39話 管理者を殺す為のモンスター
「操り人形!」
タクヤが糸で操る本当の操り人形がロボットへと向かう。
そして、ロボットは異能を使う。
能力は作られたり与えられたりする力。
異能は己の力で手に入れる力。
異能は自分にあった能力であり、能力の完全上位互換が基本。
そして、ロボットの異能は【無炎】。
無色の炎が徐々にタクヤに近づく。
◇
「あらあらあらあらあらあらあら!」
「くっそが!」
「当たりません!」
獣人の女と皐月が戦っていた。
相手は小柄で、それを活かした見事な機動力で攻撃をしていた。
皐月の攻撃は躱し、受け流していた。
皐月は強い。しかし、乱暴なのだ。それはまるで怒り狂う子供のように。
力と言う暴力、その力で生み出す速力、自前の防御力。
その戦闘には圧倒的なアドバンテージを持っている皐月だが、それを扱えるかは当人の能力しだい。
皐月の戦い方は正に子供、木の棒を持ったチャンバラだ。
武芸の心得がある人が見れば滑稽過ぎて笑い、腹筋が壊れるだろう。
それ程に暴力的で幼く、相手にとっては相性が最高だった。
対皐月用のモンスター、皐月はひたすら攻撃を耐えて反撃をし、カウンターをくらっていた。
「お前の攻撃は軽いんだよ!」
「お前が硬いんだよ! この堅物女! そんなんじゃ子も産めんぞ!」
「戦い中に変なこと言うな! これでも乙女だぞ! 傷つくぞ!」
「肉体も傷つけよ!」
顔面に何発もパンチを受けても一切怯まない皐月に苛立ちを隠せない獣人。
「仕方ない、か。あんまり使いたくないんだけど」
獣人は皐月から距離を取るが、瞬時に皐月が接近して大剣を振るった。
「少しは時間を寄越せ!」
大剣を受け流し、獣人の横側に落ちる。
その威力は正に災害、ダンジョン内部である筈なのに、地面が抉れる程の威力だ。
「しかし、切り返しも弱いな。そんなんじゃモテんぞ」
「それはお前もだろ絶壁!」
「おいコラ! お前今どこ見て言いやがった!」
獣人はメリケンサックを装着し、皐月の顔面に全力のフルスイングを決める。
異能で筋力が最大まで高まり、強化されている。
皐月が少し後ろに飛ばされる。
「くっ!」
皐月から鼻血が出るが、骨は折れていなかった。
「まじかよ。武器が壊れたよ」
メリケンサックが圧力に耐えれず、壊れた。
「骨も固いのかよ」
「皐月の肌は鱗だ!」
「知ってるわトカゲもどき!」
「両生類と一緒にするな!」
「それはイモリ! 井戸を守ると書いてイモリ! 爬虫類だわこのバカ!」
仕込み刀がある靴で踵落としを放つ獣人だが、それを皐月は頭で受け止めた。受け止めた、かは疑問であるが。
仕込み刀が砕け、皐月は相手の足を掴む。
「これでも避けれるかな?」
「控え目に言って、超余裕!」
大剣を振るわれるよりも速く、獣人は足をグリンと回転して肉と骨をちぎって脱出する。
「我が声に応え、我が損傷を癒したまえ、マイヒーリング!」
空中にいる間に詠唱を終わらせて、魔法を発動させて足を再生させる。
皐月は相手が着地する時には目の前におり、大剣を両手で縦に一閃する。
「バカの一つ覚えね! ま、バカだけど!」
「バカバカって! バカって言う方がバカなんだよ!」
「あんたは四回言ってるわよ!」
背後に回った獣人は気功を使い、拳に気を込めて皐月の背中にメリケンサックの拳を正拳突きで突き出した。
しかし、そこには鎧があり、皐月のバランスを少し崩しただけだった。
獣人は屈んで、足を引っ掛けて転ばせる。
仰向けに倒れそうになる皐月に対して、画面に肘を落とす。
「つっ!」
顔面を肘で殴った瞬間に、獣人はシュッとすぐに下がる。
獣人の威力も相当で、皐月を地面にめり込ませる事には成功した。
土煙が晴れ、皐月がゆっくりと立ち上がる。
「ふひぃ。流石にさっきのは聞いたよ」
「それにしては、外部的損傷がまったくないんだけど?」
「皐月には自己再生機能があるんだよ」
「そんなの知ってるよ」
「凄いな!」
敵に対して純粋な思いで褒める皐月だが、皐月は相手の、金栗のアビリティの話を聞いている筈である。
なのにこの本心から褒める皐月。
(ほんと、バカだなぁ)
「な、なんだその目は」
「いや。なんであんたはあんな男に付いているのか気になってね」
皐月は大剣を下ろす。その姿に再び獣人は「バカ」と思った。
「ロードのことか? そうだな。やっぱり親であり主であり、なんと言うか、大切な存在なんだよ」
「そう言う性格や価値観で作られたかもしれないのに?」
「皐月は、皐月が生まれてから、ダンジョンで育ち、自分の意思で、ロードをロードと決めたんだよ」
「作られたってのに?」
「⋯⋯さっきから何を言ってるんだ?」
「え?」
「いや、さっきから作られた作られたって」
「いやでも、親って、しかもモンスターだし」
「確かに、皐月達はロードのダンジョンエナジーで生まれた。だからロードを親だと称した。だけど、皐月達は別に作られた訳じゃないぞ?」
「は、は? 何を、言って?」
「そこは知らないのか!」
相手が知らない事を知った皐月はとても上機嫌になった。
天音達が成る可く仲間内でも広めなかった事を、それは金栗のアビリティにも引っかからない程の事実を、皐月は漏らした。
「皐月達は『ダンジョン』に寄って生み出された『管理者を殺す』為の『生物』だったんだぞ」
「は、はぁ? ダンジョンに寄って? 管理者を殺す? ⋯⋯ごめん、貴方頭大丈夫?」
「む! 事実だぞ! 姉ちゃんも皐月も!」
(え、どういう事。ほんと意味が分かんない! ダンジョン? ダンジョンって管理されているダンジョンだよね? そのダンジョンが、管理者を殺す? なんで? え、てか姉? 皐月って姉と言う存在居たっけ?)
混乱する獣人。
「さて、無駄話は終わりだ! 行くぞ!」
「そうね。本気、出すよ」




