核心
第三話
心配は無用だった、美佳からは定期的にベルがなり
こちらから電話をするという事を繰りかえしていた。
次第に慣れていったが、敬語はそれほど減らず、
美佳がそれに慣れてくれていた。
「ところで、真さんは結婚していたよね? 」
その話題は突然やってきた。
別に避けていたわけでは無く
最初の伝〇ダイヤルのメッセージで
「神戸在住 既婚32歳」って履歴書みたいな
メッセージを入れいた。
だから、隠していたわけではなく
正直に伝えていた。
既婚をアピールしているわけでは無い、
ましては出会い系を肯定しているわけでもない。
間違いなく浮気だと思っているが
この時は立場もわきまえず
舞い上がっていたので罪悪感がなかった。
いままでの電話だけでのおしゃべりだからと
友達ですとは言い訳出来ない。
完全なる浮気と言われるだろう。
なぜなら、明らかに女性として私は美佳に好意を
抱いていたからだ。
「そうですよ、しています」
「聞いていいのかな・・美佳さんは? 」
「真さんお子さんは?」
(ん?こっちも聞いてるのに、また質問 )
「いますよ3人」
「3人も?すごい32歳で3人もいるの?」
「結婚が早かったからね、二十歳で結婚したんです
それで二十三歳の時に一人目が生まれたんです」
「すごい、二十歳で結婚なんて、ふつうは
できちゃった婚じゃないの?」
「そうじゃなかったんです、たまたまの
タイミングがそうだったんです」
「奥さんはいくつ?」
「上です5歳上です、正確には4歳半」
「5こ?すごい」
(なんか、バカにされている?そうじゃないよな?)
「お子さんはいくつなの?」
「子供は9歳8歳4歳です、男女男ですね」
「わー!お父さん・・パパだね」
「私もパパって呼ぼうかな」
(本気なのか?冗談だよな?)
「それで、美佳さんは? 」
「私もしているよ、高校の同級生、私たちは同じ年」
(同級生はだいたい同じ歳だとおもうのだが…)
(やっぱ間接的に姉さん女房をイジられている?)
そんな、お互いの夫婦感を話し
この日は終わった。
こんな話をしたので
これは、やっぱり浮気だよな、けど電話だけだし
友達、うんそうだな、ともだちだよなと
私は勝手な納得をしようとしていた。
色々と言っているが、間違いなくこれは今でいう
W不倫というもの
お互いに旦那様、奥様が居てるのに
こんな事をしている。
人を裏切りながら自分たちはこんな事をしている
許されるわけがない事を!
のちにいろんな事があったしても
この時、これからも許される事ではなかった。
しばらく、ベルが鳴らなかった。
(やはり3人の子持ちは嫌だよな)
何人であれ、妻子持ちには違いない
そう、思っていた時にベルが鳴った。
「もし、もし、こんにちは!」
いつも、この瞬間が緊張する
アルバイトの人が出たらどうしようとか
お客さんがいたらどうしようとか
「パパ元気してた?」
「本気でパパって呼ぶつもり?」
(ふざけているのか・・な )
「パパね私もポケベル買ったの、
ケンちゃん(旦那様をそう呼んでいる)と一緒に」
「そう、ならこっちからもメッセージ送れるね」
「そうだよ、ベルでいつでも会話ができるんだよ」
この時のポケットベルは数字変換で文字
(カナ・アルファベット・定型など)
が送れたけど、面倒だから数字でごろ合わせして
送る事が多かった 。
女子高生などは、ほぼ数字語呂合わせで
送っていたと思う。
たとえば『49106』至急TELとかね
「パパも送ってね、番号送っておくからね」
(あの、パパ、パパって既に違和感なく
呼べるのはなんなんだろう)
美佳の性格が許せるのだろうか…
こういうところも可愛いと思える
電話だけで次第に惹かれていっている
旦那様と一緒にポケベルを持つことになったのは
なぜか 正直やきもちを焼いてしまったが
持つのは当たり前の事だった。
二人だけの世界なんて許される訳もなく
誰も許してくれる訳もなかった。
自惚れかもしれないが
ただ、間違いなく私の近くにいてくれている
気持になっていた。