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19話 絶望の憤怒

 お、おかしい。

 さっきまで追い掛けて来たドラゴンが見えなく成った。


「疲れた」


 私は一息付く為に壁に背中を預けで休憩する。

 喉が乾いた。昼食も食べてないのでお腹も空いた。

 安心感が出ると一気に空腹などが襲って来る。

 ただ逃げて逃げて、今はもうどこか分からないよ。


「怖いよ。お父さん。お母さん。お兄ちゃん。美優、真優。天音」


 私の家族や幼馴染、友達の名前を次々にあげていく。

 心細いから知っている人の名前をあげて心に余裕を保っているのだ。


「さて、行きますか!」


 ただ止まっていても何も解決しない。

 先に進むしかないんだ。

 ここが1番上じゃなかったら、上に行ける魔法陣がある筈だし。

 そこに乗ったらボス部屋の扉の前に出れるらしいし。


 1度大きいモンスターから逃げたんだ。

 今の私なら問題ない!

 そんな時、遠くから声が聞こえた。


 ◇


「邪魔だあああ!」


 目の前に大量のモンスターが現れるが、それを全てなぎ倒す。

 紫蘭を振るい、相手を一撃で屠って行く。


「こんな所で時間を奪われて溜まるか。千秋、千秋!」


「天音!」


「千秋!」


 良かった。生きてた。

 良かったよ。


「帰ろう、千秋」


「うん!」


 千秋は俺に近づいて来る。

 俺も近づく。

 何とか無傷で生きていたようだ。本当に良かった。

 取り敢えず、千秋を回収してここを出よう。

 そしてダンジョンラグナロクが継続するようなら無視するが、終わるなら攻略しよう。

 まずは千秋の家族に千秋を渡して、安心させよう。


 きっと千秋も怖い目にあっただろう。

 だから、皆で、千秋を励まそう。

 だからさ、お願いだ。

 止めてくれ。


「止めろぉぉおおお!」


「ど、どうしたのあま、ね?」


 千秋の背後に出現したゴースト。

 鎌を振るい千秋の心臓を貫いた。

 腹から見せる銀色の刃を千秋は焦点の合わない目で見る。


「え、あ」


「くそがああああああああああぁぁぁ!」


 俺は紫蘭を投げて、ゴーストを貫いて倒した。

 千秋がグランと揺れて、地面に倒れる。

 地面に完全に倒れる前にキャッチした。


「スペルカード、爆回、発動!」


 大丈夫、これで回復する筈⋯⋯なんで、なんで回復しないんだよ!

 あの程度の力しかないゴーストが呪いをかけても、これで問題ないだろ!

 なぁ! なんでだよ。

 なんで回復しないんだよ!


「回復、発動。極解呪、発動、超速再生、発動、りん」


「だ、いじょ、うぶ」


「何が、大丈夫なんだよ」


「たすけに、きてくれ、て、ありが、とう。いつも、たすけ、て、──て、⋯⋯う。あ⋯⋯」


「千秋、千秋! なぁ、起きてくれよ! なぁ!」


 なんで回復系の魔法が効かないのか。

 それは、この迷宮が原因だった。

 はは。全部、ここの管理者の掌の上だったって事か。


「俺を、千秋を、ここに誘導したんだな」


 ダンジョンは自身を維持する魔力を流している。

 そして、この迷宮は迷路のように成って魔法陣にも成っている。

 巨大な魔法陣にそれが行使出来る魔力がここにある。


「全部、これの為か、なぁ」


 千秋、ごめんな。俺のせいで。


「助けて貰ったのはこっちもだよ。小学生の時、俺の方が身長低かったよな。その時、高い場所に手が届く千秋は輝いて見えたよ。いじめられていた時、俺は全然平気だったけど、注意して、いじめから解放してくれたよな。ありがとう。なぁ、千秋。また、家族合同旅行したくないか?」


 小さい頃からずっと一緒で、それが当たり前で、それが普通だと思っていた。

 人は、特に能力者でも無い人は本当に、本当に簡単に死ぬ。

 こんなクソみたいな事に巻き込まれて、死ぬなんてアリかよ。

 千秋が何をした。

 小学の時は俺よりも大きくて、逞しくて、頼りになった。

 管理者としての生活、管理者の力を隠しての生活。


「千秋、なんで笑ってんだよ」


 なんで笑って逝けんだよ。

 俺は悲しいよ。涙が止まらないよ。


「⋯⋯大丈夫。千秋、俺はお前を助ける。絶対に」


 制限時間は24時間。

 俺のダンジョンに千秋をまずは運ぶ。


「スペルカードクラフト」


 目の前に半透明のウィンドウが開く。

 そこのプログラムがある場所の上の方の検索をタップする。

 魂と検察すると魂関連のプログラムのみになる。

 俺はそのプログラムをメイン画面に動かす。


「作成」


 1枚のスペルカードをこの場で作成した。


「スペルカード、ソウルロック、発動」


 まだ千秋から魂は抜けてない。

 千秋に魂を固定する。


「絶対に許さない。来い、皐月、ベヒ、ミナ、サモン」


「来ましたよ! ロード」


「何用ですか、マスター」


「何用でも致します」


 皐月、そしてベヒモスのベヒ、戦闘用人工人間冥土(バトルオートマタ)の隊長であり総括、バトルオートマタ最強のミナを呼んだ。

 ベヒモスは大地龍族だ。


 かなりの巨体だが、ここではそこそこ小さめの地龍となって貰っている。

 ダンジョンの中でも相当の力を保有しているベヒとミナ。

 そして、最強クラスの皐月である。


「俺は、このダンジョンを攻略する。ベヒ、千秋を運んでくれ。ダンジョンに運ぶ。ここから強制的に出ようとすると魂に何らかの被害が出るかもしれないからしない。上には行かない。ここの管理者に会わないといけないからな。ベヒ、絶対に守れよ」


「ッ! 御意! 魔物王(モンスターロード)の名に掛けてこの命を確実に遂行致します」


「ロード、本気なんだな。なら私も十二星騎士の1人、暴君者(デストロイヤー)の名に掛けて、皐月も本気でロードの望みを叶えるよ」


「ベヒ様に皐月様が居ると見劣り致しますが、戦闘用人工人間の長、ミナ。天音様のお望みのままに、我が身は動きます」


 様々な役割や役職がある。

 今はどうでも良いな。


「俺の目的はただ1つ、ここの管理者を──」

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