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1. 白天使族のアウラ、灯火と出会う

「ああ、この遺跡もダメか。もう、10カ所連続で外れなんですけど!?」


 探っていた遺跡を出て周囲の安全を確認したら、あたしは思いっきり叫んでしまった。

 あ、あたしはアウラ。

 ローズブロンドの髪をレイヤーカットにした美少女

 青瞳に健康的な頬の色、白い翼を持つ白天使族で21歳。

 でも、身長が低いからもっと幼く見られがちなんだよね……。

 天使族って17歳くらいで成長が止まるから、これ以上背が伸びることを期待できないし。

 それなのに胸はEカップもある程大きく育ってくれちゃって。

 ルインハンターなんて仕事をしているからには、体を覆うようなゆとりのある服なんて着られないし……野郎どもの視線がガンガン突き刺さる。


「それにしても、連続10カ所失敗だなんて。10歳の頃からルインハンターをして遺跡を回っていたアウラ様の名が泣くよ」


 あたしは10歳の頃からルインハンター、つまり世界各地にある古代魔法文明の遺跡にある遺物を狙って探し出す発掘者の仕事をしている。

 お父さんもお母さんもルインハンターだったし、あたしがルインハンターになること自体は不思議じゃなかった。

 もっとも、10歳で遺跡のトラップにかかってお父さんとお母さんからはぐれてしまい、ひとりで生計を立てることになるなんて思ってもみなかったけどさ。


「さて、今日はどうしよう? もうちょっとで日が暮れ始めるしキャンプ地を探すか、もうひとつ遺跡を見つけてそこで休むか」


 遺跡の中ってトラップに気を付ければわりと安全なんだよね。

 モンスターもあまり棲み着いていないし、いたとしても数匹程度で倒してしまえばいなくなる。

 新しいのが湧き出してくることなんて()()()遺跡じゃないとあり得ないから、そこも遺跡を巡る基準になるんだ。

 あ、死んだ遺跡って言うのはすべての機能が停止した遺跡のこと。

 死んだ遺跡にはまともな遺物がない、というか保存装置も壊れているから大抵経年劣化で壊れている。

 しかも生命維持装置も壊れているから、遺跡の中を歩くだけでも命がけ。

 毒ガスが漏れているだなんてこともよくあるし、そういったものを好むモンスターがうじゃうじゃ湧いていることもある危険地域なんだ。

 ともかく、死んだ遺跡には近づいちゃダメ。

 これがルインハンターの鉄則。


「次の遺跡はどこがいいかな?」


 あたしはこの森林地帯に来る前に立ち寄った、フィラスティの街で買った遺跡の地図を取り出す。

 この森林地帯を訪れるルインハンターの多くが買っていく地図だと言うが、これを目印にハントをするハンターも多い。

 なぜなら、ここに書かれている遺跡は基本的に生きていてまだなにかある可能性がある遺跡だからだ。

 逆にこの地図に載っていない遺跡は死んでいるか未発見の遺跡ということになる。

 未発見の遺跡ならお宝がザクザク手に入る可能性もあるし、死んでいる遺跡だった場合は深入りすると命が危うい。

 この地図は文字通りの命綱なんだ。

 森には危険なモンスターが出没する地域もあってそれも記されているし、本当にありがたい地図だよ。

 ときどきこれを買わないでこの森林地帯に足を運ぶルインハンターがいるらしいけど、そういった連中が帰ってきたところを見たことがあるのは稀だそうな。

 脅し文句も含まれているだろうけれど、安心をお金で買えるなら安いものでしょ。


「うーん、この側にいい遺跡がない。山肌に出てキャンプ地を探してみる?」


 私がいる場所は森林地帯の中でも山になっている部分。

 いまの季節は春先だから街に戻らなくても大丈夫。

 白天使族の私は空も飛べるから空に舞い上がって木々の上から周囲を見渡してもいいんだけど、飛行型のモンスターも多いんだよね、このエリアは。

 さすがに空を飛ぶのは避け、近くにあった山肌に出てみる。

 ここって地面がせり出した崖になっているんだよね。

 上り下りできそうな突起もないし落ちたらあの世行きかな?

 あたし、飛べるから関係ないけど。


「うーん……ここから見てもよくわからない。とりあえず崖の下まで降りてみようかな?」


 軽く空に舞い上がり、崖から飛び降りてゆっくりと下を目指す。

 崖の下はやっぱりなにもなく、途中からは滝になっていてさらに上り下りなんてできたものじゃない環境になっていた。

 そして滝の側を降りていく時、滝の向こうで遺跡特有の魔力光が光ったのが見えた。


「あ、あれ? こんなところに遺跡? ……地図には書いていない。つまり未発見か死んでいる遺跡」


 ルインハンターはもれなく『魔導カンテラ』という遺跡に反応して光を放つ魔導具を持っている。

 それはカンテラ自身が光るだけではなく、遺跡の入り口を光らせることもできるんだ。

 ただ、このカンテラ、遺跡が生きているか死んでいるかまではわからない。

 勇気を持って飛び込んでみるか、安全をとって無視するべきか……。


「……今日はまったく収穫がなかったし入っちゃおう! 死んでいるようならすぐに逃げ出せばいいし!」


 あたしは自分自身を奮い立たせるように気勢を上げ、滝の裏にある洞窟へと入っていった。

 遺跡の中に入ったところ、通路に証明がどんどん点いていったので死んだ遺跡じゃなかったみたい。

 賭けの一段階目は成功だね!

 とりあえず、あたしは光に導かれるまま通路を歩いて行く。

 途中途中に部屋みたいなものはあったけど、入り口が押しつぶされていたりドアが壊れていたりで一切開かなかった。

 私が見るに古代魔法文明初期の遺跡なのに残念。

 古代魔法文明初期の遺物ってなると高く買い取ってくれるんだけどなー。

 部屋や脇道には入れず終いでどんどん先に進むと大きな広い空間に出た。

 そしてそこに飾られていたのは真っ黒い巨大なゴーレム!

 高さは20メートルくらい!


「やった! エンシェントフレーム! 動けば数十年働かなくていいだけのお金が手に入る!」


『エンシェントフレーム』とは高さ10メートル以上の人が乗り込んで動かす魔導騎兵を指し示す総称。

 自国生産している国もあるらしいけれどそういった国だって20メートルクラスのエンシェントフレームなんて作れないはずだよ!

 動かなくても運び出せば30年分くらいの生活費にはなる!

 そうキラキラした目で眺めていたらどこかから声が聞こえてきた。


『ふむ。今回のレディはなかなか活発なようだ』


「え!? 誰!?」


『我の名はヘファイストス。かつて作り出された、巨兵を生み出し巨兵を修復するための巨兵』


「え? じゃああなたって、あの巨大エンシェントフレーム?」


『〝エンシェントフレーム〟というものが機械兵を指す言葉であればそうなるな』



 え、ええぇっ!?

 言葉を話し理解するエンシェントフレーム!?

 それって『マナトレーシングフレーム』以外あり得ないじゃない!?

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