表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

102/147

第102話 大盛りあがりの格闘技大会・・

いつもご覧いただきありがとうございます。

 第3試合が終わったところで会場全体が休憩となった。


 どうやら飲食物の販売と同時に観客の興奮を落ち着かせる狙いがあるようだ。


 ここぞとばかりに待ち構えていた売り子の若者達が観客席の間を歩き回ってお酒や軽食を売り歩いて行く。


 この売り子システムもケン君の仕込みに違いない。


 儲けるためにあらゆる手段を講じているね。

 

 商人としてのスキルが高すぎないかい?


 揃いのエプロンをした売り子達は、どう見ても若手冒険者達を急遽雇ったと思われる雰囲気を醸し出しているが、それなりにお客の対応ができている。


 きっとケン君が基本的な対応を仕込んだのであろう。


 お酒も軽食も街の屋台よりは販売価格が少し割高のようだが、観客の利便性を考慮すると許容範囲のようで、まさに飛ぶように売れている。


 観客にとっても便利で、飲食物を販売するギルドも儲かって、バイトの冒険者達も儲かるウィン・ウィンの関係である。


 飲食物の販売が少し落ち着いたところで、リング上では松戸屋のスタッフによる魔道具の宣伝? コマーシャル?が始まった(汗)


 松戸屋の法被を着た男女のスタッフが、元の世界の通販番組的なノリでわざとらしい小芝居を展開している。


「ところでロズルーさん、野営で一番困る事はなんですか?」


「ソフィーさん、それはわかりきってますよ。

 水の確保と、火起こしと夜の明かりですね。

 川に水を汲みに行くのは重くて大変だし、火起こしも手間がかかるんですよ〜。

 照明用の油を持ち歩くのも荷物になりますしね〜。」


「ですよね〜!でもご安心ください!

 そんなお困り事を解決できる便利な魔道具ができたんです!

 これをご覧ください!」


「ほう、その棒のようなものが魔道具ですか?

 いったいどうやって使うのですか?」


「はい! 使い方はとっても簡単です!

 こうやって手に持って魔力を流すだけですよ!

 ほら、それぞれが、点火、点灯、放水の魔道具になっています!」


 とソフィーさんという女性がそれぞれの魔道具の使い方を実演すると、観客席からは「おおお〜!」という歓声が響く!


「これはすごいですね!

 でも魔力には個人差があるので使えない人もいるのではないですか?」


「ご安心下さい!

 この魔道具の中に魔力が内蔵されていますので、誰でも使えるんですよ〜!

 しかも、使用していない間は自動で魔力を蓄えるので、無駄使いしなければ野営の間は困らない程度にずっと使用可能ですよ〜!」


 ここで観客たちが再度どよめく!

 

 やはり生活魔法使いが貴重と言うのは本当のことなんだろう。


「これはとっても便利ですね〜!

 冒険者ならパーティーに1セットは常備したいですよね~!」


「でしょう〜?

 なんと、今日の試合の勝者の皆さんには、この魔道具が賞品として『8番格納庫ハンガーエイト』様から贈られるらしいですよ!」


 とソフィーさんが言うと、観客が再度どよめく。

 中には「俺も欲しいぞ!」と声をかける者が多数いる。


 これはもしかして仕込みかな?


「それは羨ましいですね~!。

 でも試合に出場できなかった人はどうすればいいのですか?

 こんな便利な道具なら欲しがる人はた〜くさんいるんじゃ〜ないですか?」


「ご安心下さい!

 そんな声にお応えして、いま特別販売を計画中なんですよ!」


「それはすごい!

 でもと~ってもお高いんでしょう?」


「はい、もちろん高価な魔道具なんですが、ここは格闘技大会【ASYURA01】の開催を記念して『8番格納庫ハンガーエイト』様の協力を得て、今回限りの特別価格で販売予定なんですよ〜!」


「そ〜れはすごい!

 いったいおいくらなんですか〜?」


「ふふふ〜、そんなに慌てないでくださいよ!

 お値段と販売方法は明日の午後以降に取扱代理店の松戸屋からお知らせする予定です!

 楽しみに待っていてくださいね~!」


「あ〜!もう明日が待ちきれないですね〜!」


「それでは皆さん、次の試合もお楽しみくださいね~!」


 と言いつつ、手をふりながら小芝居担当の男女がリングを去って行く。



 これ、ケン君が相当練習させただろう・・・。


 完全に元の世界の通販番組のノリだったんだが(汗)


 進行係の方を見ると、亜季ちゃんはもちろんのこと、楓ちゃんとアカネちゃんまでジト目で見ているぞ。


 とはいうものの、こちらの世界の方々には新鮮だったのか、皆とても喜んで見てくれていたようだ。

 

 その証拠に実演CM担当の男女が去った後でも皆ワイワイと魔導具のことを話している。


 特に最前列に座っている女性3人の団体のうち、真ん中に座っている女性がとても興奮しているぞ。


 あれ、あの女の人、何処かで見たぞ?


 あ、あれだ、お城の8番倉庫の中の展示会の会場で見かけた人だ!


 あの時も確か展示されている服を見てワイワイいっていたな。


 きっと新しいもの好きの商人に違いない。


 魔導具も買ってくれると嬉しいんだけどね。



「それでは間もなく第4試合を開始します!」


 とアナウンスが入る。


 次に入場してきたのは2人ともEランク冒険者であった。


 うん、やはりギルドとケン君で絶妙にマッチングを調整しているよね。


 徐々にいい選手を出してきているぞ。


 それを考えると第1試合にマッチングされたゴウ君は適切に実力をチェックされていたということだね(汗)


 それはともかく、第4試合は実力が伯仲する良い展開であった。

 

 引き続く第5試合の勝者は第3試合に出てきた『夜空の伝説』のリリアさんと同じパーティーのリーダーらしき男性だった。


 どうやらこの世界の冒険者も、護衛を専門にやっているような人達はある程度格闘の心得があるようだ。


 『夜空の伝説』のリーダーは上手く相手の関節をとって抑え込んで勝利を収めていたからね。

 

 むむ、王都の冒険者達もなかなかやるな。

 

 少なくともゴウ君よりは手だれだぞ!


◆◇

 

 あっと言う間に第6試合までが終了した。

 

 ちなみに第6試合も女性冒険者同士の戦いであったが、なんと犬獣人のお姉さんと狼獣人のお姉さんのモフモフ?対決であった。


 両者とも美人さんで尻尾がモフモフでとても可愛かったのだが、見た目の可愛さとは裏腹に両者のプライドをかけた熱い戦いとなってしまった。


 チャロン曰く、狼族としては絶対に犬族に負けられないらしい。

 他方、犬族としては狼族を倒して下剋上するのが一族の悲願らしく、王都に在住するそれぞれの一族が観客として結集して大応援合戦となってしまった(汗)


 試合は一族の大声援を受けた犬族のお姉さんが優勢に立ち技で攻めており、すわ!ジャイアントキリングか?、と思われたが、狼族のお姉さんが一瞬の隙をついて犬族のお姉さんの脚にタックルしてそのままバックに回り込むと、強引にチョークスリーパーで絞め落として逆転で勝利を奪ってしまった!


 あと一歩のところで勝利を逃してしまった犬族のみなさんの落胆たるや、この世の終わりのようであった・・。


 対象的に狼族の応援団はヤンヤヤンヤと大騒ぎであり、第6試合後の休憩の際には売り子の販売するエールを飲み尽くす勢いで買いまくりの飲みまくりであった。


 いや〜、格闘技に種族の事情が重なると大変な騒ぎになるんだね(汗)


 これもきっとケン君とギルド長の策略に違いない(汗)



 狼族の興奮が少し收まった頃に、また例の松戸屋の小芝コンビというかデュオがリング上に現れて、今度はポーチの魔導具のコマーシャルを始めだした・・。


 まあ、ノリと流れは最初と同じなのだが、やはり実際に荷物がポーチの中に出し入れされた時の観客の興奮たるやすごいものがあった・・。


 冒険者、商人及び一般人問わず、「これが欲しい!」と大騒ぎになって会場が騒然としてしまった。


 これはかなりの高値でも売れそうな予感がするぞ!


 きっと今頃ケン君が頭の中でソロバンをはじいているに違いない!


 

 例の最前列のお姉さんも興奮気味にお付きの女性に何かを指示している。

 もしかして購入を指示しているのかな?


 

 引き続く第7試合と第8試合は格闘というよりかはストリートファイトといった感じの試合であったが、これはこれで大盛りあがりであった。


 僕的には元の世界の不良映画を見ている気分だったけど、観客にとっては素人感というか親近感があって楽しめたようだ。


 まあ、中にはは賭けが外れたのか、木札を投げつけながら罵声浴びせている人たちもいるようだけどね(汗)


 お酒とギャンブルは嗜む程度にしておきましょうね(汗)


 

 引き続く第9試合は、女性同士の対戦の3組目であったが、これは何というか、違う意味で盛り上がった・・。


 内容は一言でいうと根性だめしのような展開であった。


 どうやら普段から何かと仲の悪いというかライバル関係にある女性冒険者同士が、この大会の試合の場で普段の決着をつけることにしたらしい・・。


 しかも2人とも同じ男冒険者を彼氏にしようと狙っているのも仲の悪さに拍車をかけているようだ。


 え?どうしてそんなことを知っているのかって?


 それは観客のみなさんがアレコレな話をワイワイとしながら観戦しているのでこちらから聞かなくても勝手に情報が入って来るんですよ(汗)


 入場から一触即発の雰囲気だった2人はゴングが鳴ると同時にリング中央に歩み出ると、交代でお互いの顔にビンタを食らわせていく(汗)


 どうやら小細工無しのビンタ勝負で決着をつけるようだ。

 

 普段からこの女性同士の関係を知っている観客はヤイノヤイノと声援を送って楽しんでいる。


 結局、3分間目一杯ビンタを食らわせあった両選手は2人同時に力尽きて両者同時ダブルノックアウトの引き分けとなってしまった(汗)


 本来なら勝者がいないので賞品と賞金は無しのはずだったが、あまりに根性の入った熱い試合であったため、大会運営から賞品と賞金は両者に贈呈されると発表された。


 きっとケン君がいい宣伝になると判断したのであろう。


 まあ、それを贈呈される両選手は気を失って、聖ちゃんと萌ちゃんに治療されている最中だけどね(汗)

 女性なので顔はしっかりと治療してあげてね(汗) 

 

 ちなみに賭けは両者ともちゃんと払い戻しをしてくれるらしい。

 ギルドも賭けの運営に慣れてるようだ(汗)


◇◆


 そんなこんなで第9試合まで終了した。


 次はいよいよ自分の番になったので、チャロンとヤトノと一緒に控室に戻って準備をする。

 

 オープンフィンガーグローブを着用して服装を整えたら、あとは入場時の小道具を確認する。


 例の阿修羅像をモチーフにしたマスクと、ヤトノに作ってもらったオモチャの腕である。

 

 これらの着用要領と操作を確認したら準備万端だ!


「いい感じだね!これで準備は万端だよ。」


「ですね!あとはタクさんがズンダの奴をぶっ飛ばすだけですね!」


「ご主人さまなら余裕ですよ!」


「ふふふ、ありがとう。

 でも勝負は何が起こるか分からないので、気を抜かずに全力で試合に臨むよ。

 まあ、勝利のイメージはできているけどね。」


「さすがはタクさんです!」

「さすがご主人さまです!」


 うん、2人ともいい娘達だ!

 ちゃんと試合前に気分を上げてくれるところが気が効いているよね。


 これは試合が終わったらというか、今夜はタップリとかわいがってあげないとね!

 

 おっと、試合前からそんなことを考えているとまた亜季ちゃんに感づかれてしまうから気をつけよう(汗)

 最近彼女はやたらと感がいいからね(汗)


 もしかしたら念話の魔導具がぼくの潜在意識を自動で送信しているのかな?

 気をつけないといけないぞ!



 などとくだらない事を考えていたら控室のドアがノックされる。


「タク選手。出番ですのでご案内します。」


 と運営スタッフから声がかかる。


「わかりました。よろしくお願いします。」


 と返事をしつつ部屋を出て運営スタッフに案内されながら花道に向かって歩いていく。


 うん、不思議と緊張感はない。

 まあ、3分間殴り合うだけだしね。きっと試合中は緊張する暇もないだろう。


◆◇


 チャロンの試合の時と同じように花道の入り口部分で待機する。


 すると反対側の廊下からあのむさ苦しいやつらがやって来た。


 そう、例の一流冒険者達である(汗)


 やつらのリーダーで今夜の対戦相手でもあるズンダが呼んでないのに僕たちに話しかけてくる。


「ふんヒヨッコめ!女連れで入場とは相変わらずふざけてやがるな!

 まあ、逃げずに試合にやってきたのは褒めてやるがな。

 今日はボコボコにしてやるから覚悟しておけよ!

 ヒヨッコをボコって賞品と賞金まで貰えるんだから、簡単な仕事だぜ!

 今夜は最高の夜になりそうだな!」


 と早速絡んでくる。

 周りの取り巻きというかセコンドというかパーティーメンバー達も下品にガハハと笑っている。

 

 相変わらずウザいな(汗)


 僕は心底嫌そうな顔をしながら、


「まあ、試合後もそんな口が聞ける機会があるといいな。

 言い訳のしようがないくらいに負かしてあげるから、裏口から帰る準備をしておいたほうがいいぞ。

 ヒヨッコ冒険者にやられたとあっちゃ、お前に賭けてくれた観客に合わせる顔がないだろう。」


 と煽り返しておく。


「な、何を生意気な〜!」


 とズンダが憤慨しているが、丁寧に無視そておく。


 先に煽ってきたのはそっちだからね。


「両者ともお静かに!そろそろ入場ですよ!」


 と運営スタッフから注意されるとズンダは、


「クソっ!絶対にぶちのめしてやる!覚えてやがれ!」


 とどこかの三下のような台詞を残して離れていく。


 わざわざ自分で負けフラグを立てるなんて、どうかしてるぞ!


 そんなやり取りをしていたら、場内にケン君のアナウンスが入る。


「皆様、大変おまたせしました。

 それではただいまから、本日の第10試合、メインイベントの選手の入場です!

 どうぞ両選手の入場を熱くお迎えください!」


 そのアナウンスと同時に会場から観客の盛り上がる声がどっと聞こえてくる。


 さあ、いよいよ出番だぞ!


 派手に登場してズンダの奴をぶっ飛ばしてやりますかね!

最後までご覧いただきありがとうございました。

感想などいただけると励みになります。

引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ