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25. 女王陛下と謁見

「面を上げよ、エリクシール、アウラ」


「はい。女王陛下」


「は、はい!」


 女王陛下の言葉にどもりながら答え顔を上げる。

 女王陛下はエリスに似た緑色の瞳に濃緑色の髪、群青色の羽をもつ妖精族だった。


「……お母様、機嫌が悪くないですか?」


「エリクシール、謁見中は女王陛下と呼べ」


「では、女王陛下。お機嫌が悪いようですが?」


「機嫌も悪くなる。あのリードアローのバカどもが今回捕虜にした者たちを引き渡せと言ってきた。そして、領土侵犯をしていたお前たちの身柄も引き渡せと」


 うーん、頭が痛い。

 リードアロー王国ってそこまで頭が悪くなったの?

 そこまで聞いてさらにエリスが続けた。


「引き渡すつもりはございますか?」


「あるわけがなかろう。王女を追って領土侵犯をしてきた兵士を引き渡すなどあり得ん」


「それを聞いて安心いたしました。それではこちらの話に移りましょう」


「そうだったな。まずはリードアロー王国の新たな王、ケネルについて話を聞こうか」


「ケネル王ですか。あれはまったくの役立たずです。私の話をまったく聞かず、私が何者かを知りながら結婚を求めてくる始末。それを断れば暗殺を仕掛けてくるなど言語道断。王の資格はありません」


「なるほど。では、あの国と付き合う理由もないな」


「はい。早急にマナストリアの民を救出し、国交の断絶を宣言いたしましょう」


「わかった、そうしよう。既に救出部隊の準備も整っている。あとは指示を出すだけだ。この謁見が終わり次第、救出作戦の指示を出す」


「ありがとうございます、女王陛下」


「なに、気にするな。……ところでお前のドレス、ずいぶん変わったデザインになったな。リードアローのデザイナーに作ってもらったのか?」


「いえ。このドレスはこちらにいるアウラ様のマナトレーシングフレーム、ヘファイストスによって作られたドレスです。この場には持ってきておりませんが色違いやデザイン違いでドレスだけでも数十着。そのほかアウラ様にはレイピアと短剣、マジックライフル、鎧を作っていただきました」


「ほう。アウラよ、本当か?」


 ひえ、あたしに話が飛んできた!

 でも、いるんだから話もしなくちゃダメだよね。

 覚悟を決めて話をしよう。


「はい、事実でございます。エリクシール殿下のドレスはあたしのエンシェントフレーム、ヘファイストスが、武器と防具はあたしが鍛冶魔法で作らせていただきました」


「鍛冶魔法? そのような魔法聞いたことがないが」


「ヘファイストスから受け継いだ古代魔法……らしいです。様々な素材から装備や道具を作り出せます。装飾などもイメージ次第でどこまでも細かく再現可能みたいです」


「ふむ……私もなにか作ってもらいたいが可能か?」


「はい、素材があれば可能です。ああ、素材はあたしが持っているものでも構いません」


「なにを持っている?」


「妖精族用でしたら妖精太陽銀と妖精月銀、妖精銀。そのほか聖銀鉱、魔銀鉱、命晶核、ダークドラゴンの各種素材などです」


 あたしが手持ち素材をあげていくと周囲がざわついた。

 あ、妖精太陽銀と妖精月銀はまずかったかも。


「アウラ様、正直にすべてを話してはいけません」


「ごめん、エリス」


「え、ええ!? 妖精太陽銀と妖精月銀というのは本当なの?」


「お母様、地が出ています」


「うるさい! 妖精太陽銀と妖精月銀はいまだと王家にも在庫が少ないの! どうなの?」


「ええと、どちらも一山ありますが……」


「一山……それって売ってもらえる?」


「構いませんよ。あたしにとっては不要素材です」


「そうよね。妖精太陽銀と妖精月銀なんて妖精族かエルフ族にしか不要な鉱物だものね」


 妖精銀関係って特性上妖精族かエルフ族じゃないと聖銀に劣る鉱物でしかないからね。

 ここで全部押しつけてしまおう。


「そうなりますよね。フェアリニウムゴーレムを倒したあと、解体したらたくさん出てきて困っていたんですよ」


「……フェアリニウムゴーレムって妖精太陽銀と妖精月銀を持っていたかしら、軍務大臣?」


「いえ、聞いたことがありませんが……本当にフェアリニウムゴーレムだったのか?」


「フェアリニウムゴーレムでした。18メートル級でしたけど」


「なるほど、フェアリニウムゴーレムの変異種ですな。それならば持っているかもしれませぬ」


「どちらにしても希少な妖精太陽銀と妖精月銀の入手先が見つかって助かったわ。……そういえば、エリクシール。あなたの装備って妖精銀で作ってもらったの?」


「いいえ、妖精太陽銀と妖精月銀を使ってもらいました。このドレスだって妖精太陽銀と妖精月銀を一部使っていますよ?」


「え?」


「このドレス、素材は金属です。護衛の者たちに聞けばわかりますが、剣で切りつけてもシワひとつつかず衝撃音すらなりません。また、洗濯をしても皺にならず、シミまでつかない超一級品です」


「そのドレス、私もほしいんだけど」


「私の一存ではなんとも。アウラ様?」


「うーん、あたしひとりじゃうまく作れないしヘファイストス頼りかなぁ」


 金属布、ヘファイストスの補助がないとうまくいかないんだよね。

 きっとなにかコツがあるんだろうけど、それをつかむまでは何度も練習あるのみかな。


「ヘファイストス、どう思う?」


『我は構わないが、相当な数を作らなければならないのではないか? デザインが足りなくなるぞ。我もドレスのデザインには詳しくない』


「デザインなら私付きの専属デザイナーに描かせるわ! 美しさだけではなく守りまで考えられたドレス。これは一生物よ!」


 女王陛下、舞い上がっているなぁ。

 そんなに嬉しいのか。

 あたしは下着も含めて普段使いの服にしてしまっているけど。


「それで、女王陛下。私の装備の対価についてなのですが」


 あ、エリスが冷めた声で呼びかけた。

 これには女王陛下も冷や汗をかいたみたい。


「あ、ああ、うむ。それほどの装備をもらっておいて対価を支払わないのは問題だな」


「私が持っている別荘のひとつをアウラ様に差し上げてもよろしいでしょうか? それから、いまは貸与となっている私のイヤリングも正式に差し上げるということで」


 え、別荘?


「別荘については構わない。それでも釣り合わないが、そこはエリクシールが考えよ。しかしイヤリングはいいのか? それは本来娘が生まれたときに送るものだぞ?」


「娘ができたときはその時にまた考えます。いまは私の半身であることを証明するイヤリングを持っていてもらいたいのです」


「そういうことならば了承する。アウラよ、明日以降で構わないので妖精太陽銀と妖精月銀の査定を頼む。本当だぞ! 頼むぞ!」


「お母様、また地が出ています」


 なんだか賑やかな感じになってしまったけど、謁見は無事に終了した。

 女王陛下もなんだか愉快な人のようだね。

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