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第133話 いよいよ辺境に到着

長期出張等が重なって、長らく更新ができずにすみませんでした。

ようやく落ち着いてきましたので、更新を再開します。

引き続き拙作を楽しんでいただけると幸いです。


 おはようございます。


 今日は異世界に来て何日目の朝でしょうか?


 ちょうど1ヶ月を過ぎた頃かな?


 もうすっかりこの世界での暮らしに馴染んでしまったけど、まだ1ヶ月しか経っていないんだね(汗)

 なんだかんだ言っても人間は環境に慣れる生き物なんだね。

 さあ、今日も頑張ろう!


 僕はいつの間にか人の形に戻ってすやすやと寝ているヤトノの綺麗な髪を一撫ですると、戦闘服に着替えて支度をする。


「うーん、ムニャムニャ。

 おはようございます。ご主人様。ムニャ」


 とヤトノが寝ぼけ眼で起きてくる。


「おはよう、ヤトノ。

 ゆっくり寝れたかい?」


「はい、ご主人様!

 ご主人様こそしっかりと休めましたか?

 昨夜は魔力をたくさん使われたので心配です。」


「うーん、そうだね。

 なんとか回復したって感じかな?

 まあ今日一日過ごせば今夜はグランデルの街の宿で一泊だからね。

 今日を乗り切れば大丈夫さ。」


「ふふふ、そうでしたね。

 じゃあ、今夜はたくさん可愛がってもらえるということで楽しみにしておきますね!」


 とヤトノが細長い瞳孔の瞳をキラキラさせながら怪しくニヤリと笑う。


「そ、そうだね(汗)

 僕も楽しみだよ(汗)」


 と、朝から煽ってくるヤトノをいなしながら2人でテントから出ていくと、チャロンとクク・ルルの2人が既に朝食の準備を終えていた。


 うーん、パンとスープの匂いが食欲を刺激するぞ!


「おはよう、チャロンにククとルル。見張りの間は何も無かったかい?」


「はい、タクさん。何も無く平和でしたよ。

 たまに動物か魔物の気配がしてクロロちゃんが反応していましたが、すぐに気配が消えたのか特に動きは有りませんでしたよ!」


「そ、そうなんだね。

 3人とも見張りお疲れ様。

 クロロもありがとう。」


 と言って、定位置のとまり木にいるクロロに話しかけながら優しく頭を一撫でする。


 きっとクロロとバイパー分隊に情報共有して対応したに違いない。


 最近はバイパー達は僕からの指示だけではなく、獣魔達とも情報共有しながら行動しているようだ。


 どういう理屈かわからないが、獣魔たちとも念話で意思疎通できるらしく、夜間はクロロが感知した敵性の魔物や動物の情報をバイパー分隊に教えて、それを元にバイパー分隊が処分している。


 たまに感じる動物や魔物の気配がすぐに消えてしまう理由はこういうことらしい。

 

 まさに影の軍団、隠密同心と言ったところであろうか。

 

 てゆうか、絶対にバイパー達には変な何かが乗り移っているよね?


「「「おはようございます!」」」

「「おはようございます。皆さん。」」


 と、元気に挨拶しながら楓ちゃん、アカネちゃん、亜季ちゃんの女子チームとクラリスさん達が起きて来たところで、朝食を開始する。


 ここ数日の野営ですっかりと慣れてしまったが、相変わらずうちのパーティーの朝食は美味い!


 いい感じのとろとろ具合に焼かれた目玉焼きとベーコンを野菜と一緒に焼き立てのパンに挟んでケチャップとマスタードをかけて食べればそれだけでごちそうである。


「うーん、今日もご飯が美味しいね!」


「そうですね、タクさん。

 こんな快適な野営を知ってしまったら、もう元の旅暮らしには戻れませんわ。

 かくなるうえは責任を取っていただかないと。」


「ああ、おいたわしや。お嬢さ・・、ではなくクラリス。

 私も共についていきます。

 決してあなた1人だけを死地に送るようなことはしませんわ!」


 と何故かまた小芝居を始めてしまう2人であった。


 決して死ぬようなことはしないので安心して欲しいぞ(汗)。


◇◆


 そんなこんなでいつもの朝を過ごした僕達は、グランデルの街に向けて出発する。


 クラリスさんの話を聞いて警戒レベルを上げているが、街に向かう馬車の数が多いおかげで盗賊に襲われるリスクは低そうである。


 獣魔達による警戒態勢もバッチリだしね。


「この調子で行けばグランデルの街には無事に到着できそうだね。」


 とチャロンに話しかける。


「ですね! これだけの馬車が行き来していれば襲いかかってくる盗賊はいないでしょう。」


「まあ、問題はグランド辺境伯の領地に入ってからかな?」


「ですね。「東の森林地帯」に向かうは道は盗賊や魔物が隠れる森林も多いみたいですからね。」


「うーん、やはりあの魔道具を作るしかないかな?」


「あのって何ですか?」


「うん、ちょっと前にカエデちゃんからアイデアをもらった事があるんだよ。

 僕の持っている地図作成スキルを使って魔道具の板の上に地図を表示して、その上に獣魔達が発見した敵の位置を重ねて表示する感じかな。」


「すごい!そんな事ができるんですか!?」


「元の世界では同じような道具が軍隊用に開発されて使用されていたんだよ。

 その機能を1部使って作られた民生品の道具もあったのさ。

 地図の道具として個人が持っている携帯電話っていう道具や車という乗物に搭載したりしていたんだよ。」


「へえー、すごいですね!

 魔法みたい、というか魔法よりすごいですね!」


「まあ、元の世界では魔法がない代わりに科学技術が発展していたからね。

 元の世界の道具のイメージのおかげで僕も魔道具を作れているんだよ。」


「そうなんですね。

 ではその地図の魔道具もすぐに作るのですか?」


「そうだね。昨日の夜にヤトノに魔道具作りのヒントをもらったおかげで、今まで作れなかった複雑な魔道具を作れる可能性が出てきたからね。

 今夜にでも試してみるよ。」


「わかりました!

 私もお手伝いしますね!」


「ああ、よろしく頼むよ。」


 と、チャロンと魔道具談義をしている間も馬車の列は何事もなく進んで行く。


 途中でいつも通りに昼食を食べたり、狩りをしたりしているうちに街の外壁が見えてきた。


「おお! あれがグランデルの街かな?」


「どうやらそれっぽいですね。

 結構大きな街ですね、タクさん。」


「うん、流石は辺境の領都って感じかな?」


 とチャロンと会話しながら、街に入る検問所に向かう馬車の車列に加わる。


 このグランデルの街もサゲオの街と同じく街の外側に検問所が設置されており、そこで積荷のチェックを受けるようだ。


 5つある検問所では商隊や乗り合い馬車が次々と警備隊のチェックを受けているが、馬車の数の多さになかなか前に進めない。


 状況確認のために検問所付近にスノーを行かせて「感覚共有」で視界を共有してみると、乗り合い馬車に詰め込まれた冒険者達が苦悶の表情を浮かべていた。


 馬車の中には息苦しさに耐えきれずに「もうここで降ろして〜!」と叫んでいる女性冒険者の姿もあった。


 うーん、見るからに大変そうだ(汗)


「検問所は大変なことになってるね(汗)」


「ですね(汗)

 私達は自前の馬車があって良かったです(汗)」


「本当にそうだよね(汗)

 クラリスさん達が僕達にお願いしてきた理由がよく分かるよ。」


 などと雑談していながら待っていると30分ほど経過してようやく僕達の順番が回ってきた。


 僕達は冒険者カードを見せながら


「ご苦労さまです。確認お願いします。」


 と警備隊員に話しかける。


「ああ、あんたらは冒険者か?

 自前の馬車持ちとは景気がいいな。後ろの馬車も一緒の仲間なのか?

 皆で同じ服を着ているようだが?」


「はい、そうですよ。同じパーティーメンバーとその同行者です。」


「どこまで行くんだい?」


「はい、「東の森林地帯」との境界の街まで行く予定です。」


「ああ、魔物を狩って一山当てようって魂胆だな。

 最近はイビルズゲートの街に向かう道中はいろいろと物騒だから気をつけてな。」


「イビルズゲート?」


「ああ、もしかして外国から初めて来たのか?

 「東の森林地帯」との境目の街の名前だよ。

 一応街の名前があるんだが、外国からだと遠すぎて辺境地帯で一括りにされてしまっているのさ。」


「ああ、そういうことですね。

 教えて頂いてありがとうございます。

 ところでいい宿はご存知ないですか?ずっと野営しながら来たので今夜はゆっくり休みたいんですよね。」


「それならメイン通りの1本西側の通りにある「白銀亭」がおすすめだぞ。

 ちょっとお高いが馬車も置けるし、食事も美味い。

 辺境に出入りする大手の商会の御用達の宿だ。

 丸い銀色の看板が目印だぞ。」


「いい情報をありがとうございます。その宿に行ってみますよ。」


「ああ、ゆっくり休んでくれ。

 問題なさそうだから通っていいぞ。」


と、馬車の荷台をチェックしていた別の警備隊員の合図を見てから僕達に検問所通過の許可を出す。


「ありがとうございました。」


 とお礼を述べて検問所を通り過ぎると、グランデルの街に入る外門に向かって馬車を進める。


 さあ、辺境伯の領地ってどんなところかな?

 楽しみだね!


◇◆


 外門を通り過ぎてグランデルの街の中に入ると、大きな荷捌き場が広がっており、その奥に街のメイン通りが見える。


「この街もサゲオの街と同じだね。この街も例の物流勇者の影響を受けているようだね。」


「ですね、タクさん。

 でもこの街の荷捌き場のほうが大きいですね。」


「うん、田舎だから土地も広いし、きっとサゲオの街よりもあとから開発されたから大きめに設計したんじゃないかな?

 ぱっと見た感じ馬車も多いしね。」


「ですね。サゲオの街より賑わっている気がします。」


 と言いながらチャロンが見つめる視線の先では商隊の馬車からせっせと荷物を下ろす荷役作業員達が忙しく動き回っている。


 そんな喧騒を見ながら僕は仲間達に念話で話しかける。


『みんな、まずはさっきの検問所で紹介してもらった「白銀亭」という宿に行こうと思うけどいいかな?』


『了解です。』

『馬車を置いてから冒険者ギルドに行ったり買い出ししたりしましょう!』


 等々、OKの返事が返ってくる。


『じゃあ決まりだね。後ろの馬車はついてきてね。』


 と声をかけると宿に向かって馬車を進める。


「メイン通りの1本西側で、丸い銀色の看板が目印だって言ってたよね・・、あ、あった、あれだ!」


「うわあ、なんか立派な宿ですねえ~。」


 とチャロンが宿を見上げて驚いている。


 立派な門構えのその宿は、5階建ての大きな建物である。


 この世界にしてはなかなかの建物だ。


 僕達の馬車が近づいて来る音に反応したのか、門の中から番頭さんらしき男の人がするりと出て来る。


「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」


「ええ、合計10人と馬車2台ですが部屋は取れますか?」


「ええ、もちろん。受付にご案内しますのでこちらにどうぞ。

 馬車は当方で所定の位置に停めておきますのでお任せください。」


「ありがとうございます。

 サービスが行き届いていて助かります。」


「いえいえ、私どもの仕事ですのでお気になさらず。

 皆様は冒険者パーティーですか?」


「ええ、今は3つのパーティーで一緒に「東の森林地帯」との境界の街に向かう途中なのですよ。」


「ああ、皆様もイビルズゲートの街に向かわれるのですね。」


「皆様も、ということはその街に向かう人が多いのですか?」


「ええ、最近はいろんな素材の需要が多いようで、素材採集に向かう冒険者の皆さんが多いのですよ。ただ・・」


「ただ?」


「ええ、素材の価値が高まっている分だけ、それらを狙う盗賊が増えているようでして。

 被害の報告もチラホラと聞こえてきています。皆様もお気をつけください。」


「そ、そうなんですね(汗)

 気をつけます。

 情報ありがとうございます。」


 と会話しながらフロントに到着した僕達は、案内されるがままに受付を済ませる。


 宿代は朝食付きで銀貨7枚と少々高めではあるが、部屋も広くてお風呂付きで快適だったので良しとしよう。


 久しぶりの宿での宿泊だから、ゆっくりリラックスしたいしね!



「まずはいつもどおり冒険者ギルドで情報収集かな?

 獲物の売り払いもあるしね。

 みんなも行くかい?」


「もちろんです、タクさん。」


「私達も行きますよ。」


 とチャロンと亜季ちゃんが間髪入れずに答える。


 その他のメンバーもウンウンと頷いている。

 どうやら皆もそのつもりのようだ。


「じゃあ、早速行ってみよう。

 辺境伯の領都の冒険者ギルドだから、きっと大きいんだろうね。」


「ですね! 楽しみですねご主人様!」


 とはしゃぐヤトノの頭を優しく撫でると、皆で宿を出て冒険者ギルドに向かう。


 さあ、辺境の領都のギルドはどんなところかな?


 何もトラブルがないといいけどね(汗)


◇◆


 宿屋がある通りから1本隣のメイン通りに出ると、すぐに冒険者ギルドの看板を見つける事ができた。


 ちなみに商業ギルドは道を挟んで向かい側にあった。


 この世界ではどこの街に行っても各種ギルドはすぐに見つける事ができる。


 きっと重要な社会インフラの1つなんだろうね。


「この街の冒険者ギルドはずいぶんと立派だね〜。」


 と言いながら皆で冒険者ギルドの建物を見上げる。


 3階建ての立派な高さなのだが、それに負けず劣らず横にも大きい。

 元の世界の用語で言えば、建築面積が大きいって言うのかな?


 ギルドの建物の大きさに感心していると


「きっとギルドの中には冒険者がたくさんいて、私達に絡んで来たりするんですよ!」


 と楓ちゃんが突如ぶっ込んで来る!


 しまった! 無事に街に入ったと思って油断してしまった!

 まさかよりによってギルドの前でぶっ込んで来るとは!

 辺境だけに荒くれ者の冒険者がたくさんいるかもしれないというのに!


「ちょ、ちょっと、楓ちゃん!

 だめだよそんなことを言っちゃ!」


「そ、そうよ、楓!

 ただでさえ荒くれ者の冒険者が多いかもしれないというのに!」


 と亜季ちゃんもドン引きである。


「そんなに心配しなくてもいいわよ!

 さあ、早く中に入りましょう!

 久しぶりの大きな街のギルドは楽しみだわ!」

 

 と楓ちゃんが中に飛び込んで行く。


 僕たちも後を追うようにギルドの中に入ると、大きなロビーエリアはたくさんの冒険者達で賑わっていた。

 

 どうやら皆ひと仕事終えてギルドにやってきたタイミングだったらしい。


 依頼の成功報酬や素材の買い取り金を手にしたのか、みなホクホク顔だ。

 

 暖かくなった懐具合の勢いのまま飲みに行く話で盛り上がっている。


 一方で、明日以降の仕事をチェックしているのか、真剣な顔で依頼の情報が貼り付けられたボードを覗き込む冒険者達も多い。


 幸いにもロビーにいる冒険者達はそれぞれの行動に夢中で、僕たちのことは気にしていないようだ。


 どうやら今回は楓ちゃんのフラグ攻撃の影響を受けなくて済みそうだぞ(汗)


「じゃあみんな、手早く用事を済ませようか?

 まずはいつもどおりに売払い手続きをした後に、依頼ボードで情報収集かな?」


「ですね、タクさん。

 明日からの行動に向けて情報収集は重要です!」


「その後は食料や日用品の調達もしないといけませんね。

 ここまでの行動でかなり消費しましたからね。」


 と言うチャロンと亜季ちゃんの言葉に皆で同意すると、まずは淡々と獲物の売払いに着手する。

 

 初めて訪れる冒険者ギルドあるあるで、僕のアイテムボックスの容量の大きさに驚かれはしたが、特に騒がれることなく手続きを終えることができた。


 流石は大きな街の冒険者ギルドである。

 個人情報の管理が行き届いているね。


「次は情報収集だね。」


「そうですね。

 依頼ボードを見てみましょう。

 うーん、やはり護衛の依頼が多いですね〜。」


「やはりこれからの道中は危険度が上るようですね。」


 と、チャロンと亜季ちゃんと話していると、


「タク先輩、こっちのボードに注意情報が書かれてますよ。」


 とアカネちゃんが声をかけてくる。


「どうやらイビルズゲートの街に向かう道中で大型の魔物や盗賊が発生しているようですよ。」


 と先に注意情報を見ていたアカネちゃんが内容を要約して教えてくれる。


「どうやらそのようだね。

 やはり戦闘力をあげる必要があるね・・。」


「戦闘力の向上ですか?」


「ああ、実はもう内緒で準備しているものがあるんだよ。

 今夜にでも説明するから楽しみに待っててね。」


「え、そうなんですね!

 楽しみにしていますね!」


 とウキウキするアカネちゃんをいなしながら依頼ボードを確認すると、確かに護衛依頼がたくさんある。


 イビルズゲートに向かう道中が危険なのはどうやら本当のようだ。


「お!、そこのお兄さん、護衛依頼を受けるのかい?」


 と後ろから声をかけられる。


 振り返ると男の冒険者が僕達に話しかけてきていた。


 ふむ、一見すると見た目は冒険者だが、ちょっと怪しいというか、冒険者らしさがないというか、ギルド内にいる歴戦の強者のような凄みを感じないな。


 こいつはちょっと胡散臭いな。

 まともに相手をするのは止めておいたほうがよさそうだ。


「いえ、護衛はあまり得意じゃないので、狩猟や薬草採取のいい依頼がないかと思いまして。」


「そうかい。今は狩猟や薬草の採取よりも護衛のほうが儲かるぞ。

 なんといってもイビルズゲートに向かう商人が多いからな。

 それに狩猟ならこの領都周辺よりも「東の森林地帯」の傍にあるイビルズゲートの街のほうが稼げるからな。

 一山当てたいならイビルズゲート行きをお勧めするぜ。

 そのほうがそちらのお仲間のお姉さん方にも喜ばれるってもんだぞ。」


「そうなんですね。参考にさせていただきますよ。

 まあ、僕たちは一山当てるよりも程々に稼げればいいので、この辺境の街に慣れるまではボチボチと活動しますよ。」


「ふん、若いのに堅実だな。

 だが冒険者には勢いも必要だぜ。

 まあ、頑張りな。」


 と言いながらフンッと鼻を鳴らすと男は立ち去っていった。


 胡散臭い男が立ち去り、僕たちから十分に距離が離れたのを確認すると、僕は傍にいたチャロン達に話しかける。


「ちょっと怪しい奴だったね。」


「そうですね。辺境でバリバリ稼いでいる冒険者という感じではなかったですね。タクさん。」


 とチャロンも同意する。


「もしかしたら若い駆け出しの冒険者を食い物にしているような悪いやつらかもしれないね。

 後をつけられたりしないように十分に気をつけよう。」


「ですね。おまかせください、タク先輩。

 何か仕掛けてくるようなら遠慮なく煉獄してあげますから。」


 と、亜希ちゃんが笑顔で弓を引くジェスチャーを見せる。


 うん、全く目が笑ってないから本気で煉獄する気だよね(汗)


「ま、まあ、イビルズゲートの街に向かう道中には盗賊も多いって言うから十分に警戒していこうね(汗)」


「おまかせください、タクさん!」


「頼りにしているよ、チャロン。

 それじゃあ、情報収集うも終わったから買出しでもしながら宿に帰るかな。」


「そうですね!。

 お腹も空きましたし明日からの食料を買いながら帰りましょう!、タク先輩!」


「ですね!辺境には衣料品や雑貨が少ないかもしれないからたくさん買っておかないとですね!」


 と、女子高生達も大賛成のようである。


 皆の同意も得たので、用は済んだとばかりに目立たぬようにギルドを後にする。


 さあ、買い出しの荷物運びをがんばりますかね(汗)


◆◇


(タクに話しかけた胡散臭い男の心の声)


 いいカモがいないかとギルドにやって来る冒険者達を見渡していたら、揃いの変な服を着た若い男女の集団が入ってきやがった。


 まだガキのくせに辺境までやって来るなんて、もしかして見た目によらずできる奴らなのかと思って探りを入れてみたが、狩猟か薬草採取がしたいときたもんだ。

 しかもイビルズゲートにも行くつもりも無いらしい。


 若いのに威勢の無い奴だ。呆れたもんだぜ! 


 まあ、俺等の商売にとっちゃあ都合はいいけどな。

 男はなよなよしてるし、ちょっと脅して痛めつけてやれば泣いて命乞いするだろう。


 それにあの男が連れている女は売り飛ばせば金になりそうだ。

 いつもみたいに売り飛ばす前にはしっかりと味見させてもらうがな!


 隠れ家に戻ったら頭と兄貴達に報告しておこう。


 辺境の森の中では薬草採取の若い冒険者が姿を消すなんて日常茶飯事なのさ。

 

 何と言っても森の中は魔物がいっぱいだからな!

 

◆◇


 チャロンと女子高生チームにクク・ルルを加えた女子チームの爆買いにいつもどおり付き合ってからようやく宿に戻って来た。

 相当な出費だったが、皆の健康維持はパーティーリーダーの役目だから仕方ないかな(汗)


 それにイビルズゲートの街ではお金があっても必要な物資が手に入らない可能性もあるからね。


 宿に戻ってクラリスさんとミリアさんと合流した僕たちは、宿の食堂で夕食をいただく。


 クラリスさんとミリアさんは別行動だったが、薬師の店に行ってポーションの情報などを仕入れて来たとのこと。

 さすがは薬師、薬関係の情報収集には余念がない。

 

 イビルズゲートの街では怪我の治療に必要なポーションが不足しているそうだ。

 街に着いたらポーションを作って冒険者ギルドに卸せばいい稼ぎになるらしい。


「辺境でポーションを作って高く売れば生活費くらいは楽に稼げますわ!」


 とクラリスさんは貴族らしからぬ悪い笑顔でほくそ笑んでいた。

 やはり貴族と言えども先立つものが必要なのは同じらしい(汗) 


 僕も魔道具作りは目立つからポーションを作って販売するのもいいかもね。

 どんな薬草が採取できるかにもよるけれど。

 今は下級ポーションしか作れないけれど、それなりに需要はあるかもしれないしね。


 夕食は街の食事処で食べても良かったのだが、荒くれ冒険者達に絡まれるのも面倒だし、疲れも溜まっているから早く休みたいしね。

 この街の名物はまたの機会に楽しむこととしよう。


 ちなみに宿の食事はこちらの世界ではよくある山賊猪のステーキだったが、厚切りかつジューシーで、塩コショウとガーリックやハーブのよく効いたパンチのある味付けで、空腹な女子チームにはストライクだったらしく、皆モリモリと食べていた。


 女子チームも従魔達もステーキのおかわりをして食べまくったのは言うまでもない。

 おかげで更に出費がかさんでしまったよ(汗)


◇◆


「ふう、お腹いっぱいになったね。

 なかなか美味しいステーキだったね。

 材料も手に入れやすいものばかりだったから、野営の時にでも作ってみよう。」


「いいですね。是非お願いします。

 肉は大好物ですから。

 ところでタク先輩、私達を部屋に集めたのはもしかしてステーキだけでは飽き足らず、私達も食べてしまおうというつもりじゃないでしょうね?

 まあ、タク先輩がどうしてもとおっしゃるなら覚悟を決めますが、できれば2人きりでお願いしたいのですが・・。

 初めての夜くらいは2人きりで過ごしたいです・・。

 それがダメならせめて明かりは消して欲しいのですが・・。」


 と、亜希ちゃんが赤くなった顔を横に向けながら話し掛けてくる。

 何故か最後のほうは消え入りそうな声になっているのは気の所為だろうか?

 何か盛大に勘違いをしているような気がするけど、そんな予定は全くないよ!


「いや、そんなつもりは全くないから(汗)

 皆に集まってもらったのは、新しく作った武器を配布するためだからね。」


 と、亜希ちゃんの言葉を全否定しつつ、僕の部屋に集まってもらった女子高生チームとクク・ルルに説明する。


「それならそれで最初からそう言ってください。

 『話があるから部屋に来てくれ。』って念話が入ったらそういうことかと思っちゃうじゃないですか!」


 と、何故か亜希ちゃんに怒られる。

 一言もそんなことはそんなことは言っていないのに!

 げ、解せぬ!


「ぼ、僕が悪かったよ(汗)

 説明が足りなくてごめんね(汗)

 実は明日からの行動に備えて新しい武器を用意したので、今から皆に配布するよ。」


 と言いながら、アイテムボックスから昨夜作成したアサルトライフルを取り出してベッドの上に並べる。


「これが新しい魔道具のアサルトライフルだよ。

 亜希ちゃん達はわかると思うけど、ショットガンの魔道具よりも連射が可能で、対人戦に重きを置いた武器なんだ。

 これで明日からのイビルズゲートへ向かう道中で盗賊が出てきても十分に対処できると思う。

 皆に1丁づつ配布するので、いざと言うときは躊躇わずに使用して欲しい。」


 と言って、皆に1丁ずつ手渡しながらスペックについて説明し、その後基本的な使用方法をレクチャーする。


「ふふふ、これさえあれば盗賊など恐るるに足りずですね。

 私が一瞬で煉獄してあげますよ。」


 と、亜希ちゃんが口角を上げながら笑みを浮かべている。 

 あ、これはもう完全にスイッチが入ってますね(汗)


「ま、まあ、ショットガンの魔道具よりかなり強力だから使用には注意してね(汗)

 ただ、身に危険が迫った時は躊躇なく使用していいよ。

 自分と仲間を守るためのものだからね。」


「わかりました。全ては私にお任せください。

 私達に手を出してきたことを後悔させてあげましょう・・。」


 と、アサルトライフルをウットリと眺めながら亜希ちゃんが恍惚の表情で呟く。

 

 もしかして亜希ちゃんには渡してはいけなかったのかも(汗)


◆◇


「ふう、ようやく長い1日が終わったね・・。」


 と、チャロンとヤトノ相手に呟く・・。


 アサルトライフルを皆に配布した後に、亜希ちゃんを中心に武器談義が始まってしまい大盛りあがりだったのだ。


 特にクク・ルルがアサルトライフルの造形美に魅入られてしまい、その性能について色々と説明を求められて大変だった(汗)

 

 あの2人は意外にミリオタの素質がありそうだ(汗)


「ですね(汗)。

 でも皆さんがアサルトライフルの使用方法も理解できたみたいですし、明日からの行動も心配がなくなりましたね、タクさん。」


「そうですよ、ご主人様。

 あの魔道具があれば盗賊や魔物なんて一瞬で返り討ちですね!」


「まあ、そのために作ったからね。

 皆の安全が確保できれば言うことはないさ。」


「ですね!じゃあ後は明日に備えてゆっくり休むだけですね・・。」


「ああ、でもその前に、チャロンとヤトノにたっぷりとご奉仕して欲しいな。

 野営が続いていたからゆっくりできなかったしね。」


「はい・・。頑張っていつも以上にご奉仕しますね・・。

 でも、ご褒美に私も可愛がって欲しいです・・。」


「ご主人様!私もご奉仕頑張りますよ!

 私も可愛がってくださいね!」


 というやり取りをしたら、あとはいつも通りに、いや、いつも以上にお風呂とベッドで盛り上がってから燃えつきた僕たちは、全てを出し切って泥のようにベッドで眠りにつくのでした・・。


 ああ、おやすみなさい、異世界・・。

最後までご覧いただきありがとうございました。

感想などいただけると幸いです。

引き続きよろしくお願いいたします。

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