17話
道を進んでいると目の前から30人のリザードマンが現れる。
いや、正確にな竜人族か。
龍人族の進化前。
「悪いが、今の俺は手加減なんてしないぞ」
クラスで言ったらSくらいか? そんなんで俺を止められると思うなよ。
俺は1枚のスペルカードを取り出す。
周囲に人の気配はない。だったら使っても問題ないな。
「スペルカード、ヘブンズゲート、発動」
スペルカードを掲げると、上に大きな扉が開く。
「天へと誘え!」
大きな扉がゆっくりと開き、相手の竜人族は翼を広げて俺に向かって飛んで来る。
そして、1人、また1人と扉の中に吸い込まれるように入って行く。
相手に幻覚を見させて中に入れ、1度中に入ったら簡単には出られない天国への扉。
数時間天国に居るとそいつの魂は文字通り天に帰る。
30人の竜人族が居なく成ってから、俺は扉を閉じた。
扉は役目を終えると消えて行く。
大技のスペルカードは少ない。
移動しながら作る器用な事は俺には出来ない。
「スペルカード、紫蘭、解放」
刀身が紫色の刀を取り出し、俺は地を蹴った。
「我に正しき道を示せ、スペルカード、正式の矢印、発動!」
分かれ道が数本ある場所に出たので、スペルカードを発動させる。
目の前に行くべき道の矢印が出るので、俺はそれに向かって進む。
「千秋!」
目の前から霊体族と思われるモンスターが数体現れた。
『『『『シャドウボール』』』』
黒い玉を生産して俺に向かって放って来る。
ゴーストは霊体であり、普通の武器で物理攻撃は意味が無い。
しかし、この紫蘭は様々な物を斬る事が可能と成っている。
まずは横払いし、紫色の閃光を放ち一閃で魔法全てを切り裂いた。
浮いているゴーストに向かって俺は跳躍し、刀を振るい全てのゴーストの体を横薙ぎで切り裂いた。
「スペルカード、水流弾、発動」
壁に向かってスペルカードを発動させる。
人間の魔法士の使う水流弾よりも強く、うちの強い部類の魔法士が使う水流弾よりは弱い水流弾が壁を貫く。
スペルカードは俺だけが作る訳じゃない。
モンスターと協力して様々なプログラムを作成し、そのプログラムをくっつけてスペルカードを作るのだ。
俺の1枚1枚のスペルカードには色んなモンスターの力が加わっている。
まぁ、何が言いたいかと言うと、壁に擬態して不意打ちを決めようとしていたSクラスゴーレム程度なら即死させられると言う事だ。
「思っていた以上に火力あるな」
擬態を解かせる程度の威力だと思っていたけど、まさか一撃だとは。
俺はSクラスを過剰評価していたのかもしれない。
そんな事はどうで良い。さっさと先に進もう。
1秒でも遅れる度に千秋に危険が迫る。
「くっそ! なんでこんなに無駄に広く作ったんだよ!」
なんともまぁ自己中発言しているけど、今は気にしている余裕が無い。
速く、速く千秋の下に行かないと。
千秋はアビリティがないんだよ!
「ようこそ、雨宮天音様」
「ッ!」
そこに現れたのは青髪のアサルトライフルを両手に構えたメイド姿の女の子だった。
「戦闘用人工人間冥土、アオリでございます。この度は我が主の迷宮に足を運んで下さり感謝致します」
「何の用だ?」
「それは決まっているではありませんか。古き最強様はこの世からの退場をお願いしに来ました。呑んで下さると言うのなら、貴方の大切な彼女さんは助けて差し上げますよ」
「彼女じゃねぇよ。幼馴染だ。生憎、俺には好きな人が居るんでね」
「それは勿体ない。ま、話を長くして時間稼ぎと思われたくもないので、さっさと殺されてくだいさまし!」
「スペルカード、リフレクター、発動!」
1秒毎に200発の弾丸が俺を襲って来るが、反射の壁を生成してその全てを一度止め、反射する。
「ほぉう。流石ですね」
反射された弾丸を弾丸で撃ち落とすアオリと名乗ったメイド。
さらに、放った弾丸と弾丸をぶつけて反射させ、リフレクターを超えて俺を襲って来る。
俺はリフレクターを解除して前に進む。
「あははは! そんなに速く移動しても私には追いつけませんよ〜!」
後ろに大きく下がるアオリ。
下がりながらも確実にエイムを合わせて俺に向かって放って来る。
もうこいつバトロワゲーやれよ。
「だったら、これならどうだ! エンチャントスペルカード、亜空切断、発動」
紫蘭に灰色のオーラが纏う。
何故相手が俺の事を知っているのか、俺が管理者だと知っているのか、それは分からない。
それに、どうでも良い!
今、重要なのはさっさと倒して千秋を助けに行く事だ。
「お前らが俺の何をしているのか知らんが、今は時間がないんでな!」
紫蘭を振るい、空間の距離を無視した斬撃がアオリの首を狙う。
「そんなあからさまな攻撃、当たるとでも? 少し残念ですよ。この程度だな⋯⋯なん、で?」
「亜空切断は距離を無視しての斬撃を与える事の出来る技術能力、本来なら1本の斬撃。残念だったな。俺が相手で」
スペルカードの場合は発動効果時間が存在する。
つまり、発動効果時間以内ならいくらでも斬撃を与えられる。
アオリの体がバラバラになって消滅する。
俺はそれを一瞥する事無く先に進む。
「すみません。主、よ」
アオリの体は完全に消滅し、その魂事ダンジョンエナジーへと変換された。




