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第127話 新たなトラブル?

いつもご覧頂きありがとうございます。

PVが250,000を超えました。

たくさんの方に拙作を読んで頂き感謝の気持ちでいっぱいです。

ようやく我に帰ったクク・ルルに、ヤトノのことを説明する。


「まあ、そういう経緯でヤトノは僕達と一緒にいるんだよ。

 種族の特性上、ヤトノは自由にヘビの姿になったり人の姿になったりできるので、状況に応じて変化してもらっているんだ。」


「ふふふ、そうなんです!

 ある時はヘビの姿でご主人様の従魔として魔物の討伐を、またある時は美少女商会長として活躍していますよ!

 そして夜はご主人様のお世話係り恋人としてチャロンお姉さんと一緒にご主人さまにご奉仕しているのです!

 ご主人様と毎日あんなことやこんなことまでしているのですよ!」


 と、ヤトノがノリノリで説明する。


 おっと、亜季ちゃんから冷気が漂ってきているのは気のせいですか?

 場の空気が凍りつきそうだからちょっと温度を上げていただいてもよろしいですかね(汗)


「わ、わかりました(汗)

 まさかヘビと人型の両方に自由に変身できるなんて驚きです(汗)。

 じゃあ、昨日の男達を制圧したのも実はヤトノさんだったのですか?」


 とククが聞いてくる。


「私達もそれを知りたいですよ、タク先輩。

 昨夜は確か何か新しいスキルか道具を使ったと仰ってましたよね?」


 と亜季ちゃんも被せてくる。


「うん実はだね、ここだけの話で秘密にしておいて欲しいんだけど、ヤトノに教えてもらってゴーレムを作ったんだよ。

 このバイパー達が昨日の男達を制圧してくれたのさ。」


 と言いながら、アイテムボックスからバイパー分隊を取り出して床の上に並べる。


「ゴ、ゴーレムですか!?

 ゴーレムを作ることができるなんて物語でしか聞いたことがないですよ!」


 と、クク・ルルが驚きの声をあげる。


「うーん、詳しいことは言いづらいんだけど、ヤトノはその道に詳しいんだよ。

 ヤトノに教えてもらってヘビ型ゴーレムを作ったんだ。

 しかも僕の付与魔法で麻痺魔法を付与してあるんだ。

 ちなみにこの3匹はそれぞれ僕、チャロン、ヤトノの持ち物なんだけど、僕のバイパー1がリーダーとしてバイパー分隊を指揮するように設定していてね、昨夜の攻撃は僕がバイパー分隊に念話で命令して実行させたんだ。」


「すごいです、タク先輩!

 テイマーとしてはゴーレムの操作にすっごく興味がありますよ!

 ちょっと動かしてみてください!」


 と楓ちゃんがお願いしてきたので、


「ああ、もちろんだとも。

 ちょっとやってみるね。」


 と答えながら、バイパー分隊に号令をかけて基本の動作と攻撃の戦術動作を実演させる。


 バイパー分隊の生きているヘビのような動きと統制された集団行動を見た女子高生とクク・ルル達は、


「「「おお〜!」」」

「「まるで生きてるみたいです!」」


 と感嘆の声を上げて大喜びである。


 特にバイパー分隊に「★ェットストリームアタック」を実演させたら、亜季ちゃんが


「●い三連星!」


 と叫んで大興奮していた(笑)


 ああ、亜季ちゃん、やっぱり君はそっちの住人なんだね!

 


 ひとしきりバイパー達の動きを披露した後で、


「これからも野営の際はこんな感じでバイパー分隊にキャンプを警戒させるから安心してくれていいよ。

 皆にもアイデアを貰いながらいろいろなゴーレムを作ろうと思っているんだ。

 ただ、ゴーレムを作るには大きな魔力源が必要みたいだから、小動物や鳥のゴーレムが主になると思うけどね。」


 と解説する。


 すると、


「すごいです!、私にも何かゴーレムを作ってください!

 テイマー使い兼ゴーレム使いになりたいです!」


 と楓ちゃんが食いついてくる。


「もちろんいいよ。

 テイマー使い兼ゴーレム使いなんてかっこいい響きだね。

 どんなゴーレムがいいか考えておいてくれるかな?」


「はい!考えておきますね!」


 と楓ちゃんのテンションが上がりまくりである。

 やはり動物系の話題は大好きらしい。


「ヤトノとゴーレムの話はこれでいいとして、明日からの行動について話し合おう。

 無事に国境を越えたから、明日からはこの世界の旅をもっと自由に楽しみたいんだよね。」


「はい、私もそう思います。

 タク先輩は何かアイデアをお持ちなのですか?」


 と亜季ちゃんが聞いてくる。


「そうだね。

 馬車も手に入ったので、自由に旅をしながらこの国の辺境とやらに行ってみたいと思うんだ。

 昼に警備隊の事務所で聞いたところによると、辺境は「東の森林地帯」との境界で強い魔物が出るんだけど、その分素材の価値も高いらしいよ。

 僕達のレベル上げと路銀の確保も兼ねて辺境を目指すのはどうかな?」


 と提案する。


「辺境で魔物退治ですか。

 いかにも異世界って感じの展開でいいですね。

 それに強い魔物と対決できるなんて、煉獄の弓術士としては腕が鳴りますね、ふふふ・・


 と、亜季ちゃんもまんざらではなさそうだ。

 若干、アンゴルモアゾーンに入ってしまっているようだが(汗)


「護衛の仕事はどうするのですか?

 護衛の報酬には馬車の維持費は含まれていないので、冒険者としての収入が減ってしまいますよ?」


 と、ククが聞いてくる。


「護衛の仕事は旅のついでの仕事としてはお金も稼げていいんだけど、依頼主の都合に行動を合わせないといけないから行動の自由が制限されるのが欠点なんだよね。

 今までの依頼主はいい人達だったけど、今後も同じとは限らないからね。

 それにこんな事を言うとアレだけど、護衛の収入より狩猟や採取の収入のほうが実入りがいいしね。

 僕達にはアイテムボックスがあるから、自由に行動しながら狩りや採取をして行く先々の街で売ったほうが、下手に護衛の仕事を受けるより収入は高くなると思うよ。」


「ですね!それにまたトミーみたいな冒険者と組むことになったら面倒ですから。」


 とチャロンも賛成してくれる。

 

 うん、確かにまたトミーみたいな奴と組むのは嫌だよね(汗)



「じゃあ、今後の方針はそんな感じでいいかな?

 明日は休みと買い出しにあてて、明後日の朝から辺境に向けて旅立とう!」


「「「「「はい!」」」」」、「「わかりました!」」


 と女子チームが答えるのを確認して、チームの打ち合わせを終了

しようとした時に、


「ところでタク先輩、先ほどヤトノちゃんが言ってた件ですが。

 毎日あんなことやこんなことをさせているそうですが、まさか野営中はさせていないですよね?」


 と亜季ちゃんが冷淡に聞いてくる(汗)


 おっと、そこはスルーして欲しいところだぞ(汗)


「あ、それは、もちろん・・、」


「もちろん、何ですか?

 まさかとは思いますが、イロイロしたりさせたりとかはないですよね?

 危険な魔物や盗賊が出るかもしれない野営中に?」


「も、もちろん、・・(汗)」


 と思わず言いよどんだところで、


「もちろん野営中でもバッチリご奉仕してますよ!

 ご主人様のご主人様は何時でも何処でも元気ですし、水陸両用ですからね!

 野営中でもお風呂の中でもテントの中でも元気に暴れまわってますよ、キャッ! 」


 とヤトノが空気を読まずにぶっ込んでくる!


 ああ、亜季ちゃんの顔がみるみる間に能面のようになってしまったよ(汗)


「タク先輩、少しOHANASHIが必要なようですね?

 流石に野営中にご奉仕させるのはどうかと思いますよ。」


 と亜季ちゃんが冷たい眼で問い詰めてくる(汗)。


「まあまあ、いいじゃない、亜季。

 タク先輩は日中はずっと皆のために気を張っているんだからお風呂の時くらい休憩が必要だよ!」


「そうそう、タク先輩は大人なんだから恋人とエッチな事をしても問題ないでしょ。

 私だってタク先輩に可愛がって欲しいわよ(笑)」


 と何故か楓ちゃんとアカネちゃんがフォローしてくれる。

 

 ただフォローはいいのだが、何気にアカネちゃんが燃料を投下してくるのはどうしてだろう?


 これ以上亜季ちゃんを煽るのはやめて欲しいぞ(汗)



 それを聞いた亜季ちゃんは、


「ちょ、ちょっと何を言ってるのよ、あなた達!

 それにアカネだけ抜け駆けは許さないわよ!」


「あら、狩りも恋愛もタイミングが大事なのよ。

 亜季みたいな事を言ってるとみすみすチャンスを逃しちゃうわよ(笑)」


「そうだよ、だから王国を出る前に聖に先を越されてタク先輩にキスされちゃったのよ。」


 と、アカネちゃんが亜季ちゃんの古傷をグリグリと抉る。


 お願いだからこれ以上亜季ちゃんを刺激するのは止めて欲しい(汗)


「せ、せっかくその事は忘れていたのにまた思い出させるなんて!

 だいたい、タク先輩にスキがあるから聖に唇を奪われたりするんですよ!

 もう少し女性関係の脇を閉めてください!」


 と、何故か僕に亜季ちゃんの怒りの矛先が向かって来る(汗)


 その後も楓ちゃんとアカネちゃんにイジられて興奮した亜季ちゃんをチャロンがまあまあと宥めたり、赤裸裸な会話に顔を赤くしていたクク・ルルにヤトノが更にご奉仕の内容を詳細に情報共有したりと、突然始まった僕へのご奉仕内容の説明会?暴露大会?は、しばらくの間継続したのであった。


 美少女達に自分の夜の生活の内容を知られるなんて、軽いイジメだよね(汗)


 恥ずかしすぎていたたまれないのでやめて欲しいぞ(汗)


◆◇


「ふう、3人でお風呂に入るのは2日ぶりだけど、すごく久しぶりのような気がするね〜。」


 とチャロンとヤトノに話しかける。


 今後の方針を話し合うミーティングの後、突如始まった僕の夜の生活の暴露大会がようやく収まって皆がそれぞれの部屋に戻ったので、3人でゆっくりと部屋のお風呂に入っているのだ。


 3人で入るには若干狭いが、この密着感がいいのだ。


 美少女2人のイロイロな部分があたって気持ちいいぞ!



「そうですね。昨夜はいろいろあって起きている時間が長かったですからね。」


 とチャロンが答える。


「やっぱり3人でお風呂に入るほうが楽しいですね!

 チャロンお姉さんと一緒にご主人様にご奉仕できますから!」


 と言いながら、ヤトノが僕の僕をやさしく刺激してくる。


「ああ、ヤトノ!

 そんなふうに刺激したら大きくなってしまうよ!」


「ふふふ、本当にご主人のご主人様は元気がいいですね!

 こんなに元気なら私達だけじゃなくてアキさん達も可愛がってあげられますよ!

 やりたい放題ですね、ご主人様!」


 とヤトノが突拍子もない事を言って来る(汗)


「さ、さすがにそれはまずいよ(汗)

 彼女達にまで手を出しちゃったら、本当のハーレムパーティーになっちゃうよ。

 それに2人ともそんなドロドロな関係は嫌じゃないのかい?」


「いいえ、全然問題ないですよ、タクさん。

 私達の種族は群れで暮らすのが普通だったので。強くて甲斐性のある男の人が複数の恋人を持つ事には全く抵抗はないですよ。」


「私も大丈夫ですよ、ご主人様!

 ご主人様の恋人は私の家族と一緒ですからね!

 細かい事は気にせずに、アキさん達もククちゃん達もみんなパクっと食べちゃえばいいんですよ!

 バイパー分隊と同じようにパクっといっちゃいましょう!」


「それに男性を経験しないと魔力が開放されませんからね。

 アキさん達の成長を考えると、早くお相手してあげたほうがいいですよ、タクさん。」


 とチャロンとヤトノがたたみかけるように問題ないアピール?説得?をしてくる。


「ま、まあ、魔力の開放の件もあるけど、彼女達の気持ちが一番大事だからね。

 魔力開放を焦るばかりに望まない男女関係を持つのはよくないからね。

 それに僕達が元々いた国では一夫一妻制度だったからね。

 こちらの世界の住人のチャロンとヤトノとは違って、亜季ちゃん達と男女の関係になるのはためらっちゃうんだよ(汗)。」


「それなら心配ないですよ、タクさん。

 亜季さんたちはタクさんのことがきっと大好きですから。

 そうじゃなければ一緒についてきませんよ。」


「そうですよ、ご主人様。

 一緒についてきた時点でそういう関係になるのは自明なのですよ!」


 とチャロンとヤトノがさらに追い込みをかけて来る(汗)


 いかん、このままではキッチリカッチリと型にはめられてしまいそうだぞ(汗)


「ま、まあ、こういう事は成り行きにまかせるというか、自然とそうなるほうがいいからね(汗)。

 そうなる運命ならいずれはそうなるさ。

 時の流れに解決を委ねよう。」


「ふふふ、そんな理性的に大人の雰囲気で話をされてますけど、こっちのご主人様は本能が爆発しそうですよ!」


 と、さっきからヤトノに優しく刺激され続けている僕の僕は既にワイルドトランスフォームMAX状態である。


「そ、それはヤトノがさっきから刺激するからだよ(汗)」


「ふふふ、もう我慢の限界みたいですよ(笑)

 さあ、私の中でいっぱい気持ちよくなってくださいね(笑)」


 とヤトノがOKサインを送ってくる。


「もう、ヤトノちゃんばっかりずるいですよ、タクさん。

 私は昨夜はタクさんのタクさんをいただけなかったのですから、今日はたくさん可愛がってくださいね!」


 とチャロンとヤトノが2人並んで湯船に手を付いて形のよいおしりをこちらに向ける。


 そんな光景を見せつけられた僕が我慢できる訳はない。


 僕のレッドバイパーはおもむろに戦術行動を開始してチャロンとヤトノに襲いかかるのであった・・。


 お風呂から出た後も昨夜の分までおねだりしてきたチャロンと、それに相乗りしてきたヤトノをタップリと可愛がった僕は、すっかり満足した表情を浮かべた2人と一緒に泥のように眠るのであった。


 ああ、今日も疲れたね・・。


 おやすみなさい、異世界・・。


◇◆


 チュンチュンといういかにもな小鳥のさえずりで目が覚めた僕は周りを見渡す。


 ああ、ここはサゲオの街の宿だったね。

 

 景色が違ったから一瞬どこかと思ったよ・・。



 おはようございます、異世界25日目の朝です。


 毎朝起きた瞬間の景色が異なるのも旅の醍醐味だよね。



 僕の両隣でスヤスヤと眠るチャロンとヤトノの髪を撫でながら、今日も頑張ろうとの思いを込めて、みんなまとめて治癒魔法と回復魔法をかける。


 このルーチンのおかげで毎朝僕は元気である。

 ナニがとはあえて言わないけどね(汗)


「うーん、むにゃむにゃ。

 おはようございます、タクさん。

 起こしてくれてありがとうございます。」


「おはようチャロン。

 ゆっくり休めたかい?」


「はい、やっぱり宿のベッドはいいですね。ぐっすり寝れましたよ。」


「それはよかった。

 じゃあ支度して朝ご飯を食べに行こうか?」


「はい、タクさん。」


 と答えるチャロンとモゾモゾと起き出してきたヤトノと一緒にお風呂で朝のルーチン?を済ませてから食堂に向かう。


 食堂では既に女子チームが食事を開始していた。

 相変わらず早いね。


「みんなおはよう。体調はどうだい?」


 と声をかけながら席に着くと、宿の少女が運んで来てくれた食事をいただきながら今日の予定を話し合う。


「タク先輩、今日の予定はどうしますか?」


 と亜季ちゃんが聞いてくる。


「まあ、いつも通りかな。

 明日からの旅に向けた食料の買い出し、商業ギルドと冒険者ギルドで情報収集、あとはサゲオの街の観光と美味しいランチかな?」


 と答えると


「わかりました!

 服装は自由でいいですか?」


 と楓ちゃんが元気よく聞いてくる。


「ああ、もちろんだよ。

 『8番格納庫』の宣伝も兼ねて、皆好きな服にしよう。」


「わかりました!」


 と答える女子チームと楽しく食事を続ける。


 食堂には他の冒険者や商人たちもいるが、皆こちらのほうをチラチラと見ている。


 どうやら美少女達と、何故か1人だけ混ざっている男が気になるらしい。


 ふふふ、彼女達は僕の恋人とパーティーメンバー達だからね。


 声掛け、勧誘の類はご遠慮いただこうかな(笑)


◆◇


 部屋に戻って支度をした僕達は宿のロビーに集合する。


 僕とチャロン、亜季ちゃんとアカネちゃんは大正ロマン風、楓ちゃんとクク・ルルは魔女っ娘スタイルでコーディネートだ。


 うん、女子チームは皆よく似合っているぞ!


「みんな、よく似合っているよ。

 サゲオの街でも注目を浴びることは間違いなさそうだよ(笑)

 早速出かけようか?」


「「「「はい!」」」」「「わかりました!」」


 と答える女子チームと一緒に宿を出る。


 宿から少し歩いたあと、建物の影に入ってヤトノに人の姿に戻ってもらう。


「皆さん、おはようございます!」


 と元気よく現れたヤトノはチャロンと同じハイカラさんスタイルである。


 うん、ヤトノはどちらかと言うと和風な雰囲気だから、ハイカラさんスタイルがよく似合うよね!


「ヤトノもハイカラさんスタイルがよく似合っているよ。」


「ありがとうございます!、ご主人様!」


「まずは商業ギルドに行って情報収集をしようか?」


「わかりました!

 商業ギルドでの交渉は私にお任せください!」


 とヤトノが胸を叩いてどや顔で答える。


 

 その瞬間にヤトノの張りのある大きな胸がプルンと揺れて思わず興奮してしまうが


「頼りにしてるよ。流石はグレイ商会の商会長だね。」


 と努めて平静に答える(汗)


 また亜季ちゃんに怒られるといけないからね(汗)。


 

 商業ギルドには歩いて10分ほどで到着した。


 中に入ると、ロビーや受付は王都の商業ギルドと同じような雰囲気である。


 壁の情報板には主要な街道沿いの街の安全情報や、各街の農産物の相場、売れ筋商品の情報などが掲示されている。


 この情報は商人にとっては助かるね。


 辺境に向かう街道沿いには特に危険な兆候はなさそうで良かったぞ。


 ただ、地図上で見る限りかなりの距離があるな。

 長旅になりそうだぞ。


「辺境って遠そうだね。」


「そうですね。この地図に描いてあるワウラの街とサゲオの街の距離から換算すると歩いて10日といったところでしょうか?

 でも街道沿いに街もあるようですから、食料の調達には困らないと思いますよ、タクさん。」


 とチャロンが答える。


「この地図に描いてある菱形のマークが街なのかい?」


「そうですね。よくある表現ですよ。

 でも街の名前のとなりに書いてある番号のようなものは何でしょうか?」


「どれだい?」


 と言いながら地図を見ると、辺境に向かう街道沿いの街に、サゲオの街の側から「G01」、「G02」・・、と番号が書かれている。


 うーん、これはどこかで見たことがあるぞ?


 と地図を見ながら思案していたその時、


「あら、辺境に行かれるのですか?

 何かご不明な点がございますか?」


 と後ろから声をかけられる。


 振り返るとギルドの女性職員さんだった。

 僕達が地図をマジマジと覗き込みながらブツブツ言っていたので、何か分からないことがあるのかと思って声をかけてくれたようだ。


「ええ、そうなんですよ。

 ちょっと辺境で商売でも、と思いまして。

 ところでこの街の印の横に書いてある記号と数字は何ですか?」


「ふふふ、これを聞かれると言うことはこの国には初めていらっしゃるのでしょうかね?

 この印は街道と街の番号を示しているのですよ。

 例えば、このサゲオの街の「G01」は外環街道の1番目の街と言う意味です。

 この国は辺境への出稼ぎや南方との交易のために外国からたくさんの方々がやって来ますので、街の名前より記号のほうがわかりやすいのですよ。」


 おお!なるほど。

 どこかで見たことがあると思ったら、元の世界の電車の駅表示と同じシステムだね。


 確かにこれなら外国の人にもわかりやすいだろう。


 まあ、これも例の物流に詳しい勇者に違いない。


「なるほどですね。これももしかして何年か前にこの街を訪れた旅の冒険者の提案ですか?

 街の外側の入国審査の検問所の整備を提案した人?」


「あら、よくご存知ですね。

 その通りですよ。

 その冒険者さん、私達の間では物流冒険者と呼ばれている方が街道と街に記号を割り振ることを提案されたのです。

 これとは別に街道には一定距離ごとに番号を付与した石碑を建てることも提案されたのです。

 おかげで地図も見やすくなりましたし、危険な魔物発生の注意喚起などもわかりやすくなりました。

 例えば、「G01とG02の間、10番目の石碑付近でオーガが出現、注意されたし。」みたいな感じですね。」


「なるほど、それは便利ですね。初めてこの国を訪れる人もすぐに理解できますね。」


 どうやら「物流冒険者」と呼ばれた過去の召喚勇者は、元の世界の電車の駅の表示と、一里塚のシステムをこの国に導入したらしい。


 うん、相変わらず地味ではあるがこの世界の発展に貢献しているようだ。


「お役に立てましたでしょうか?」


「もちろんです。ありがとうございます。

 ところで辺境ではどんな商品が不足気味とかわかりますか?」


「そうですね。最近は「東の森林地帯」で素材集めをする冒険者さんが増えていますので、生活用品全般、武器・防具、それに治療のポーションは慢性的に不足気味ですね。

 持っていった分だけ売れますよ。

 ただ辺境までは遠いので、現地まで安定的に商品を運ぶことができるのは資金力のある大手の商会だけですかね。

 道中の護衛や衣食住にかかる経費も馬鹿にならないですから。」


「なるほど、それもそうですね。情報ありがとうございます。

 僕達も何かできる範囲で持って行ってみますよ。」


「お役に立てて何よりです。

 他にお困りの件はありますか?」


「困り事ではないのですが、セントラル王国の王都にある商業ギルドに手紙を送ることは可能ですか?」


「ええ、もちろんですよ。

 手数料はいただきますが手紙をお預かりして送ることは商業ギルドのサービスの一つですからね。

 遠慮なくご利用ください。」


「ありがとうございます。

 それでは後ほどカウンターでお願いすることとします。

 いろいろ教えていただき、どうもありがとうございました。」


「どういたしまして。」


 と、女性職員さんに丁寧にお礼を言って、その場のやり取りを終える。

 


 カウンターの奥に戻っていく女性職員さんを見送りながら、チャロン達に


「いい情報を貰えたね。ここに来て良かったよ。

 あとは王都のケン君に手紙を送るからちょっと待っててくれるかい?」


 と声をかける。


「はい、わかりました。売れそうな商品は私達で見繕っておきますので、タクさんとヤトノちゃんは手紙の手続きをどうぞ。」


「ありがとう、ちょっと行ってくるよ。」


 と言い残し、僕とチャロンはカウンター付近の書類記入用の作業台でケン君宛に手紙を書く。


 内容は、

 ・僕達はサゲオの街に到着した。これから辺境のグラント辺境伯領に向かう。

 ・辺境で活動する冒険者が多く、生活用品、武器・防具、ポーションの需要大


 と、僕達の近況と商売に関する情報を記入しておいた。

 ケン君なら有効活用してくれるだろう。


 手紙を持ってカウンターに行き、手数料の5,000エソを支払う。

 手紙1通で5,000エソとは元の世界の感覚では高く感じるが、この世界の物流状況では仕方ないのかな?


 カウンターで対応してくれた女性職員さんが、ヤトノ達の服を見て


「お客さまのお連れの女性の皆さんは、珍しい服をお召しですね。

 とても素敵ですよ。この街では見たことがありませんが、どちらで購入されたのでしょうか?」


 と、興味を示してきたので、


「セントラル王国の王都で人気沸騰中の『8番格納庫ハンガーエイト』ブランドの服ですよ。

 そのうちこの街にも入荷されてくると思います。

 事務職の女性用の制服なんかもありますので、是非ご覧になってください。」


 と、情報提供しておく。


 このサゲオの街で『8番格納庫ハンガーエイト』ブランドを展開すれば、、街道を行き交う商隊がこの世界中に拡散してくれるかもしれないしね!


◇◆


商業ギルドを出たあとは、女子チームに言われるがままに、食料の調達、矢の補充、生活用品の補充とあれやこれやとどんどん買い物をしていく。


辺境で販売する用の生活用品の調達も女子チームに任せておいた。


どうやら女性用のアレコレをたくさん仕入れておくらしい。


男性用の生活用品や武器・防具なんかは仕入れと販売ルートが出来上がっているので、個人で下手に手を出しても売り捌けないが、女性用のグッズなら冒険者間の融通や口コミで上手く捌けるらしい。

副業というか小遣い稼ぎにちょうどよいとのことだ。


なるほどねと思いながら、なんだかんだと相談しながら買い物を続ける女子チームを生暖かく見守る。


ひとしきり買い物を終えたら、お楽しみのランチタイムだ!


皆の意見を聞くまでもなく肉料理の定食屋に入った僕達は、ガッツリとした肉の網焼き料理をタップリと堪能する。


膨れたお腹を一休みさせるために街のメイン道路沿いのカフェ的なお店のテラス席で皆で紅茶を飲んでいると、とある一画で人が行列になっている。

行列はなかなかの人数であり、待ちくたびれた人の中には「早くしてくれ!」「急いでいるんだ!」と大声を出している者もいる。

行列に並ぶ女性冒険者達も少なくないが、むさ苦しい汗臭そうな男達に挟まれて苦渋の表情を浮かべている。


うん、見ているだけで辛そうだ。

あんな行列には絶対に並びたくないよね(汗)。



僕は近くにいたカフェの店員さんに、


「あの行列は何ですか?」


と聞くと


「各地に向かう乗り合い馬車の乗車券の販売所ですね。最近は辺境に向かう人達が多くて、いつもあんな感じですよ。乗車券を買うために2〜3日かかる場合もあるそうです。中には乗り合い馬車を諦めて辺境まで歩いて旅をする人も多いそうですよ。」


「へ〜、大変なんですね。馬車の便数を増やさないのですかね?」


「増やそうとしているのですが、御者さんや護衛の冒険者さんの数が足りなくてなかなか増やせないそうですよ。」


「なるほど、大変そうですね。」


「お客様達も辺境に向かわれるなら早めに乗車券を購入されたほうがいいですよ。」


「ありがとうございます。

僕達も辺境に向かう予定ですが、幸いにも馬車を入手することができたので、あの行列には並ばなくてよさそうです。」


「それはよかったですね。」


と、カフェの店員さんとの話を終えたその時、僕達の前のテーブルに座っていた2人組の女性冒険者が椅子を「ガタガタッ!」と鳴らしながら突然立ち上がって僕達に向き合うと、


「そ、そなた達は自前の馬車で辺境に行くのか!

私達も一緒に馬車に乗せてもらえないだろうか?

このとおりだ!」


と、2人して頭を下げて突然お願いしてくる。


よく見れば2人とも冒険者風の格好はしているが、着ている服の生地は上質であり、皮の胸当てやブーツもよい拵えである。


チャロン達と同じ歳くらいの女性は金髪縦巻きロールの長髪で、いかにもお嬢様といった感じの風貌である。


僕たちに声をかけてきた金髪ショートカットヘアーの少し年上の女性は使い込まれた片手剣を腰に下げて、いかにも護衛の女性騎士の雰囲気だ。


これはトラブルの予感しかしないぞ!


さてさて、どう対応しようかな(汗)


最後までご覧頂きありがとうございました。

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