7話 街を出よう
門へ行くと、プロタイトさんがいた。
あの人はこの街に来て初めて話した人間なので出来ればもう少し交流がしたかったところだ。
と、近くへ来て分かったのだが今日は胸元に社員証?らしきものをつけているな。
「どうも、プロタイトさん」
「おお、あん時の...ユズキか」
「はい。ちょっと依頼を達成しに出るんですが...」
「あぁ、一応通行証さえ見せて貰えれば通すがよ...ここを通る依頼なんてブラッドウルフの依頼くらいしか...」
「いえ、隣国へ運びものがありまして」
「?隣国への運びものの依頼なんて」
「隣国への運びものがありまして」
「今出てな」
「隣国への運びものがありまして」
「...そうかい...いいよ、通りな」
「ありがとうこざいます。またいつかゆっくり話でもしましょう」
「ああ、そうするとしよう」
「それでは」
若干ゴリ押しなところがあったが無事通る事が出来た?
できた筈だ。
というかさっきチラッと見えたがプロタイトさん、本業は門番じゃない様だな。
書かれていた内容はこうだ。
「プロタイト•モルメント
エイガルト王国騎士団団長」
簡素だが分かりやすい。
にしてもあの人王国騎士団の団長さんだったのか...
危ない危ない、無礼な態度を働いたらタダじゃ済まないところだった。
と、後ろでなんだが騒がしい会話が聞こえてきた。
「見つけましたよ団長!またこんな所で門番なんかやって!今日こそはあの山積みの書類、片付けて貰いますからね!」
「げっ、なんでこんな所に副団長であるお前が!?職務はどうした!」
「それは団長に一番言ってやりたい言葉ですよ!私の職務は団長が逃げた時に即座に探しだして捕獲する事です!」
「あぁ〜やめてくれ〜、書類地獄はもう嫌だぁ〜」
ふむ、副団長とも仲が良いとはなかなかいい組織ではなかろうか。
しかしそんな事に考えを割いてはいけない、今はブラッドウルフの討伐に専念せねば。
ついでに覚えたい魔法が山ほどあるしな。
「出たか...」
気がつけば包囲されている。
これは定番のパターンだがまだまだ気配察知の熟練度が足りない事の証明だな。
さて、今日使いたい魔法はこれ!
無属性魔法[固体化]
これについてはウィンドウが教えてくれた。
「[固体化]...液体、気体を固体化できる魔法。強度は魔力の込め方により代わりに、最柔でスライムの様な柔らかさを作る事も可能。最硬では金剛石の様な硬さも作れる」
とのことだ。
つまり、これで鉄壁の鋼鉄も貼れるし、変幻自在の水球も作れるという事だ。
今回は後者を使う。
まずは水魔法で水球を作り出し、そこに[固体化]で微弱な魔力を込める。
すると、プルッとした感触のスライムに早変わり。
さてと、これを後は水魔法で操るのだが...
操れない。
おかしいな、魔道書通りにやっている筈なんだが...
そんな俺の様子を見て遂に一体のブラッドウルフが飛び込んできた。
「ヤバッ...!?」
ギィィィィンッ!
と、突き刺さる寸前の牙を何かが止めた。
そこにあったのは—————水の触手だった。
水の触手は次々とブラッドウルフ達の首を絞める、気管を塞ぐ、水刃に触手を変えて切り裂く、と倒して見せた。
そして、念話で話しかけてきた。
「お前が俺の魂を作り出した主か?」
と。