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34話 激戦

 ダークエルフが電光石火の如きスピードで俺に接近して来る。


「そろそろ本気で行きましょう」


 ダークエルフが短剣で雷撃のような斬撃を俺に向かって放つ。

 その速度に俺はギリギリで反応する。


 速い。

 これはただの速さじゃない。

 武術の歩行法や幻術系を使っている。

 他にも強化系の能力や魔法を使っいる可能性があるな。


「鮮血を吸え、ブラッドイーター」


 俺の頬を薄く斬った短剣は、頬から飛び散った血を吸収して赤き光を放つ。

 攻撃した後の隙が出来るが、相手は人間ではない。

 攻撃した後の動きですぐさまにバックステップした。


「「「「ッ!」」」」


 四人の怒りが周囲を埋め尽くす。

 漏れ出る魔力が大きいな。それは危ない。

 他の人にも気づかれる可能性がある。


「落ち着け! こんなんすぐに治る」


 それよりも重要なのが、自動防衛のシールドが出てこなかった事。

 つまり、あの短剣は自動防衛の防御範囲外の威力がある。

 防具に寄って俺の皮膚もかなりの耐久がある。


 魔力もあるし、簡単に俺の体は傷つかない。

 そんな風に出来ちまってる。

 だからこそ、頬を薄く斬られただけでも驚きなのだ。

 それに関しては短剣の性能もあるだろうが、ダークエルフの性能の方が大きい。


「ロードに、良くもおおおおお!」


「皐月さん、落ち着いて!」


 ミツルが皐月に腹パンして何とか止めた。

 しかし、俺の体が斬れると言うならやりようは十分ある。

 俺はメッセージのスペルカードを使って、皆に指示を出した。

 手を出すな、と。


 ダークエルフは俺に向かって閃光を纏った針を放った。

 それは少し右寄りで左に避け易いように成っていた。

 分かりやすい誘い方だ。


 しかし、俺はそれに乗る。

 左にスライドステップして避けると、瞬時に俺の前に肉薄するダークエルフ。

 俺の喉を狙った右の短剣が伸びるが、後ろに下がって躱す。

 左の短剣が伸びて右側から迫って来る。


 短剣の持ち手にチェーンが付いており、射程が伸びているようだった。

 俺はチェーンの部分を狙って紫蘭を振るい斬ろうとする。

 しかし、カキンと言う金属音を鳴らして弾くだけで終わった。


 これはチェーンが硬いんじゃない、柔らかいんだ。

 硬いだけなら斬る事は可能だったが、柔らかいと上手く斬れない。


 チェーンから手を離したダークエルフがすぐに俺の懐に入って来る。

 弾く為に使った紫蘭はまだ刃の向きを変えれてない。

 ダークエルフは隙だらけの俺の腹を短剣でぶっ刺した。


「ガハ、思っていた以上にいてぇじゃん」


「これで捕まえたつもりですか? 愚かですね。分かりやすいですよ。ブラッドイーター、血を吸い付くせ!」


 相手の短剣が怪しく赤い光を放ち、体の血流が短剣の方に流れて行くのを感じる。

 痛みと気持ち悪さを感じるぜ。

 皐月が怒りに目を染めて大剣を構えるが、ヤユイが止める。

 タクヤとミツキは冷静だ。


 やばいな。少し、意識が薄れて来た。


「これで、終わりですよ」


 血の流れが加速する。


 ◆


 侵略者に対して菜々美が戦っていた。

 迷宮と言う壁に囲まれた空間を活かしてアクロバットな動きでショートソード二本で攻撃している。


「ふむ。菜々美、でしたっけ? 貴女の特徴もきちんと把握してますよ。貴女の特徴は何と言ってもその『加速能力』。機動力が高く、耐久は低い。止まらない加速は正に脅威」


 侵略者は淡々と言葉を漏らす。


「しかし、それはあくまで体質である異能ではなく、外部的な力、能力に過ぎない。そして、私の前で能力は意味が無い」


「ぬお!」


 加速した菜々美が減速した。

 正確には能力が消えたのだ。


(大丈夫、技術で押し切る!)


 菜々美はショートソードの連撃で侵略者を攻撃する。

 その斬撃の速度は常人では目視不可。

 正確に急所を狙った突きと払いは完璧に躱される。


 フェイントを使っても見破られて躱される。

 攻撃が当たっても、武器や防具で防がれていた。


「自分の事を把握してませんね。貴女の強みは『速度』ですよね? 加速無く、速度が乗ってない貴女の斬撃はSクラス、控えめに言って、雑魚なんですよ」


「⋯⋯お前は私を怒らせた」


「簡単に怒るんですね。異能も使えないただのモンスターが」


「異能異能って、結局は己の素の強さのみがこの世では重要なんだよ!」


「フッ、それを含めても貴女は弱い。異能も持てない程度の強さでは。異能を持つモンスターが多いと思っていたんですが、最初の人型モンスターが貴女では⋯⋯興冷めですよ」


 ショートソードをクロス斬りで振るうが、それを長剣で防ぐ。

 そして腹に向かって蹴りを放つ。

 残像をも残す速さを持った蹴りを菜々美はギリギリで躱す。


(速い。能力を封じる⋯⋯異能。厄介だけど、まだ負けてない。私は『あの事件』を知らないし体験してない、若輩者だ。だけど、任された役目は果す)


「もう、飽きましたね。終わりましょうか」


「え」


 長剣をしまい、一瞬で菜々美に肉薄した侵略者。

 侵略者は菜々美の右手を握っていた。

 菜々美は奥底の本能から恐怖を感じていた。


「じゃ、さようなら」


 悪魔の笑みを浮かべる侵略者は一言、呟く。


「砕けろ」


 その一言で、菜々美の体は徐々に崩壊して行く。

 これが、彼女の異なる能力、異能である。

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