18話 戦闘開始
その表示に驚いた俺は立ち直ると、すぐに解除を試みたが神様が300年かかると言った程の封印術だ。
ただの一般人である俺に解けるはずがなかった。
幾度も幾度も繰り返せど、結果は封印術式に阻まれ終わるばかり。
この最強魔法のない状態があと3回の使用で訪れると思うと今後が不安になっていく。
いや、あと一度発動したらそのスライム姿のままで過ごすのが一番楽なのだろうが、人間の色をしていない人間を人間とほかの人は認めてくれるだろうか。
いや、案外認めてくれるかもしれない。
特に宿のおばちゃんはとても仲良くなっているし、そこら辺は認めてくれるかもしれない。
いや、よく考えたら俺友好関係狭すぎるな......。
宿のおばちゃん、強面の冒険者、ミスラ、北の店長、ギルド受付員、プロタイトさん。
ギルド受付員に関しては業務的関係しかないため、友好関係とすら言えないだろう。
まあ何であれつまり俺には6人くらいしかこの世界に知り合いがいないということだ。
家を建てて、この世界でゆっくりと過ごすという目標こそあれど、あまりにも人と関わらな過ぎたかもしれないな。
つまり、俺の姿を理解してくれるような人は多く見積もって7人。
つまり、最後の一回までは全て解除していかないといけない、という事だろう。
攻撃魔法、作っておいて良かった〜。
そうポジティブに考えてこそいるものの、これは余計なことをしなければ良かった、という思いへの押さえ込みでもある。
いや、分かってはいた。
なんの努力もせずにチート能力を手に入れたところでいつかは失うかもしれないと。
言語理解でも十分過ぎるチート能力だったのだ。
無くてもともと、これからは頑張らなくてはならない。
再生の手段すら封じられてしまった俺には、回復魔法を覚えることも頭に入れる必要があった。
さて、そろそろこんなもうどうにもならないような事を考えるのは止めにして、山岩人形の討伐について考えて行くとしよう。
俺はミスラに説明を始める。
なぜなら、ここからは二人別行動でそれぞれ5体ずつ山岩人形を倒すという約束をギルドでしたからだ。
ギルド受付員は、やれやれ、死んでも知らないぞなんて言いたげな目でこちらを見ていたが。
「とりあえず[気配霧散]を使って、相手からはなるべく攻撃を食らわないようにすることが前提で」
「オーケー。あとは自由?」
「ん〜出来るだけ検証多めで行きたいからなぁ......今回俺が出した魔法メインでお願い」
「はーい。じゃあ色々試しながらやってみるよ」
了承を確認すると、互いに山の別の道から登り始める。
山までは、先程話している間についてしまったのでそのまま進む。
早速大岩を発見。
と言っても、[◯ーグルマップ]に移る魔力反応から、それが山岩人形である事は俺にとっては確かめるまでもない事だった。
攻撃を予定通り始める。
まず、[気配霧散]を使い、気配を撹乱。
その多重な気配に気がついたのか山岩人形はゆっくりと起き上がるが、時すでに遅し。
地面から無数の槍が山岩人形の心臓部分を貫いていた。
途端、山岩人形の目から光が消え、力なくがっくりと倒れる。
これが、山岩人形の弱点、起動術式部位である。
この魔物は、繁殖するようなものではなく、山岩人形の上位種である岩騎士が岩にこの起動術式を書いて作り出す下僕のような存在なのである。
岩に戻った山岩人形から起動術式により生み出された魔石を取ると、バッグの中に入れる。
手の平程度のサイズがあるので、重いのかと思いきや、実は新聞紙くらいの軽さだったりする。
そして、俺は別の山岩人形を探しに行き始めた。
防御力の高さは懸念対象ではあったが、やはり[刺突]に込めた魔力の多さが幸いしたらしい。
さて、次はもう一つを試してみるか.......
———
ユズキと別れて少し経ったぐらいだろうか?
少し遠く離れたところで少し物音が聞こえた。
ユズキが戦闘を行ったのだろうか?
いや、それならばしかし[◯ーグルマップ]に表示されている魔力の数がおかしい。
まるで数人が大きな一つの魔力に詰め寄られているかのような.......
あ、成る程。
ボクはこの時ようやく何があったのかを把握する。
つまりは、ボクは行商人が襲われている場面の近くにいるという事だろう。
ここで助けに行ったらボクの存在は行商人に知られてしまうだろうなぁ。
それはユズキも言っていたが、面倒極まりない、というものだ。
何せボクらは目立ちたいわけでもなければ、名声や地位が欲しいというわけでもない。
なら、B魔獣複数を同時に倒せるボクらの存在は隠した方がいいだろう。
そこまで考えて、ようやく気がつく。
[気配霧散]使えばそういえばボクが誰かなんて分からないんだった、と。
そうと決まれば早い、いち早く5体倒すためにもボクは[気配霧散]からの、スライムならではの使える魔法、[霧化]を使う。
多分適正の問題上人間は使えないだろうこの魔法は、自らを霧と化し、霧と同化する事でより加速させた移動が可能になる、というものだ。
精霊族が得意としている[水化]とも似ているかもしれない。
山岩人形の元に辿り着くと、[締め付け拘束]を発動させる。そよ風に含まれる微量ではない魔力に気がついたのか、こちらを見てくるが時すでにお寿司。
違った、遅し。
ユズキの言っている言葉は分かりづらいものが多いなぁ。
そんなことを思っていると、ミシ、ミシと音を立てて山岩人形が破壊される。
魔石を回収すると、そこには数人の行商人が倒れていたため、全員を一箇所に集め[回復]を使う。
目を覚ます前にボクは立ち去る。
ボクは霧の一つも残さずにその場から消えていった.......




