧頂きありがとうございました。
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