よくあるファンタジー
投稿テストです。
めんどくせぇな、と今でも思ってた。
高校1年の頃に交通事故に会って、そのまま即死。そう死後の世界で綺麗な女神が、俺にそう説明した。
今なんかそういうの流行ってるよな、って脳がなくても考えられるんだなって変な感心をした。自分が今、光の玉だって考えたらたら尚更だ。
死んだならしゃーないなってなんとなく達観できた。別に前世に未練なんてないし。
一個だけあった、彼女が出来なかった事だけが悔まれる。が所詮二次元の女の子しか魅力を感じない陰キャだし、まぁ今目の前にいる女神はタイプじゃないけどすっげぇ美人だし。
どうやらお願いがあるとかで、俺が今面会してるようだ。俺の世界とは違う、いわゆる異世界の神様らしい。じゃあここは異世界の天国って事か。
“あなたに、この私の作った世界を救ってほしいのです”
これまたありきたりな事を押し付けがましく言ってるな、とも思った。なんで俺が、とかじゃなく自分の世界なら自分の所で処理しろよ、とだけは伝えた。
それが出来ないと、やんわりと答えてきて、代わりになんでも願い事を叶える、と言われたなら話は別だった。別世界とはいえ不幸な事故で若い命が失われたのは、とても見てられないと。
そんなの俺以外にもいっぱいいるし、俺以上に不幸な奴はいる。とは思っても言えなかった。なんでもって言ったよなこの神様?
とはいえ欲張ったらしっぺ返しを食らいそうと判断して、とりあえず死ぬ前にずっとやっていたゲーム――いわゆるインフレが激しいシューティングRPGだ――の能力を持たせてくれ、ついでにそのゲームで装備してた武器防具――これもインフレが激しくて、100万ダメージ行くやつだ――やアイテムなんか、それも一緒にと。
どうやら、この女神の異世界では日本の伝統的なRPGぐらいの能力ぐらいしかないらしい。HPだけ見てもどうやら世界を苦しめる魔王さんは1万ちょい、こっちはその100倍ぐらいになる計算か。拳銃ワンマガどころか、近接のパンチ一発で終わりそうだ。
とりあえず、その願いは叶えてくれた。そして俺の身体が復元されて、その女神が恥ずかしそうに脱ぎだしたのは覚えてる。あとはお察しの通り。理由は今でもわからなかったが、死んで初めていい思いをしたので何も言えなかった。
そして、その魔王の城が今目の前にある。元の世界のファンタジーRPGにありがちなデザインの城だな、って言うのが最初見た時の印象だった。
この異世界に転生してからもう1年、この世界自体俺には新鮮で、魔王退治と銘打って、色んな場所を巡った。そんな俺の周りには、苦楽を共にした仲間がいる。
最初に転生した城のお姫様、ソフィアはどうやら神聖魔法が使えるという事で、姫という立場にありながら魔王討伐についてきた。この神聖魔法には幾度となく助けられた。魔法が使えない俺――今思えば、それも願いに入れておけばよかったな――には魔法自体綺麗に見えて、俺が銃を撃つ前に、決着が付く戦いもあった。こういう戦い方もあるんだな、って自分の脳筋さ加減に反省をする事も度々あった。
旅立つ際に王様は反対したが、俺に一目惚れしたからどこまでもついていきたいって初めて肌を合わせた夜に聞かされた。そんな健気な青く長い髪の少女を、俺も守りたいとすでに決意していた。
次に、武闘家の依然だ。ある村を救った際に、たまたま居合わせて一緒に救って以来、修行の旅と称して俺たちと一緒に行動する事になった。
もちろん俺と比べたらこの世界の強者は五十歩百歩にしか見えないが、それでもこの依然の体術はソフィアの神聖魔法とは違う美しさがあった。一撃必殺、それが彼女の流派の極意らしいが、それを体得したのは、ソフィアとはまた違う夜の後の事だった。彼女の意志が、俺のだらしない精神を叩き直してくれる。
そう、仲間二人と関係を持ってしまった。前世なら二股野郎と罵られる、それ以上にこんな美人二人と知り合いになれるわけがない人生だったわけだが、この異世界に転生した事を感謝したそれとも女神には伝えてない俺の潜在意識の中の願いを叶えてくれたのだろうか。
なんにせよ、俺にはこの二人を守って、俺のこの相棒の銃で魔王を討ち取って、女神の願いを叶えて、その後はのんびりとこの異世界を満喫しながら生きてくつもりだった。
この将来設計を貫き通すまで、めんどくせぇ、という怠惰な感情は消えなかった。めんどくせぇもんはめんどくせぇしな。
魔王城を見ているその後ろで、ソフィアと依然が今まで無数に行っていた喧嘩を、もう最後の戦いが目の前にあるというのにまたしていた。
原因の大体が俺なんだが、まぁその喧嘩も二人の友情を強くするものだから何も言わない。一回仲裁に入った事もあるが、思い出したくなかった。こういう時、結託した女性というのは怖いって教えてもらった。
こんな二人に、ついでに女神にも、魔王を倒した後に伝えたい事があった。まぁ死亡フラグっていうのが立つのは嫌だから言わないでおこう。
彼女たちの互いへの罵声が納まりつつあるな、と経験で感じた俺は、目の前にある目的のために魔王城に向かって歩き出
そこで私は目を覚ました。
薄暗く、様々な太さのパイプで埋め尽くされた、閉塞感という名前が付くだろうこの部屋が私の視界を、濁った水面越しに埋めてくる。
私の身体は寝かされているようだった。しかも、何か水槽のようなものに入れられている。水中にいるが、呼吸はできている。
その光景以上の困惑が、私の頭を駆け巡った。
目の前にそびえ立っていた魔王城は、どこだ。私の後ろにいた、ソフィアや依然はどこだ。
私の疑問を無視して、低く唸る機械音と、一定のリズムで鳴り続ける機械音が、私が潜っている濁った水を通して私の耳に入ってくる。
その耳を、針か何かが無数に刺さっている感覚があるので、触れようと手をあげてみる。
無数の透明な管が刺しこまれ、そこからこの濁った水とはまた違う、鮮血色の液体が注ぎ込まれている枯れ木が目の前に現れた。
これが私の腕だった。
骨と皮のみ、という言葉は知っていたが、それを目の当たりにするのは初めてだった。
本当に、初めてか?
私は、この部屋を知っている。ここは、私の最終邸宅だ。
この濁った水は、老化した私の生命維持、防腐するための保存液だ。しかし透析は出来ていない。恐らくこの延命カプセル自体故障を起こしているのだろう。
整備用論理機動機群が故障を直してくれるはずなのだが、未だに沈黙を保っている。左側に首を向け、その機械たちを見てみると、数機が無造作に、しかも錆ついて動く気配すらない。備え付けられた待機時のランプすら、点いていない。
この枯れ木に流し込まれている液体、これも私の生命維持のための液体だろう。すでに機能していない私の臓器を迂回して、栄養を私に供給しているのだろう。だが、その目的は果たされていない。枯れ木は、どうあがいても枯れていくしかない、という事を教えてくれる。
私は、死にかけているのか? 魔王も倒さず、ソフィアや依然、女神に自分の素直な思いをまだ伝えていないというのに?
右耳に伝わってくる針の痛みが時間が経過すると共に酷くなるので、再び腕を使い触ろうと試みた。
結論から言うと、触れられなかった。
耳自体がなくなったわけではないだろう。何か機械が取りつけられて、耳に覆い被さっているのは確認出来た。その機械の内部から本当に針が刺さっているのかもしれない。
水槽越しに、逆文字で『Fantasy Real』と映してくるその耳の機械。その針を通して、私の脳に幻想を送り込んでいる、と何故か解釈できた。私自身が取り付けたのだろうか、すでに記憶はない。
この痛みで、私は目を覚ましたのだろうか。いや、あれは夢ではない。私はこんな、老人をも超越してしまった、即身仏のような体をしているわけはない。
両目で、水槽の外に何かないか、頭を動かしながら部屋を見渡す。頭部にも腕に取り付けられているパイプがあるのだろうか、先ほどから動かしづらかった。
部屋の右側、無数のパイプが無造作に流れているその隙間を、無理やりに押し出されたようにモニターがあった。
緑色に発光するその文字は、無機質に、私に事実を突きつけていた。
艦名:Final Frontier Mk.13
艦種:第6世代交代型恒星間宇宙移民船
全長:5,220m
航行期間;2,005年経過
乗員数:54,032,302人(人口増加のため余剰あり)
生存乗員数:1人
状態:致命的
区分:イミテーション型食糧供給ライン完全停止(200年経過)
艦内大気清浄装置破損(190年経過)
整備型論理機動機群完全停止(189年経過)
生命体(雌型)完全死亡(170年経過)
宇宙検閲式特異点炉異常爆発(3時間経過)
現在遂行中任務:T型惑星テラフォーミング/植民化のため探索中
Belda-type MainAI[道標]より直近のクエーサーに目標変更
目標到達まで約10光年(慣性航行)
私には、やはり理解する事は出来なかった。つい先ほどまで、私は異世界で過ごし、その前世は2000年代に生きていた、根暗かもしれないが、どこにでもいるような男子高校生だったはずだ。
なのに、今、私は、宇宙にいる。その文字を信じるなら、私しかすでに生き残っていない。
馬鹿な馬鹿な、馬鹿な。私は全身を使って水槽の中を暴れろうとした。が、すでに筋肉がなくなっているのだろうか、ものの数秒だけ、水槽の中に緩やかなうねりしか作る事が出来なかった。
混乱はしていた、が、間もなく私は平静を取り戻した。腕から注がれる液体が、急激に流し込まれていた。この液体には鎮静作用も含まれているのだろう、冷え切った頭がそう思考する。
経過が、わからない。時間の流れが、わからない。
アレは、夢ではない。私にとっては、現実だ。
今この状況の方が、私にとっては夢なのだ。だからこそ、早く覚めなくては。
モニターが、クエーサー到達まで12光秒だと伝えてくる。
そこにたどり着いたら、何が待ち構えているのか、私には興味がない。
所詮、夢なのだから。
早く目を覚まして、ソフィアと依然と共に、魔王を倒さなくては。
そして彼女たちに気持ちを伝えなくては。
面倒な事など、何もない。あの世界には。
そう決意し、『俺』は目を閉じる。
俺は、異世界に転生して、その世界を救う奴なんだから。
そう、めんどくせぇ事なんて、なんにもない。
というわけで、投稿テストでした。
こちらのサイトの利用は始めてなので、ジャンル分けのやり方とかルビとか傍点とか使う練習で書きました。実際まだよくわかってないです。
以前に思いついてたのを、とりあえず一発書きでやったんですが
今思い返してみればこれ元ネタあるなってなりました、あのEDなんなんだよ…