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第145話 それぞれの思惑

いつもご覧いただきありがとうございます。

(タク達がイビルズゲートの街で活動を開始して数日経った頃)


「会長、商業ギルドにタク様からのお手紙が届いていました。」


  と執務室に入って来た事務員が手紙を渡してくれる。


「ああ、ありがとう。

 今日も商業ギルドへのお使いお疲れ様。」


 と声をかける。


 事務員が部屋を出ていくと、左斜め前の事務机に座る秘書兼副会長のクリスが何も言わずに立ち上がると、そっと入口のドアを閉めて一時的に立入禁止にする。


 ここはセントラル王国の王都にある「松戸屋」の会長室である。


 松戸屋はある日突然この王都で開業し、あっという間に王都でも売り上げの高い商会の仲間入りを果たしていた。


 彼らが扱う「8番格納庫(ハンガーエイト)」ブランドの衣服や道具は、それまでに無かった洗練されたデザインの良さや使い易さが受けて入荷しても飛ぶように売れてしまうため、常に入荷待ちの状況である。


 また、「8番格納庫(ハンガーエイト)」が先般実施された格闘技イベントのスポンサーとして衣服や道具の宣伝をしたことで、主に冒険者の間で人気が爆発していた。


 特に「8番格納庫(ハンガーエイト)」ブランドの各種魔道具はその便利さから人気が沸騰しており、かなり高額な価格設定にも拘らず予約が殺到している。


 噂では少なくとも半年以上は待たないといけないらしい。


 ちなみに松戸屋の飛ぶ鳥落とす勢いの成長を見た他の商会が「8番格納庫(ハンガーエイト)」ブランドの魔道具を入手しようと、卸元の情報を探ってみたものの、何も手がかりは見つかっていない・・。


 に、松戸屋が出資している「8番キッチン」という屋台が、国境に向かう冒険者や商人達に大人気らしい。


 聞くところによると、何も無い野営地で軽食や生活雑貨を提供してくれる屋台らしいのだが、食欲をそそる味と匂いで冒険者達を魅了しているらしい。


 しかも、結構な数の軽食を提供してもなかなか品切れしないのだとか。

 いったいどうやって材料を準備しているのかを質問した商人がいたらしいが、企業秘密だと言ってケンモホロロにはぐらかされたとのこと。


 とにかく、いま王都で最も勢いのある商会であることは間違い無い・・。



「ふむ、タク先輩達はイビルズゲートという街に到着したらしいよ。」


 と商会長であるケン君が秘書のクリスさんに話しかける。


「イビルズゲートですか。

 無事に辺境の街に到着されたのですね。」


「そのようだよ。

 しばらくの間その街に滞在して冒険者活動を実施するらしいよ。」


「では、タクさん達に商品の補充をお願いできますね。

 移動中と違って魔道具作りにも時間を割けるでしょうから。」


「ああ、そうだね。

 バッジの魔道具も注文が殺到しているから追加のオーダーが必要だね。

 それに、タトゥーの魔道具も追加しないと。

 タク先輩には頑張ってもらわないといけないね。」


「ではそれぞれの商品の発注数量を整理したリストを作成しておきますね。

 後で商業ギルドに行って送ります。」


「ああ、よろしく頼むよ。

 あと、これも一緒に頼むよ。」


「これは何ですか?」


「『8番キッチン』用の魔道具の発注リストさ。

 例の冒険者の女性達が予想以上に売り上げているようだからね。

 彼女達と違う街道沿いの野営地でも出店しようと思うんだよ。」


「それはいいですね。

 タクさんの魔道具があれば大量に材料を輸送できますから、他の商会では私達に太刀打ちできませんからね。」


「そのとおりさ。

 あと、これもお願いするよ。」


「これは?」


「荷物の輸送用コンテナの魔道具の発注依頼さ。

 せっかくタク先輩達が辺境にいるならちょっと商売に協力してもらおうかと思ってね。

 この王都で作った服や野営道具なんかをタク先輩に送って販売してもらえば、タク先輩たちの行く先々で『8番格納庫(ハンガーエイト)』の商品が広まって行くからね。」


「それはいいアイデアですね。早速送りましょう。

 あと、他の勇者様方への連絡はどうされますか?」


「そうだね。聖女と治癒士の2人がタク先輩たちのことを気にしていたから内緒で情報共有しておくかな。

 そろそろ彼女達もお城を出たいと考えているみたいだからね。」


「そうですね。

  もう訓練期間の1ヶ月を過ぎましたので旅に出てもおかしくはないのですが、ただ・・。」 


「ただ?」


「お城があの2人をみすみす手放すでしょうか?

 噂では彼女達をお城に留めるためにあの手この手で懐柔しようとしているらしいですよ。」


「それもそうだね。

 現に錬金術士のレン君も美人のお世話係を見つけて部屋にこもりっきりのようだし、魔法使いのマモル君は可愛い男の娘と相変わらずよろしくやっているようで、2人共お城から出るつもりはないようだしね。」


「今ではあからさまに見栄えの良い騎士を護衛に付けたりしているそうですよ。

 治療院への外出もままならないと聞いています。」


「クレア王女にも困ったもんだね。

 そんなことをすれば普通は余計に嫌になってしまうと思うんだけど。

 それだけ手放したくないということかな?」


「ですね。聖女と治癒士は貴重なスキルですから、手元に囲っておきたいのでしょう。

 特に、他国に取られるようなことは避けたいはずです。」


「そもそも僕達を召喚したのはこの世界を発展させるためであって、この国の利益にするためじゃなかったはずなんだけどね。

 これは少し彼女達のお手伝いをしてあげる必要があるかもね。

 とりあえず今日のうちに話をしてくよ。」


「承知しました。

 それでは商業ギルドに行ってタクさん達への手紙を発送してきます。」


「ああ、よろしく頼むよ。」


 と言いながら、ケン君は部屋を出て行くクリスを見送る。


「さて、そろそろ僕も動き出すことにするかな。

 クレア王女にいいように使われるのも勘弁願いたいし、それに僕自身もこの世界を楽しみたいからね。」

 とややこしい笑顔を浮かべながら独りごちるケン君であった・・。


◇◆


(クレア王女の執務室にて)

 

「それで、例のお手伝いの勇者はどうなっておるのだ。」


 とクレア王女は勇者担当の文官に問いただす。



 この部屋にいるのはクレア王女と勇者担当の男女の文官1名ずつの合計3名である。


 まあ、見た目は文官であるが、相変わらず明らかに只者ではない2人である。


 クレア王女の問いに対して男の文官が口を開く


「はっ、先般かの勇者達の説得に向かった者達ですが・・、結論から言いますと行方不明となりました。」


「何? 行方不明じゃと?

 まさか任務を放棄して暗部から逃亡したのではあるまいな?」


「いえ、暗部の者達は王家に忠誠を誓っております故、そのような事はいたしません。

 他の者達がかの勇者達の足取りを追って国境の街まで行って調査したところ、誠に言いづらいのですがとある事実がわかりまして・・」


「とある事実?」


「は、どうやら暗部の者達はかの勇者達に捕らえられ、隣国の警備隊に突き出されたようなのです。」


「な、なんじゃと!

 隣国に捕らえられては我が国の暗部であることがバレてしまうではないか!」

 

「そこはご安心ください。

 暗部の者達は仮に捕らえられて拷問を受けようとも決して口を割る事はありません。

 王家を裏切るよりも自決することを選ぶでしょう。

 現在、捕まった暗部の者達の足取りを追っておりますので、見つけ次第回収する予定です。」

 

「目処はあるのか?」


「は、物取りや盗賊としてとして捕らえられた者達の行き先は鉱山での強制労働でしょうから、隣国の鉱山に出入りする商隊を装って調査中です。」


「わかった。我が国の関与が知られる前にさっさと回収するのじゃ。

 それよりも、かのお手伝いの勇者の行き先じゃ。

 何か情報はないのか?」


「は、今のところは何も情報はありません。

 引き続き調査中です。」


「急いで行き先を調べて奴らを見張るのじゃ。

 奴のお手伝いスキルが有益であれば連れ戻して我が国に囲い込まねばならん。」


「は、承知しました。」


「うむ、下がってよいぞ。」


 と言うクレア王女に恭しく礼をすると、文官風の男女は音も無く部屋から退出する。


「あの者達はきっと何かを隠しておる。

 早く秘密を暴いて連れ戻さねば・・。

 他国に取られるどころか、元の世界にも帰すわけにはいかぬ。

 召喚勇者達にはこの国の利益のために働いてもらわねば・・。」


 とクレア王女は独りごちる。


 そんなクレア王女の黒い欲望をタク達は回避することができるのだろうか・・。


◆◇


「どうしたの、松戸君?

 話があるから仕事帰りに店に寄って欲しいって治療院に伝言が届いていたから来たんだけど。

 何かお城では話せないような話でもあったのかしら?

 まあ、最近はあまりお城にいないみたいだけど。」


 と差し出された高級そうな紅茶を一口飲んでから、聖ちゃんは対面に座るケン君に話しかける。


 聖女スキルを持つ聖ちゃんと、治癒士スキルを持つ萌ちゃんは、今週に入ってから王都の街中にある治療院で修行と称して働いている。


 訓練期間中は王城の中の治療院で訓練を兼ねて働いていたのだが、王城で働いているスタッフは基本的に健康な人が多いので、治療対象として物足りなくなってきたのだ。

 

 そのため、街の治療院でより重い病気や怪我人を相手に治療を行い治癒魔法の腕を上げているのであった。


「急に呼び出して悪かったね、神崎さんと成田さん。

 お察しのとおりお城では言いにくい話があったんでこちらにご足労願ったんだよ。

 僕も実質的には拠点をこちらに移しているから、お城に戻るのは調達部や各工房との商談の時だけなんだけどね。」


 と同じく紅茶を一口飲んだケン君がいつも通りの胡散臭い笑みを浮かべながら答える。


「で、なんの話だったの?

 もしかしてタク先輩達のこととか?」


 と聖ちゃんの横に座る萌ちゃんが小首を傾げながらケン君に尋ねる。


 癒し系の彼女のそんな仕草には大抵の男なら一撃で魅了されてしまうところであるが、そんな様子を1mmも見せないのがケン君である。

 流石は交渉人スキルの保有者である。


「流石は成田さん、察しがいいね。その通りだよ。

 タク先輩から手紙が来たのでその情報を共有しておこうと思ってね。

 2人とも随分気にしていたようだし。

 特に神崎さんがね。」


 とケン君が少しおどけるようなジェスチャーで、意地悪そうな笑みを浮かべながら聖ちゃんに話しかける。


「そ、そんなことないわよ!

 私はタク先輩だけじゃなくて、亜季達も含めて皆元気かしらって気にしていただけなんだから!

 そういう誤解を生むような表現はやめてもらえるかしら!」


 と聖ちゃんが顔を赤らめながら抗議する。


 そんな表情をしている時点で既にタク先輩への好意を隠しきれていないのだが、そこを指摘するような愚を犯さないのがケン君である。


 そんなこと全く気にしていませんよ、とばかりに姿勢を正すと、タクからの手紙の内容を2人に伝える。


「今日タク先輩から手紙が届いてね。

 タク先輩や風早さん達は、隣国の辺境にあるイビルズゲートという街に無事に到着したらしいよ。

 そこでしばらくの間、冒険者として活動するらしい。」


「え!、タク先輩達は元気に冒険者活動しているってことなの?

 みんな無事に隣国に到着したのかしら?」


 と聖ちゃんが若干食い気味にケン君に質問する。


「ああ、そのようだよ。

 しばらくはイビルズゲートの街に滞在するみたいだから、僕も追加の魔道具等を発注しようかと思ってね。

 神埼さん達もタク先輩達に連絡したいことがあるなら、商業ギルド経由で手紙を出す際に一緒に送っておくから、いつでも手紙を僕に渡してくれるといいよ。

 あ、もちろん手紙の中を覗いたりしないから安心してね。」


「そうなのね、とりあえず皆無事なようでよかったわ。

 皆に手紙を送りたいって気持ちもあるけど、それよりも・・。」


「それよりも?」


「うん、松戸君には正直に言っても大丈夫だと思うんだけど、私達もそろそろお城を出て旅に出たいと思っているのよ。

 もう訓練期間の1ヶ月を過ぎたからね。

 ただ・・。」


「ただ?」


「松戸君も気づいていると思うけど、最近やたらとお城のスタッフの関与というか監視が激しいのよ。

 今日もここに来るまでに頼んでもいないのにお城の騎士がついて来ようとしていたしね。

 松戸屋に行くだけだから大丈夫だって言ってもなかなか引き下がらなかったのよ。」


 と聖ちゃんがため息をつく。

 萌ちゃんも首を縦に振って同意を示す。


 ケン君はおもむろに立ち上がって窓から外をチラリと見渡すと、松戸屋が面している大通りに何人かの男達がウロウロしているのを確認する。

 どの男も冒険者や商人の出で立ちを装っているが、お城の騎士団のメンバーである。


「どうやらそのようだね。

 実は今日ご足労願ったのはその件もあるんだよ。

 きっとお城がタク先輩達が国外に脱出したのに気づいて、残りのメンバーの囲い込みを画策しているんだと思うよ。

 聖女と治癒士はこの世界ではレアなスキルのようだから囲い込みしたいんだろうね。

 正直に言うと、僕もクリスさんも最近は監視されている気がしているんだよね。」


「そうなのね。私達だけじゃなかったのね。

 とは言っても、私達を召喚したのはこの世界の発展に貢献させるためなんでしょう?

 それなのにこの国だけに囲いこもうなんておかしくないかしら?」


「そのとおりなんだけど、いろいろと噂を聞いているとクレア王女はなかなか欲深いみたいでね。

 大きな声じゃ言えないけど、お城の調達部や商業ギルドでもいろんな噂を聞くんだよね。

 神崎さん達の監視を強めているのも、君たちが王都からいなくなるのを防ごうとしているんだと思うよ。」


「え、じゃあ、私達は世界を巡る旅に出れないってことかしら?」


「旅に出られない訳じゃないだろうけど、護衛が必要だとか何かと理由を付けて関与してくるだろうね。

 騎士を同行させて自由に行動させないとか、他国への定住を妨害するとかするかもしれないね。

 もしかしたら元の世界に戻るのを防ぐために魔王様に会いに行くのも邪魔されるかもしれないよ。」


「ええ〜、そんなの身勝手すぎるわ!

 ただでさえ私達は一方的に召喚された被害者なのに、元の世界に戻ることまで邪魔されるなんて許せないわ。」


「僕もそう思うよ。

 そこで僕から提案なんだけど、君達は早めに王城を出るべきだと思うんだ。

 そうでないとますます監視が厳しくなって、一生この王都から出れないような気がしてね。」


「え、でもどうやって出ていけばいいのかしら・・。

 残念ながら私達は治療以外に取り柄がないし、この世界で頼れる人もいないんだけど・・。」


「それに関しては、僕にはいいアイデアがあるんだ。

 実はこの世界には国境を越えて主要な都市間を結ぶ高速乗り合い馬車という乗り物があってね。

 それに乗れば先を急ぐ冒険者や商人が短時間で他国へと移動できるんだよ。

 その馬車に上手く乗れるように手配してあげるよ。」


「え?でもこの王都から高速乗り合い馬車に乗ったらバレバレじゃないかしら?

 すぐに追いかけて来られそうなんだけど?」


「そこは安心して欲しい。

 実はタク先輩のアイデアで始めた『8番キッチン』という屋台の馬車で国境の街まで定期的に行商しているんだけど、その馬車にこっそりと乗り込んで王都を脱出すればいいよ。

 そして国境の街で高速乗合馬車に乗ってこの国を脱出すればいいさ。」


「それはこの王都を脱出するにはいいアイデアかもしれないけど・・。

 でもそこから先、何処に行けばいいかわからないわ?

 私達はこの世界に知り合いなんていないのに・・。」


 と聖ちゃんと萌ちゃんが肩を落とす・・。


「何を言っているんだい?

 僕達にはとても頼りになる人がいるじゃないか?

 君達はタク先輩達がいるイビルズゲートの街を目指せばいいのさ。

 簡単なことじゃないか。」


「ああ!そういうことね!

 でも私達の仕事の聖女や治癒士ってことがバレたらあっと言う間に足がつかいないかしら?」


「そこは安心していいよ。

 君達には『8番キッチン』の運営会社である『パイン商会』の社員の身分証を用意しておくからね。

 商業ギルドのサインのある正規品だから安心して欲しい。

 『8番キッチン』の屋台スタッフのふりをして王都を出ていけば問題ないよ。

 僕達の特徴である黒髪を隠すウイッグなら売るほどあるから、好きなのを選んでくれればいいさ。

 まあ、夜のコスプレ用のやつだけど(笑)

 ちなみにパイン商会は松戸屋が出資している会社で、タク先輩の知り合いのC級冒険者の女性が代表というか雇われ社長になっているから秘密の保持はバッチリさ。」


「すごいわ!さすがは交渉人ね!

 ところでその行商の屋台はいつ出発するのかしら?」


「急な話なんだけど、明日の朝にこの商会のバックヤードで荷物を積み込んでそのまま出発する予定なんだ。

 なので、君達は明日の朝にここに立ち寄って欲しい。

 正面玄関から入ってくれたら、奥に案内するので『8番キッチン』の制服に着替えてもらうよ。

 その後、バックヤードで屋台に馬車に隠れたらそのまま出発してもらう段取りだよ。」


「それも急な話ね!

 いつの間に手筈を整えていたのかしら?」


「ふふふ、昔から軍事と悪事は拙速を尊べ、と言うじゃないか?

 『8番キッチン』を始めた時から王都脱出用のツールとして利用することも折込済みだったのさ。

 君達もタク先輩から便利な魔道具の詰め合わせをもらっているのかな?」


「ええ、松戸君になら言っても大丈夫と思うけど、私達も収納の魔道具とかがあるから、いつでも手ぶらで脱出可能よ。」


「それは良かった。

 では、明日はいつもどおりにお城を出て、新しく注文した服の受取りとサイズ調整があると言って護衛?とうか監視の騎士を誤魔化してくれるかな?

 屋台の準備はこちらで整えておくよ。」


「ありがとう、松戸君。

 ところで松戸君はどうするの?

 ずっとこの王都に残るつもり?」


「僕かい?

 僕はもう少しこの街でビジネスの基盤を強化してから、他の街に支店を作るという名目で旅に出る予定さ。

 遠方からでも商業ギルド経由で手紙でやり取りすれば仕事はできるし、王城の工房にもこの本店経由で商品の発注はできるからね。

 王城も松戸屋との取引で利益が出ているうちは何も言わないさ。

 まあ、文句を言ってくるようなら他国に移転すればいいだけだしね。

 クリスさんもずっと一緒について行くって言ってくれているからね。」


「そうなのね。

 松戸君はちゃんとパートナーがいていいわね。

 羨ましいわ。」


「まあ、神崎さんもイビルズゲートに行けば楽しみが増えるんじゃないのかい?」


「もう!またそんな誤解を招くようなことを言う!

 私はタク先輩とはそういう関係じゃないんだから!」


「誰もタク先輩のことは一言も言っていないけどね(笑)」


「もう!松戸君のバカ!意地悪!」


「ははは(笑)

 神崎さんが自滅しただけな気がするけどね(笑)。

 まあ、それよりも今夜と明日の朝は普段通りに行動してここまで来てくれるかな?

 お城の人たちにバレないように気をつけてね。」


「そ、そうね。

 お世話になった人たちにお礼を言えないのは申し訳ないけど、無事に国外に脱出できたらお礼の手紙でも書くことにするわ。

 それはそうと、残りのメンバーはどうするの?

 我孫子と白井はそれぞれのパートナーと上手くやっているし、仕事も楽しんでいるみたいだから王城から出ていきそうにないけど。

 流山と一宮のバカ2人はこのままだと王城を追い出されるんじゃないのかしら?

 何も役に立っていないみたいだし。」


「そうなんだよね、ダイ君とゴウ君の2人には困ったもんだけど。

 いざとなったら僕が一緒に連れて行こうと思っているんだよ。

 やっかい払いの名目で僕の旅立ち許可が得やすくなるんじゃないかと思ってね。

 まあ、連れ出した後の行動は彼らに任せるつもりだよ。

 2人共この世界では立派な成人だからね。」


「そうよね。

 確かに目眩ましくらいしか利用価値がないかも。」


「私も同意するわ。」


 と首を縦に降る聖ちゃんと萌ちゃんであった。


 その後、ケン君と明朝のスケジュールを再度確認しあった聖ちゃんと萌ちゃんは、何もなかったようなふりを装いつつ、王城へ戻っていくのであった。


 どうやら王都に残った召喚勇者達もそれぞれ動き始めたようである。


 彼らの今後の運命や如何に?


最後までご覧いただきありがとうございました。

感想などいただけると励みになります。

引き続き応援よろしくお願いいたします。

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