第15話 スキルの効果の片鱗
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城内の主要施設を見学しながらチャロンに手を引かれて歩く。
どうやら高校生達も訓練を開始したようだ。
先ほどの魔法訓練場では魔法使い各種ボーイが的に向かって火魔法を放っている。
やはり攻撃魔法はロマンだよね。
騎士団の訓練場では、騎士ボーイと格闘戦士ボーイがそれぞれ訓練していた。
2人とも経験者らしくそれなりにやっているようだ。
僕もそのうち訓練に混ぜてもらおう。
乗馬訓練場に併設された馬の厩舎ではテイマー女子が馬のお世話をしていた。
テイマー女子のブラッシングに馬が嬉しそうな表情をしている。
どうやら既に心が通い合ってるようだ。
僕も厩舎スタッフに手伝ってもらって近くにいた馬に飼い葉をあげてみる。
喜んで食べてくれたので、首筋を撫でてあげる。
テイマーもいいよね。
昔から犬とか鳥とか飼うのが夢だったんだよね。
元の世界ではできなかったけど、こっちではできるかな?
一人旅は寂しいから動物を仲間にするのも楽しそうだ。
うん、これはありだな。
生活魔法の次はテイマースキルを習ってみよう。
弓術場では弓術士ガールが的に向かってバシバシ矢を放っていた。
ほぼほぼ全弾命中である。
もしかしてこれもスキルの特典なんだろうか?
全弾必中とか?
近くにいた弓兵に声をかけ、僕も弓を借りて射的にトライしてみる。
部活で使っていた和弓の長弓と違って、アーチェリーで使う洋弓タイプであるが、弓術士ガールと同じように引き絞って放ってみたらそこそこいい感じで的の中心近くに当たった。
うん、感覚的には長弓と大きな差はないね。
感覚も鈍ってないし。
訓練次第でもっと精度が上がるかな?
と思いながら何本か放ってみる。
やっぱり弓は楽しいね。
弓術も旅のお供に覚えておこう。
食料品確保に役立つかもしれないしね。
ついつい楽しくなってバシバシ矢を放っていると、周りに弓兵達が集まって来てヒソヒソと言っているのに気づいた。
あの方のスキルはお手伝いでは?
なぜ弓を使える?
しかも結構上手いぞ・・。
等々。
どうやら既に僕のスキルの件はあちこちに広まっているようだ。
まあスキル関係なく、元々経験者なだけですがね。
そんな騒ぎに気づいたのか、離れたところにいた弓術士ガールが僕の方にやってきた。
「おつかれさまです。七条先輩ですよね?私は弓道部の後輩にあたる風早 亜季と言います。
先輩のことは部活の噂で伺ってますよ。
なんでも弓道部だけではなく、いろんな部活で活躍されていたとか?
まさかここでお会いするとは思いませんでしたが。」
「初めまして、風早さん。七条 拓です。まさか僕の名前をご存知だったとは。
高校時代もこっちでも目立たないようにしてるつもりだったんだけどね。」
「いえいえ、高校では十分に目立ってたみたいですよ。部活の実績とかで。
もちろん今も目立ってますよ。
史上初のお手伝いスキルをガチャで引いて、しかも高校の先輩。
一緒に召喚された皆も気にしてますよ。」
と、召喚されたメンバーにも気にされていることを教えてくれた。
よかった。
空気扱いではなかったようだ。
「それに・・、既に可愛らしいお世話係さんを見つけて城内を手繋ぎデートされてるようですしね♪。
まだ召喚されて2日目だというのに・・。手の早さも目立ちまくってますよ。」
と、ジト目で教えてくれる。
僕はわざとらしくゴホゴホと咳をすると、
「風早さん。こちらはチャロンさん。僕のお世話係兼指導教官だよ。
早速今日から生活魔法を教えてもらっているんだ。」
とチャロンを風早さんに紹介する。
「チャロンさん初めまして。風早 亜季と申します。私のことは気軽にアキって呼んでくださいね。
あと、こちらの七条先輩は弓が得意ですから、ハートを撃ち抜かれないように気をつけてくださいね。」
とチャロンにフレンドリーに話かけつつも、僕のことをチクリと攻撃してくる。
僕は風早さんに何か恨まれることでもしたっけ?
「ありがとうございます。アキさん。ご忠告ありがとうございます。
でもタクさんならいつでも撃ち抜いていただいても結構なんですが・・。」
と顔を赤くして恥ずかしがっている。
風早さんはさらにジト目で僕を見てくる・・。
この状況に耐えられなくなった僕は、ここは話をそらすしかないと思いたつと、
「ところで風早さん。さっきはとてもいい感じで的の中心に当ててたけど、それってやっぱりスキルの効果なの?」
と質問した。風早さんはジト目を継続しつつ、
「話をそらしましたね。でもまあいいでしょう。教えてあげます。これもスキルの効果ですよ。
「魔力誘導」という技です。
矢を放った後でも、射手と飛んで行く矢と的の中心を1本の線で結ぶイメージで魔力を込め続けると、多少のズレは矢が自己修正しながら的の中心に飛んで行くんですよ。
止まっている的ならほぼほぼ全部命中ですね。」
と教えてくれた。
何それすごい!元弓道部員としてはぜひ習得したい技である。
「すごいね風早さん!是非一度その技を使ってみてくれないか?
元弓道部員としてはとても興味があるよ!」
と前のめりでお願いする。
「しょうがないですね。まあ先輩のお願いですから聞かなくもないですが・・。
今後は私のことを亜季と呼んでくれればお願いを聞いてあげましょう。」
と謎の条件を出してくる。もちろん僕は断る理由はないので、
「亜季ちゃん、よろしくお願いします!」
と速攻でお願いした。
亜季ちゃんはニヤリと笑みを浮かべながら、
「了解しました、タク先輩!
先輩のために一矢放ちますからよく見ておいてくださいね!」
と行って、射的準備に取りかかるためその場を離れる。
すると何故かその様子を見ていたチャロンにジト目で見られてしまった。
後輩の名前をフレンドリーに呼んでも問題はないはず! 解せぬ!
チャロンと2人で亜季ちゃんの射的を見やすい位置に移動する。
何故かチャロンは腕を組んでついてきたが。
僕はどこにも行きませんよ?
亜季ちゃんは矢を弓につがえて一気に引き絞ると、魔力をこめつつ的に向かって矢を放った。
矢は緩い放物線を描きつつ的に向かって飛んで行く。
よく見れば確かに魔力?と思われるキラキラ光る細い糸のような線が亜季ちゃんと矢と的を結んでいる。
射場は屋外なので若干の風が吹いているが、風による変位を矢が自己修正しつつ飛んで行き、的の中心に見事に命中した。
うーん、これはあれだな。
魔力による有線誘導みたいな技だね。
魔力の線に沿って飛ぶように矢を風魔法で動かしているのだろう。
頑張れば僕にもできるかも。
「お見事!亜季ちゃん!いい射的だったよ!見せてくれてありがとう!
さすが弓術士だね!実にすばらしい!」
とお礼方々ベタ誉めしておいた。
「タク先輩に誉めてもらえて光栄です。先輩も一射どうですか?」
と、亜季ちゃんが僕にも勧めてきたので、
「そうだね。さっきのを参考に僕もやってみようかな。上手く当たるといいけど。」
と言うと、僕も定位置に立って矢を弓につがえる。
的の中心を確認して弓を引き絞る。
ここまではいつもと同じだが、次に魔力を込めてみよう。
僕の右手の指と矢の先端と的の中心を細い糸で結ぶイメージで矢に魔力を込める。
糸が切れないように細い鋼製ワイヤーをイメージしてみる。
あれだね、捕鯨等で使用するワイヤー付の銛のイメージだね。
3点がワイヤーで繋がったイメージが固まったところで矢を放つ。
放つ瞬間にワイヤーに沿って飛べ!と心の中で発動する。
これで矢と的の間に込めた魔力が「ワイヤーに沿って的に向かって飛ぶ」という現象に変化するはずだ。
矢はワイヤーのイメージに沿って吸い込まれるように的の中心に当たった!
どうやら上手くいったようだ。
「タク先輩お見事です!1回見ただけで魔力誘導ができるようになるなんてすごいです。
私は何度も練習したんですよ。もしかして先輩のスキルの効果ですか?」
と亜季ちゃんが聞いてくる。
僕はスキルの補足説明の事をまだ誰にも言ってないので、とりあえずごまかすことにする。
「ど、どうだろうね。
スキルの効果にちょっとだけ早くコツがつかめる、ってあったからそれが上手く作用したのかな?
まあ元弓道部だし、それも上手くいった理由の一つかな?
もしかしたらマグレかもしれないしね(汗)。」
亜季ちゃんには
「じゃあ、もう一度やってみますか?」
と聞かれたが、
「もうそろそろ夕食の時間だから、今日はこれぐらいにしておくよ(汗)。
今日はいろいろ教えてくれてありがとう。またね!」
と爽やかな笑顔でいそいそとその場を立ち去った。
もちろんチャロンも一緒である。
今日は充実した一日だった。
チャロンと一緒に夕食を食べたらお風呂に入ってゆっくりしよう。
初めから飛ばしすぎてもよくないからね。
◆◇
別館2階に着いたらちょうど18時だったので、チャロンと一緒に食堂に入る。
今日のメインディッシュはチキンの香草焼きである。
見た目も匂いも味も良い感じである。とても美味である。
しかも今日はパンだけでなくライスもあった。
チャロン曰く、この世界にも米はあるらしい。
2日ぶりのご飯を堪能する。うん、美味しい!
チャロンもご飯は好きとのこと。
肉料理に合うらしい。
うん、その気持ちはよく分かる。
過去の召喚勇者の手荷物にたまたまいろんな植物の種が入っており、その中に種モミもあったそうだ。
そういえば僕の出身校には農業科もあったな。
きっと農業科の生徒が召喚されてこっちの世界で稲作に成功したにちがいない。
ただ残念ながら米の生産量は少なく、王都以外ではあまり流通していないらしい。
これは旅立つ前に大量に入手しておく必要があるな。
もしくは何処かの町でいい場所を見つけたら誰かに稲作を勧めてみよう。
いろんな料理のレシピとともに紹介すれば広まるかもね。
そんなことを話ながらチャロンと仲良く食事をしていたら、離れた席から視線を感じる。
どうやら高校生達がこちらというか、チャロンを見てヒソヒソしている。
「メイド」、「腕輪」、「ケモミミ」、「モゲロ」・・、等のキーワードが聞こえてくるぞ。
今のところ高校生達だけなので、彼らはまだお世話係を指名していないようだ。
もしかして羨ましがられているのだろうか?
うむ、君たちも早く指名したまえ。
日々の訓練が楽しくなるぞ!
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