第116話 初の護衛依頼の完了
いつもご覧いただきありがとうございます。
年末のバタバタで今週の投稿が遅くなりました・・。
午後からも目的地に向けて商隊は進む。
スノーとの感覚共有を使って先頭の馬車の様子を伺ってみると、メリルさんとトミーは一言も話しをしていない。
うん、かなり気不味そうだ(汗)
メリルさんはもう必要最低限の業務上の会話しかしないぞ、という冷めた雰囲気である。
トミーはなんとか関係改善を図りたいのか、焦っている様子であるが。
うん、まあ顧客との関係改善の前に仲間を大切にしたほうがいいぞ。
顧客は君のそういうところも見てると思うんだけどね(汗)
他方、ナンシーさんとモニカさんは対照的にとても楽しそうだ。
やれ、ハンバーガーが美味しかっただの、夜食には軽めのBLTがいいだの、食べ物話で盛り上がっている。
この3日間携帯食ばかりの御者さんが羨ましそうに聞いている。
こういう様子を見る限り、野営地での屋台営業は間違いなく需要がありそうだ。
心なしか街道を行き交う馬車の数も多くなってくる。
ワウラの街が近づいて来たのかな?
「馬車が増えてきましたね。」
「ああ、ずいぶんとワウラの街に近づいて来たからな。」
「そう言えば、この辺りは盗賊は出ないのですかね?」
「そうだな、この辺りは交通量が多いからな。こんな目立つところで商隊を襲う奴らはいないかな。」
「それもそうですね。
盗賊は返り討ちにして殺してしまっても問題無いと聞いたのですが?」
「ああ、もちろんだ。
人の命と財産を奪おうとする奴らに情けをかける必要は無いさ。
捕まえて衛兵に突き出せば報奨金をもらえるが、割に合う金額じゃないから大体は殺してしまうか手足を縛って森に放置かな。
あとは自然の力で跡形も無く消えて行くって寸法だな。」
「なるほど。参考になります。」
以前にチャロンが同じことを言っていた気がするが、森に放置しておけば魔物や肉食の動物が処理してくれるってやつだね。
元の世界の感覚だと考えられないが、この世界では標準なのだろう。
護衛を生業にするなら心に留めておかないとね。
いざと言う時に動けないと意味が無い。
果たして僕たちのような異世界からやって来た勇者達は自衛のためとは言え人を殺したり傷つけたりできるのだろうか?
その時になってみないとわからないだろうけど、ただ1つ言えるのは、チャロンやヤトノ、パーティーの仲間を守るためには、あらゆるオプションの行使はためらわない、ということかな。
言葉で言ってもわからない奴らには実力行使もやむを得ないよね!
◇◆
いつものパターンなら、楓ちゃんが特大のフラグを屹立させて、その回収をさせられるところだが、流石に3日連続のフラグは阻止しようということで、楓ちゃんにはおしゃべり禁止が下令された。
もちろん念話も禁止である。
そのおかげか、平和な旅程が続き、遠くにワウラの街の外壁が見えてくる。
ようやく馬車の旅を終える事ができそうになって、皆の顔も思わず綻ぶ。
スキルの訓練も兼ねてスノーと感覚共有をして皆の様子を伺っていたが、御者さん達も今夜の宿はどこで、食事はあそこで、などと楽しそうにつぶやいている。
ナンシーさんとモニカさんも、「早く冒険者ギルドに行って手続きしようぜ!」
と盛り上がっている。
ただ1人、トミーの奴だけは何故か不機嫌そうだ。
スノーの感覚共有で聞き耳を立ててみると、
「ちくしょう、何で魔物が出て来ないんだ・・。
見せ場が無くなってしまう・・。」
とかすかな小声でつぶやいていた。
メリルさんには聞こえていないようだが、スノーの聴覚をもってすれば探知可能なボリュームだ。
ははあ、魔物を倒してメリルさんにいいところを見せたかったんだね。
名誉挽回して次の護衛依頼も受けれるようにもっていきたかったというわけか。
だが残念ながら、楓ちゃんのフラグメイキングを封じた今となっては、そのプランは実現できそうにないね。
それにナンシーさんもモニカさんもパーティーを抜けちゃうからね。
護衛を受けるには追加のメンバーを探さないとだめだぞ!
◇◆
トミーの願いも虚しく、商隊はワウラの街の外壁に到着した。
ちょうど街に到着する商隊で混み合う時間のようであり、街の中に通じる門の前は行列ができている。
「ようやく到着したな。」
と隣に座る御者さんが声をかけてくる。
「ですね。無事についてよかったです。
結構な行列ですが、いつもこんな感じなんですか?」
「ああ、そうだな。
この時間はいつもこんなもんだ。30分も並べば順番が回って来るさ。
ギルドカードを確認されるから事前に準備しておくといいぞ。
あと、従魔達もそれぞれの主人の側に一緒にいたほうがいいな。
何か聞かれても早く答えられるから時間が短くて済む。」
「なるほどですね。ここはチェックが厳しいんですか?」
「ああ、国境にも近いからか、見慣れない顔の冒険者は厳しく確認される場合があるぞ。」
「わかりました。早めに準備しておきますね。」
と答えると、念話で皆に情報共有しておく。
こういう時は念話は便利だね!
「そう言えば、護衛依頼の完了後に宿を取ろうと思うのですが、おすすめの宿ってありますかね?」
「そうだな。冒険者ギルドの1本裏の通りにある『満月亭』がよいと思うぞ。
少しお高いが風呂もついてるし、食事も美味いし、部屋もキレイだからな。
女が多いタクのパーティーでも安心して泊まれるだろう。」
「わかりました。そこに行ってみます。」
「ああ、それと冒険者ギルドに依頼完了の報告をする前に宿を取ったほうがいいぞ。
あのオークとかを売り払ったりするなら時間がかかるだろうからな。」
「おお、そうでしたね(汗)」
しばらくしてようやく僕たちの順番が回ってきた。
いろいろと聞かれるかと思って応答を準備していたが、衛兵から「見慣れない顔だな?変わった獣魔も連れているし。」と一瞬怪訝な顔をされたものの、「メリル商会のメリルさんが雇っている冒険者なら問題ないだろう。」と言ってすんなりと通されてしまった。
どうやらメリルさんはこの街では信用のある商人らしい。
「すんなりと街に入れてよかったです。」
「本当にそうだな。
俺達も早く仕事が終わるからありがたいぞ。
早く家に帰って1杯飲みたいからな。」
「僕達も今夜は宿でお風呂に入ってゆっくり寝たいですね。」
そうなのだ!
今夜はチャロンとヤトノと一緒にゆっくりしたいのだ!
夜はチャロンとヤトノの2人から同時にご奉仕を受けないと気分が満たされないのだ!
「ははは、そりゃそうだな。
ほら、あそこの広場で護衛は終了だ。あと少しだぞ。」
と御者さんが指を指すほうを見ると大きな広場があり、馬車がたくさん停まっている。
「あそこがこの街の馬車の荷捌き場になっていてな。
向かって左側が荷卸場、右側荷積場になっているのさ。」
「なるほど、目的によって場所を分ける事で馬車や人の流れをスムーズにしているわけですね。」
「そういうことだな。
昔はもっとゴチャゴチャしていたのさ。
場所の取り合いや馬車が進む方向で商隊同士の喧嘩も日常茶飯事だったのさ。
でも10年ほど前にこの街にふらっと立ち寄った冒険者パーティーが商業ギルドに荷捌き広場の改善を提案してな。
それを採用して今の状態になったのさ。」
「なるほど。気の利いた冒険者がいたわけですね。」
「ああ、伝えられているところによるとその冒険者達はタク達と同じような黒目黒髪の若者だったそうだ。」
「へー、そうなんですね(汗)」
と極力平静を保って回答する。
10年前の黒目黒髪って、間違いなく召喚された勇者だよね(汗)
しかも時期的にレッドウイングの街で野営場の設置を提案した勇者達の可能性があるよね。
彼らの中には物流業界に詳しい人でもいたのだろうか?
世界中を旅する中で自身の持つ知識を使ってこの世界の物流事情の改善を図ったのかもしれないね。
「さあ、到着だぞ。」
と言って御者さんが前の馬車に続いて荷卸場に馬車を停める。
「ここで護衛は終了だ。
あとはメリル商会のスタッフが全部やってくれるぞ。
護衛お疲れさん。
メリルさんに護衛終了のサインをもらったら冒険者ギルドに報告して報酬を受け取ればいい。
冒険者ギルドはあのメイン通りに入ってすぐの左側、商業ギルドはその向かい側だ。
先に宿屋の予約を忘れるんじゃないぞ。」
「ありがとうございます。
旅の間はありがとうございました。」
「なに、礼を言うのはこっちのほうだ。
タク達がいないと魔物に食われていたかもしれないからな。
また一緒に仕事をする事があったらよろしくな。」
「ええ、こちらこそ。」
と、御者さんと握手を交わして馬車を降りる。
僕はパーティーメンバーに
「さあみんな、護衛は終了だ。雇い主さんに挨拶をしよう。」
と言って馬車を降りると、皆で整列して先頭の馬車にいるメリルさんを目指して歩く。
クク・ルルも混ざっているけど、まあよしとしよう。
「メリル商会長、これで護衛完了でよろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんですよ、タクさん。おかげで無事に到着できました。
タクさんとお仲間の皆さんがいないと大変なことになるところでしたよ。」
「お役に立てたなら良かったです。
それではこちらの書類にサインをいただけますでしょうか?」
「もちろんですよ。」
と、メリルさんは僕とククが手渡した護衛依頼の書類にササッとサインすると、僕とククに返しながら、
「ところでタクさん達の今後のご予定は?」
と聞いてくる。
まあ、予想はしていたので予め準備していた答えを返しておくことにしよう。
「はい、僕達のパーティーは世界中を気ままに旅する事が目的なので、護衛を兼ねて隣国に行ってみるつもりです。」
「そうですか、また王都への上り便の護衛をお願いしようと思っていたので残念です。
またこちらに戻ってくることが護衛をあればお願いしますね。」
「承知しました。その際はこちらこそお願いいたします。」
メリルさんは護衛対象としてはやりやすい人だったからね。
我儘とか依頼事項以外の事を言われなかったし。
今後も顧客として繋がりをもっておくことにこしたことはないだろう。
冒険者として活動していくなら人脈は多いほうがいいからね。
丁寧にメリルさんにお礼を述べてその場を辞去した僕達は、ナンシーさんとモニカさんにも声をかける。
「ナンシーさんとモニカさん。護衛中は大変お世話になりました。
例の件は打ち合わせ通りに手続きしておきますので、王都に戻ったら冒険者ギルドで指名依頼をお待ちください。」
「ありがとうタク、恩に着るよ!」
「王都に戻るのが楽しみだぜ!」
とナンシーさんとモニカさんが楽しそうに答える。
「どういたしまして。僕もお2人のお役に立てて嬉しいですよ。
あと例の手続きの件も頑張ってくださいね。
揉めないといいですね・・。」
「ああ、それだけが少し気がかりだけどね〜・・。」
と言いながらちらりと横目で様子を伺う2人の視線の先には、メリルさんに何やら必死で説明しているトミーの姿があった。
「まあ、ちょっと揉めるかもしれないけど大丈夫さ。
パーティーを組むも抜けるもあたいらの自由だからね。
ところでタクたちはどこの宿に泊まるんだい?」
「僕達は『満月亭』に部屋をとる予定ですよ。」
「ああ、あそこはいい宿だからおすすめだぞ。
あたいらも『満月亭』に泊まる予定さ。」
「ならちょうど良かったですね。
時間があったら例の件の続きもお話しましょう。」
「ああ、ありがとうよ。また後でな!」
と言うナンシーさんとモニカさんに一旦別れを告げると僕達は街に向かって歩き出す。
さあ、王都以外の街を初めて散策するチャンスだ!
新しい街を楽しまないとね!
◆◇
元Cランク冒険者の御者さんに教えてもらったとおりに、僕達とクク・ルルは『満月亭』に向かって歩く。
クク・ルルはうちの女子チームと仲良くなったので、当面の間は『炎狼小隊』と行動を共にしたいとの申し入れがあったので快諾しておいた。
護衛依頼を受けながら隣国を目指すのであれば息のあった仲間が多いほうがいいからね。
ククルルの魔法は攻撃力はあまり高くないが、防御用としてはなかなかいい感じだったからね。
楓ちゃんの土魔法のバールと組み合わせれば、商隊の護衛に効果を発揮するだろう。
メイン通りの一本裏の通りに『満月亭』の看板を見つけた僕達は躊躇することなく入口のドアをくぐる。
「こんにちは。本日の宿をお願いしたいのですが?
7名ですけど空いてますか?」
「ああ、いらっしゃい。まだ部屋はいくつか空いてるよ。
混み合う前に来て良かったよ。
宿泊代金は夕食と朝食込みで1泊4,000エソになるけどいいかい?
他所より多少高いけど料理の旨さは保証するし風呂もあるから快適だよ。」
「ええ、問題ありません。」
「何泊するんだい?」
「そうですね。とりあえず2泊でお願いします。
もちろん食事付きで。
あと従魔も一緒に部屋に入れて問題ないですか?」
「あいよ!毎度あり!
従魔は飼い主がちゃんと管理できるなら問題なしさ。
部屋を汚さないように注意してくれればいいよ。」
と元気よくやり取りする女将さんに各人ごとお金を支払いつつ、宿泊時の注意事項を聞く。
夕食は18時以降2時間以内、朝食は朝6時から2時間以内、大浴場は朝6時から夜の22時まで利用可能とのこと。
チャロンが、「この世界の平均的な仕組みですね。」と念話で教えてくれた。
ふむふむ覚えておこう。
最後に女将さんが、
「これが部屋の鍵だよ。出かける時はフロントに預けて行っておくれ。」
と言いつつ僕達に部屋の鍵を渡してくれる。
ちなみに僕とチャロンが2人部屋、亜季ちゃん達が3人部屋、クク・ルルが2人部屋という組み合わせだ。
「さあみんな、荷物を置いたら冒険者ギルドに護衛完了の報告に行こう。
売払い等もあるから時間がかかるだろうしね。
さっさと終わらせて早く夕食にしよう!」
「「「「はい!」」」」「「わかりました!」」
と答える女子チーム達に15分後にフロントに集合と指示して、それぞれの部屋に移動して荷物を下ろす。
この世界で初の宿屋の部屋は、思っていたより快適そうであった。
元の世界のビジネスホテルくらいかな?
サバゲーのイベントで地方に遠征した際に宿泊した西横インと同じような雰囲気だ。
決して広くはないが部屋もベッドも清潔だし綺麗に清掃されている。
しかもありがたいことに独立式のトイレと小さな浴室も付いているぞ!
でもこれってあれだよね、この世界の発想じゃないよね?
「ねえチャロン、この世界の宿ってみなこんな快適なのかい?」
「いえ、ここまで設備が整った部屋はあまり聞いたことがないですね。
王城の別館と同じような雰囲気ですね。」
「きっと過去に召喚された勇者達が部屋のデザインや設備を広めて回ったと思うんだよね。」
「あ、その可能性は高いと思います。」
「ふむ、これもこの世界への貢献ということなのかな。」
「そうかもしれません。
荷捌き広場の改善を提案した召喚勇者様が部屋の改修を提案したのかもしれませんね。」
「かもしれないね。
さあ、皆のところに行こうか。
その前に・・・。」
と言いながらチャロンをやさしく抱き寄せると熱い口づけを交わす・・。
思わず「んんっ!」と声を漏らすチャロンの耳元で
「今夜はたっぷりご奉仕してもらうからね・・。」
と囁くと
「はい・・。頑張りますね・・。」
と真っ赤な顔で答えるチャロンであった。
それを見ていたヤトノからも
『私も頑張りますね!ご主人さま!』
と念話が届く。
「ふふ、2人とも楽しみにしているよ。
さあ、まずは冒険者ギルドで用事を片付けよう。」
「『はい!』」「バウ!」「ホウ!」
と答えるチャロンとヤトノと従魔達を連れて部屋を出る。
さあ、ワウラの街の冒険者ギルドはどんな感じなのだろうか?
楽しみだね!
◆◇
宿のフロントで再集合した僕達はメイン通りにある冒険者ギルドを目指す。
王都のギルドよりは若干小さいがなかなかの大きさの建物だ。
物流で賑わう街のギルドだけあって、取り扱う仕事の量も多いのだろう。
そんな事を考えながら皆で入口のドアをくぐる。
1階のロビーエリアの配置は王都のギルドと概ね同じか・・。
奥に受付カウンターがあって、そこに至るホールの左右に依頼が貼ってある。
護衛完了手続きと魔物の売払いが終わったら覗いていこう。
「まずは護衛完了の手続きだね。」
と言いながらカウンター前の列に並ぶ。
既に何組かの冒険者達が並んでいたが、受付嬢達がサクサクと対応しているので程なくして僕達の順番が回ってきた。
「こんにちは。護衛依頼の完了手続きをお願いします。」
と言いながら僕とククがそれぞれの書類を提出する。
「はい、王都からワウラまでの護衛の完了手続きですね。
依頼主のサインも入っていますので問題ないですね。
お支払いしますので少々お待ちください。」
と言いながら手元のカウンターで事務処理をしたお姉さんは、布の小袋に入った報酬をトレーに乗せて僕達に渡す。
「1人あたり60,000エソ入っていますのでご確認ください。」
中身が間違いないことを確認した僕達は
「間違いないです。ありがとうございます。
あと、旅の途中で狩った魔物を売り払いたいのですが、買い取り受付はどこでしょうか?」
「買い取りカウンターは奥の扉を出た先にある倉庫エリアになりますのでそちらでお願いしますね。」
「わかりました。ありがとうございます。」
とお礼を述べると速やかに受付カウンターを後にする。
あまり周りの冒険者達に聞かれたくないからね。
皆で買い取りカウンターに移動すると、ここも王都のギルドと同じような配置であった。
受付ブースが個別に仕切られており、買い取りしてもらう獲物が他の冒険者から見えないように配慮されている。
たまたまブースが1つ空いたので、僕達は皆で入り込んで受付のお姉さんに声をかける。
「こんにちは。倒した魔物の買い取りをお願いします。」
「わかりました・・って、何もお持ちではないようですが?」
と受付のお姉さんに怪訝な顔で見られる。
「ああ、実は収納の魔道具に収めていまして。
あと、かなり大量にあるので、カウンターではなくてそちらの倉庫の床に出してもよろしいでしょうか?」
「は、はあ。まあいいですけど。ではこちらにどうぞ。」
と倉庫内に案内された僕は、「では失礼して。」とおもむろに床面に魔物を並べる。
まずは「3匹の若オーク」を、続いてバッドウルフの群れを床面に並べる。
一応気を使って綺麗に並べるサービス付きだ!
「こ、これは!こんなにたくさんの魔物をどうやって倒したのですか!
ていうか、こんなにたくさんどうやって収納したのですか??」
と受付のお姉さんは驚いている。
そりゃまあ、そうなるよね。
「まあ、その辺は企業秘密ということでお願いします。
それよりこのオーク達は『3匹の若オーク』って呼ばれているオークのようなのでご確認をお願いします。」
「ええ!?、あの『3匹の若オーク』ですか?
うちのギルドから討伐依頼を出しているやつですよね?
かなり手強くて並の冒険者パーティーでは討伐不可能と言われている魔物ですよ!?」
「はあ、まあ、確かに手強かったですよ。」
「いったいどうやって倒したのですか??」
「はあ、まあ弓で仕留めたのですが、細部は企業秘密ということでお願いいたします。」
と答えておく。
「そ、そうですね。ギルド職員としてあるまじき質問でした。
大変失礼いたしました。」
と受付のお姉さんは平身低頭で謝ってくる。
ギルドの受付嬢として冒険者の個人情報には深く関与しないことを指導されているのだろうけれど、あまりの買い取り内容に衝撃を受けたのか、自分を制御できなかったようだ。
「いえ問題ないですよ。買取査定をお願いしてもよろしいですか?」
「え、ええ、もちろんです。
どちらも査定に少しお時間をいただきますので、この番号札を持って受付ホールでお待ちしていただいてもよろしいでしょうか?」
「わかりました。お願いいたします。」
と言うと、番号札を受け取って受付に戻る。
このあたりのシステムは王都のギルドと同じだね。
「では皆で相談しながら依頼でも見つけることにしよう。
明日は終日休みにして、明後日から仕事を再開しようと思うけど、それでいいかな?」
「はい、それでOKです。ちなみにどちらの方向を目指しますか?」
と亜季ちゃんが反応する。
「そうだね。とりあえずクリストファー王国を目指すのはどうかな?
護衛をしつつ魔物を倒して経験値とレベルを上げを同時に行えば効率的な気がすると思うんだけど。」
「いいですね!魔物を倒せばお金も入ってきますし、一石二鳥ですね。」
「新しい従魔と知り合いになれるかもしれませんし!」
とアカネちゃんと楓ちゃんも賛成のようだ。
「ククとルルもそれでいいかい? 急に国外に行くことになるんだけど。」
「はい!もちろんです。私達だけでは国外に行くのは困難ですからね。
タクさん達と一緒に行動しながら他国に連れていってもらえるとありがたいです!」
「じゃあ、クリストファー王国へ向かう護衛依頼でも探そうかな?」
「ですね!ここからでしたらクリストファー王国側の国境の街であるサゲオの街までの護衛依頼がちょうどいいですね。
たしかここからだと歩いて2日ほどですよ。」
とチャロンが横から教えてくれる。
「よし、ではサゲオの街までの護衛依頼をさがそうか?
あと道中の魔物の情報とか、参考になりそうな情報があったら合わせて情報収集をしよう!」
「「「「はい!」」」」、「「わかりました!」」
と元気よく答える女子チームと一緒に護衛依頼を探し始める。
うん、なんか冒険者って感じがしていいよね!
王城から離れて、僕達の異世界ライフが本当の意味で始まったということかな?
これからの展開が楽しみだね!
最後までご覧いただきありがとうございました。
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