19話 未検証魔法
第1の戦闘後、俺は体に少しばかりの違和感を覚えていた。
しかし、違和感ならば最近よく感じているため、よくあることと切り捨ててその場は進んでいく。
何せ頭の中で違和感が......や、不思議な感覚......というのはもう既に何度も受けているため、慣れていたのだ。
そして歩き回ること数十分、一向にマップに反応がないためより精密に、意識を集中させていく。
すると、微弱だが魔力反応が少しあった。
しかし、この反応は見るからに魔物ではなく、馬程度の速度で進んでいたためおそらく行商人か何がだと予想する。
いや、それにしても行商人がここ周辺を通っているということは山岩人形は近くにいない、という事であろう。
もっとも、それ以外に興味のあることもないのでこの場を後にすると、少し先の方で山岩人形の反応を見つける。
そして、俺は密かに練習をしていた魔法をここで使ってみる。
まずは、[気配霧散]を使って全体的に霧を蔓延させる。
気配がぽつ、ぽつと生み出されてそれに山岩人形が反応してゆっくりと起き上がる前に、俺はこの魔法を使う。
[霧化]......それは、俺が頑張って人間との適性の低さを超えて覚えた魔法である。
これを人間に対応させる為に術式が多重に多重を重ねた所為でこれを組み立てるのにかなりの時間を要した。
しかし、一度組み立ててしまえばあとは使うだけ、組み立てた術式は光魔法に記録させている為、自由に使うことができるのだ。
霧となった俺に気がつかず、山岩人形は何もない、気配だけの虚空を永遠と殴り続けている。
近くにあった木に拳が当たって、中の方からメキメキと音をたてて折れていたので、おそらくはまともに拳を食らえば酷いことになる事は間違いないだろう。
何せ最強の防御魔法はあと三回しか使えないのだ。
今使うわけにはいかない。
ならば、と俺はもう一つの魔法を使用してみる。
こちらは時間の都合上検証をしていない為発動がするかどうかがわからないものだ。
検証をしなかった理由は、理論上では成功率の最も高い魔法だったからだ。
5つ作った内の3つ検証をしていないが、その中でも最も成功率の高いものを検証しなかったのである。
さて、その魔法とは、一般的にも攻撃魔法として扱われている雷魔法を用いたものだ。
ちなみに、火、水、風、光、土魔法はどれも戦闘用魔法ではなく、生活用魔法として認識を皆がしている為にあの高威力の魔法に気づけていないのだ。
つまり、戦闘用魔法を戦闘用として使う為別にエラーは起きない、と簡単には言うことができる。
まず、[電撃]に、おなじみ[処理能力向上]と[魔法強化]を使い、今回初使用の[集中][魔力隠蔽][地面同化][網状化][複数保管]の4つを使って、合計7つの多重術式により[雷罠]が完成する。
まずは、各魔法の説明をしていこう。
[集中]、これは約2秒間の溜めを入れる事によって、威力を4倍にすることが可能な魔法である。
これは、魔法初級者がよく使う魔法であって、2秒間で4発以上打てる上級魔法使いは2秒の溜めを使うのは死に直結しかねない問題である為、使わないのである。
しかし、今回は罠用の魔法である為、2秒間は前に稼いでおけ、と言う話である。
次に、[魔力隠蔽]だが、まあこれは簡単な話どれだけ強い罠も魔力で感知されてしまっては元も子もないと言う話である。
具体的には、魔力を少しそれより弱い魔力で包み込み、さらにそれより弱い魔力で....と、感知させる表面魔力を微弱にしていって、最後には感知範囲外であるところまで表面上の魔力を薄めていくのが一点、内部魔力の隠蔽方法に関しては説明が長くなるので省略。
そして[地面同化]だが、これは地面と魔力を馴染ませる事によって魔法そのものを地面と同化させて地面の中に魔力を微弱ながらも隠蔽し、さらには地面を魔法感知機能として使うこともできるようになるというなかなかに使い勝手のいい魔法である。
これが要、[網状化]。
網目の細かさや詳細の設定は魔力の込め方によって変化可能であり、この魔法を使うことで踏んだら発動の雷撃トラップを作ることができたと言っても過言ではない。
最後に[複数保管]をについて。
これは、まあその名前の通り魔法を複数保管することのできる魔法である。
これによって2秒間の溜めをほぼ無いような、クールタイムゼロでの発動が可能なのである。
これらの魔法を使って、攻撃...というか罠を仕掛けると、すぐに別の気配に誘われた山岩人形がかかり、雷撃の集中砲火を食らう。それによりよろめき、更に踏んでは集中砲火を繰り返して3回目頃には既に目から光が失われていた。
魔石を取り出すと、俺はそこのトラップを解き別の山岩人形の元へ向かって行った。




