16話 仲直り
目が覚めると、俺はなぜかミスラに膝枕をされていた。
ふぁ!?と驚いて飛び跳ねると、眠そうに目をこすって起きるミスラの姿がそこにはあった。
いつのまにかミスラに膝枕をされてしまっていたようだ。
......気まずい。
前までの状況と、互いに赤面している状態なのが更に気まずさを加速させていく。
取り敢えず、少しでも良いから会話を試みてみよう、頑張れ俺。
「「あっ......」」
ダメだった。
二人が二人で全く同じタイミングで同じ事を喋ったらそりゃあ気まずいだろう。
目線で、「どうぞどうぞ」「いえいえ、そちらこそどうぞ」と言い合ってみるが、互いに互いで喋ろうとしない。
「早く何か言えよ」「言いたいことがあるんじゃ無いのか」と見つめ合っているとだ。
プククッ
二人は一斉にちょっとした笑いをこぼす。
それが起爆剤となったのか、二人でなぜか数分の間は暫く笑い続けていた。
そして、ひとしきり笑った後に訪れるのは沈黙。
また、目で会話を試みてみるも、より一層ミスラの視線が強くなる。
とうとう根負けした俺は、会話を自ら切り出すことにした。
いや、元々会話を先に切り出した方が負け、などと言うルールはなかったのだが。
「なぁ、ミスラ」
返事はない。
「あの時、急に戦闘に参加させて......ごめん」
謝るべき時はしっかりと謝る。
お辞儀の角度は45°、なかなかに綺麗に決まったはずだ。
だが、当のミスラは困惑をしているようだった。
? 謝りだけでは足りない、と言うことだろうか。
「いや、別にボクがユズキに謝られる理由なんてないよ。それに、謝るべきはボクの方だし......。ここ数日間、ずっと無視したりしてごめんなさい!」
??? 不思議なことが起きた。
今起こった事をry。
俺が完璧に謝りを決めると、その直後に謝っていた相手に謝られてしまった。
これは俺ももう一度謝り返さなければいけないのだろうか。
でも、謝られる理由はない、とも言っていたな。
と言うことはミスラのあの態度には俺は関係していなかったと言うことか?
再び口を開く。
「ミスラ、謝られる理由がないって言うのはどういうことだ?」
「そのままの意味。この数日間、別にユズキに何か怒ってたんじゃなくて悩みごとを抱えてただけなんだよ。それで、ユズキに余計な心配かけちゃったなって......」
なんだ、そんなことだったのか。
なるほどただの悩み事と言うのなら人に話すことも人と話したくない事も急に態度が変わったのも頷ける。
それを聞いて、俺は心の底から安心してしまい、膝から崩れ落ちることとなった。
遠い意識の向こうで、俺をミスラが呼んでいる。
しかしその言葉は俺に届くことはなく、そのまま俺は意識をミスラに預けることにした......。
———
目を覚ますと、ユズキが跳んでいた。
具体的には、バッって言う効果音がつきそうな勢いで。
そして、ボクは自分が興味本位でしてしまった膝枕の体制で自分が寝てしまったことに気がつくと、思わず顔が真っ赤になってしまった。
......気まずい。
何が気まずいって、互いに赤面しているのがまだ気まずい。
赤面したまま笑っているユズキが可愛いのも、少しズルイと思う。
取り敢えず、勇気を振り絞って声を上げてみる。
「「あっ......」」
セリフが重なった。
何やってんだよ!ユズキ!ボクが謝ろうとしたのに潰れちゃったじゃないか!
そんな八つ当たりをしつつ、目で「どうぞどうぞ」と訴えかけてみる。
なのにユズキの奴は「いえいえ、そちらこそどうぞ」なんて言いたげな目で断ってくる。
しかも「早く言えよ」みたいな視線を送ってくるので、「言いたいことがあるんじゃないのか」と送り返す。
プククッ
二人の笑い声が重なり、それを始まりとして笑いの爆発が引き起こる。
しかし、笑い終えるとまた沈黙。
ついにボクは視線をキッと強くすると、ユズキが根負けしたように喋り出した。
そういえば、いつから先に喋った方が負けになったんだっけ?
と、ここでユズキが喋り出す。
「なあ、ミスラ」
返事はできない。
「あの時、急に戦闘に参加させて......ごめん」
??? 何故かボクがユズキに謝られてしまった。
ボクが本来ならば謝らなければならないはずなのに、何故か45°の角度に腰を曲げて謝られてしまった。
困惑するボクに不思議そうな顔でユズキがこちらを見つめてくる。
「いや、別にボクがユズキに謝られる理由なんてないよ。それに、謝るべきはボクの方だし......。ここ数日間、ずっと無視したりしてごめんなさい!」
必死に取り繕おうと言葉を捲し立てて謝るも、ユズキは何故か困惑したような笑顔になる。
そして、何かを考え込むような笑顔になってから、言う。
「ミスラ、謝られる理由がないって言うのはどういうことだ?」
「そのままの意味。この数日間、別にユズキに何か怒ってたんじゃなくて悩みごとを抱えてただけなんだよ。それで、ユズキに余計な心配かけちゃったなって......」
ボクもユズキの言葉にそのまま返す。
ユズキは、それを聞くととても心地良さそうな笑顔で、膝から崩れ落ちてそのまま倒れてしまった。
「ふふっ」
思わず、笑みがこぼれる。
ボク達は仲直りが出来たのだろうか。
できていたのだとしたら、また明日からギルドの依頼でも受けにいくとしよう。




